彼
彼は、毎日勉強に追われていました。
ですが、あまり楽しいと思うものではありません。
彼女は、夢がないのに勉強をするのは、時間の無駄だと、はっきりと言い捨てたことがあります。
その通りだと、彼もまた思っていました。
退屈な人生の暇潰しとでも思っているのです。
どうせ、好きなことができないのなら、諦めて、両親、家庭、世間体に身を任せようと考えていました。
彼は大学院で法律の勉強をしています。
理由は、父親が弁護士だから、それだけです。
法律を勉強していると、少しでも悪いことをするのが怖くなります。
逃げ道がないのです。
なんとか言い訳をしたとしても、一つの条文で、180°裏返ります。
彼は、「僕のような人間がもし悪さをして、言い訳をしてもすぐにばれて、世間からも親からも、見放されるんだろう」とも思っていました。
だから、悪さは極力、していないつもりでしたし、これからもしないと思います。
彼にはそれだけの、「捻くれた度胸」というのもを、持ち合わせていませんでした。
小さな頃から、物やお金に、困ったことのない、ストレスの少ない人生を送ってきました。
ただ人と違うのは、流されて生きることに、やれと言われたものを素直にやることに、疑問を持たない代わりに、自分でやろうと決心する物が、ことが、まるでなかったのです。