プロローグ:一鬼夜行/一色■■
この物語はフィクションです。実際の人物・団体名・事件などには、いっさい関係ありません。
私は体は常に疼き、心は渇いている。
だから私は満たされていない。
だから私は求めた。
だから私は欲した。
だから私はさ迷う。
私の体の疼きを治めてくれるのは同じ体だけ。
───私は色欲に抱かれる。
故にそれのみをただ蹂躙した。
節操なく手を出し、
見境なく呑み込み、
傍若無人に貪った。
歳など考慮なく、異性だけではなく、同性にまで及んだその行為は一種、背徳めいたモノを感じながらもそれを罪だとは思わなかった。
それ以上に体を舐め尽くされるような疼きが満たされる瞬間は何にも勝る極上の悦楽だった。
体は満たされた。だが、心は依然渇いたままだ。
満たされる方法は同じでなければならないのに心は渇いたまま。
自分を癒すことが出来るのはこの一つだけだと分かっているのに心は砂漠だった。
体の疼きを治めてくれるのは体だけ。
その理屈で行くならば、心の渇きを潤してくれるのは心だけだ。
だが、どうすればいい?
形のない心とどのように交わる?
不可視の心をどのように見つけ出す?
わからない。
ワカラナイ。
私にはワカラナイ。
だが、彼と出会い私は知った。
彼が居れば私は満たされる。
渇いていた私の心が、砂漠だった私の心が満たされ潤う。
───たとえそれが罪だったとしても。