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和尚さんJrの憂鬱1

 僕の夏休みはくっそ忙しい。

 普通の子なら宿題や遊びで忙しいだけだ。

 けれど、お寺の息子である僕は『+家の仕事』で尋常ではないぐらい忙しくなるのだ。

 そんな忙しい状況にもかかわらず、僕の両親はイタリア旅行に行くと言い出した。

 それもお盆の最中に。

 普通の家なら『お盆休みに旅行にいく』は別にいいと思う。

 だがうちはお寺だ。

 檀家のご先祖様たちが帰って来る時にお寺の住職(うちの父・婿養子)がいないというのはあり得ないんじゃないだろうか。

 母にそう伝えると、


「大丈夫よ。ゆきちゃんいるから」


 とのたまった。

 はあ?

 何で僕がいれば大丈夫なんだ?


「お父さんの代わりに和尚さんやっててね」


 おいおいおいおい!!

 中学2年生に何を言い出す!

 天下の反抗期息子にそれはないだろうか!

 それともこれって普段の嫌がらせ?


「それに去年の年末に当たったイタリア旅行のペアチケット、お盆までが期限なの。使わないと損でしょ」


「じゃあ、僕とじいちゃんでイタリア旅行に行くから……」


「はあ?何言ってんの?」


 一瞬にして母の顔に般若が浮かんだ。


「これは十数年ぶりに訪れた、お父さんとのイチャイチャラブラブ旅行なの!誰がガキとじじいにいかせるもんですか!」


 かあちゃん、怖い。


「それに留学しているお兄ちゃんにも会いたいしね」


「あき兄ちゃんに?」


「そう、だから留守番よろしくね」


 ここで天下の反抗期息子が「わかりました」などと言うはずがない。

 まず、母がいくらイタリア旅行に行くと言ってもじいちゃんや世間様は許してくれない。

 次にあき兄ちゃんの留学先は『バッチコイ帝国』であってイタリアではない。

 最後にうちの家族でパスポート持ってるの、あき兄ちゃんだけだったはず。

 以上、完璧な倫理で母を論破しようとしたが駄目でした。


 母は夢見る少女と成り下がり、魂はすでにイタリアの地へと赴いているようだった。

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