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気持ち。

いくら魂の姿だとはいえ、あいつにあたしは見えるわけだから、猫を殺す前になんとしても猫から遠ざけないとな。

・・月野は少しずつ寝ている猫に近づく。よし、猫は霊感が強いからあたしのことわかるはずだ。あの猫を起こせばいいんだ!

「起きろー!危ない!」

猫は近づいてくる人間を見て、すぐに家の窓に入っていった。よっしゃ!

「おい!何をする!?」

「おまえこそ何してんだ!月野真藤・・・グリムリーパー・ムーン!」

「グリムリーパー・・?」

やっぱりこいつ、死神だった頃のことを覚えてないみてえだな。

「あたしは死神グリムリーパー・ナイト!前世で死刑になったおまえを死神警察の代わりに殺しに来た!」

今決めたんだ・・・。このままじゃ、動物の命が危ない。ここは・・・死刑にしなけりゃいけねーみたいだな。

「前世・・おれは死神だったのか。前世が死神じゃあ、気軽に殺せるな・・・ありがとう、前世を教えてくれて・・・。お礼に殺してやるよ!」

前からきれいなナイフが出てきた。あたしは素早くよけた。チャームが魔法をかけやすくするためにな。

「チャーム!今だ!」

『チャーム!頑張って!』


遠くからみていたわたしは、ナイトの合図とともに、魔法をかけます。

【天の恵みよ!今ここに!】

『どんな魔法をかけたの?』

女神の魔法は種類などないのです。ただ、思うだけで呪文を唱えれば魔法は成立するのです。

『そーなんだ・・・。いったい、何が起こるの?』

様子をみてみましょう。

「ひいいい!」

月野さんの声です。

『一体どうしたの?』

ナイフを・・・自分に向けてます。きっと魔法の力です。


『なんでそう冷静に言えるのかなあ。もっと、女神らしい魔法だと思ったけど、これで月野は動けないんだね。』

はい。わたし、魔法も心もまだ未熟なんです。他の女神さんはきっとこのような場面ですと、武器を天使の羽に変えるなど、女神らしい魔法が使えるのです。こころではあんな魔法使いたいとは思っていないはずなのに・・・。

『・・それはきっと、チャームに心の迷いがあるんじゃないかな?心が迷ってるから魔法も思い通りにならないんだと思うんだ。』

心の迷い・・ですか?

『チャーム、どこかに命が大切だって気持ちを持ってると思うんだ。でもまだそれに気付いてないんじゃないかな?私の親友のみのるはね。すっごくやさしくて、いじめられっ子もどんな状況だって助けているの。でも、そんなみのるに殺したい。という気持ちがあるなんて思ってもいなかったんだ。死神と女神を信じ続けていて、毎日その神様に会いたいって言ってたんだ。みのるは気付いていなかったのかもしれないけど、きっと死神と女神に助けを求めていたんじゃないかな?チャームも、私やナイトに頼って何でも言ってね!そしたら絶対助けるから。』

・・・私にも、ナイトのような気持ちがあるのでしょうか?

『今は小さな気持ちかもしれないけど、ナイトのような勇敢で優しい気持ちになるんじゃないかな?私だって、自分でも見えない気持ちに気づいていないかもしれないけど・・いつになってもいいから、気づけたらいいな~。』

・・・気持ちって、一体何なのでしょうか?

『私にもわからない・・。』

「チャーム!変われ!あたしの2度目の仕事だ。」

ナイト・・?

『今の状況すっかり忘れてた!』

「はい。頑張ってください。」


月野真藤は、自分のナイフと手が全く動かないことに恐怖を感じ、手も足も震えていた。しっかし、チャームも危ない魔法かけるな・・。女神は人間を殺したらまたいちから勉強し直さなきゃいけねえのにな。だが・・せっかくチャームがかけた魔法を無駄にはしねーぞ!じゃ、体使わせてもらうからな。


「月野真藤!おまえを・・・。」

殺す。その言葉はいいたくない。できれば殺さずにあいつの心を清らかにできたら。そう思ってしまうのは、死神の中でもあたしぐらいだよな。

『動物の命を助けたいのではないのですか?』

そうだ・・。こいつは動物を平気で殺して平気な顔してるんだ。それに・・・あたしは死神だ!

「殺す!死神として、おまえを殺す・・。」

「ふ、ふざけるな!動物の命なんて人間以下だろ?まだ俺は人間を殺してないよな?それに俺は死神だったんだろ?死神は殺すのが仕事なはずだ。」

「うるせえー!おまえは命の重さなんかまるでわかってねえ!動物の命も、人間の命も、あたしたちが持ちきれないほどの重さがあるんだ。」

「そ、それが今から人を殺す死神の言葉か?」

「ああ、違う。でも、おまえの命の重さは、あたしが持ちきれるほど軽くなってるんだ。それがあたしにはわかる。いくつもの命を無駄にしてきたんだからな。中には、おまえみたいに命の意味がわからないやつだっている。でも、おまえはそいつは全く違う。命について必死に考えようとしているそいつと、命なんて考える必要もないと思ってるおまえと、どっちが正しいか誰だってわかる。命のことを、軽くみるな!」

あたしは、深く深呼吸した。よし!

【天よ!地よ!力をかしたまえ!この者の命を切り裂くがいい!】

すると、月野真藤の持っていたナイフは一瞬にしてきえた。月野真藤はこっちを見ながら道路に走って行った。

「魔術、かからなかったみたいだな!じゃ、俺は新しい動物を殺すとするか!」

その瞬間、思わず目をつむってしまった。

月野真藤は・・車にひかれた。


ねえナイト、大丈夫?

『あ、ああ。立ち直るまでに1週間はかかりそうだがな。』

でもナイト、かっこよかったよ。

『わたしも、少しでも命の意味について考えられた気がします。』

命の重さかあ。わたしにはわからないな。

『あたしだって・・・あのときは必死になって話してたから、自分の言ったことなんてほとんどおぼえてねえ。』

意外と気持ちって、自分の脳の外にあるのかもね。

『あの、それはどのような意味でしょう?』

普段みんなは頭で考えてるよね?でもね。ナイトは必死になったとき、頭で考えてなかった。だって、私たちには必死に話してるときのナイトの頭の中の声が、まるで聞こえなかったんだもん。ナイトはあのとき、自分の気持ちにのって話してたんじゃないの?

『そうなのかな・・。あたしにもわかんないや。』

すくなくとも私は、気持ちについてわかったような気がするな。


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