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和尚さんJrの憂鬱2

 ふっふっふ。

 母には世間の厳しさと言う物を味わって頂かねばならない。

 例え息子を恫喝で落としたとしても、世間は黙っていないものだ。

 特に僕には大きな味方がいる。

 そう、ジイちゃんだ!

 ジイちゃんなら、この浮かれきった母の考えを矯正してくれるに違いない!

 ということで、僕は早速ジイちゃんのいる裏庭へ行った。

 裏庭には湧き水が流れる雑木林があって、夏は冷房いらずの涼しい仕様になっている。

 ジイちゃんはそこで小型扇風機を手に持ちながら、ちょっといかがわしい本を読んでいた。


「ジイちゃん!母さんがこのお盆にイタリア旅行に行こうとしてるんだ!どうにか止めてよ!」

「へ?どうして止めないといけないんじゃ?」


 ジイちゃんはいかがわしい本から目を上げて、僕に尋ねた。


「だって、お盆だよ。先祖の霊が帰ってくるのに、家族が出かけるってどうよ!しかもうちはお寺をやってるんだよ」

「まあ、ゆき坊がいれば心配ないじゃろう。さて、わしは町民プールに行ってピチピチギャルのお尻でもみてこようかのう」


 ジイちゃんはそそくさといかがわしい本を閉じてプールへと行ってしまった。

 もう、ピチピチギャルとか、今時使わないだろう?

 残していったいかがわしい本の背表紙を見てみると、九月最新号になっていた(決して中を見ていないから)。

 どうやらすでに母に買収されていたらしい。

 こうしてジイちゃんは母の手に落ちてしまった。

 だがしかし!

 世の中には世間の目というものがある。

 ふっふっふ。

 母よ、なめてはいけない。

 肉親なら買収もされるだろうが、赤の他人にそうはいかない。

 お寺には最強の他人がついているのだよ。檀家総代という他人がな!

 さっそく僕は家を出て道を挟んだ向こう側にある檀家総代の酒向さんの家にやってきた。


「こんにちは。実は、酒向さんに相談があって」


 酒向さんの家の着くと、家主のおじさんがからからと笑いながら出てきてくれた。


「ああ、ゆきちゃんこんにちは」

「実は母がおかしな事を言い始めたんです」

「ああ、聞いているよ。イタリア旅行に行くんだろ?代理の棚経と施餓鬼会はゆきちゃんががんばるんだって?すごいじゃないか?」


 どうやら母はすでに檀家総代にも話を通していたらしい。

 このからから具合はどうやら、OKを出したみたいだ。

 ん?

 棚経って?


「もしかして、棚経残ってるんですか?」

「ああ。うちと後二、三件ゆきちゃんがやるって聞いたよ。何でも、予定を大幅に変更して今日の夜にはイタリアへ旅立つらしいから」

「そんなの聞いてないよ!」


 檀家総代の前で情けなく悲鳴を上げてしまったのはしょうがないと思う。



 家に帰ると、台所の机にメモが。

「後よろしく〜」

 じゃないだろう!

 結局父には会うこともできなかったし!


 僕は急いで友達に電話をかける。

 聖夜君とそのバンド仲間には本堂の清掃をして貰おう。ライブハウス借りるお金がない時はよく、父が本堂を練習で使わせてくれてるし。

 玲華ちゃんは習字を習っていたから、卒塔婆の文字を書いてもらおう。

 アイス三本で手を打ってくれるかな?

 僕?

 僕は袈裟を引っ張り出して着替え始める。

 これから棚行だ。忙しい〜。

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