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お気に入り十件突破!

「それじゃあ、また後でな」

「はい」


 竜也は自教室に着いた銀夜とその場で別れた後、その奥にある自分の教室に向かう。

 一人になったことによって、二人でいた時よりも集まる視線の量は少し減ったが、先ほどよりも強みは増していた。

 憧れの的である銀夜といる時は、嫌われたくなかったのか嫉妬心程度のものだったのだが、竜也一人になった瞬間、殺意が含まれているようだった。

 そんな視線に、隠しもせずにため息をついて、一直線に歩を進める。

 教室に入ってバックを自分の机の上に置き、道具を整理した後、横にかける。

 そして机の中に管理されている自分専用のパソコンを開き、電源を入れる。

 起動すると『自己証明してください』というウィンドウを見て、腕輪型のLCDを画面に向かってかざす。

 竜也は腕輪型だが、LCDにはいくつか型がある。

 一つは足首型、一つは首輪型、あとはアクセサリー型だ。

 この種類だけ見ると、アクセサリー型を使う人がほとんどだと思われるだろう。

 しかし、能力者の全員が誰でも好きなものを選べるわけではない。

 リミットを解除する、または抑えるためには、それなりに才能が必要になる。LCDはリミットを扱うための補助をする。

 そして、LCDは種類によって、補助効果の強さが違うのだ。つまり、才能によって選べる型は変わる。

 一番強いのは、首輪型だ。人の血液が一番巡って来るために、一番補助効果が出しやすいのだ。それについで腕輪型、足首型。接触点が一番少ないアクセサリー型は一番低い。 

 ちなみに銀夜はアクセサリー型を使用している。

 閑話休題。

 かざして数秒。読み取りが完了し、画面が切り替わる。

 竜也はパソコンに目を向けていると、メッセージが届いていることを確認したので、それの中身を開いてみる。

 内容は基本教科の授業日程の決定についてと、能力学の設定についてだった。基本授業とは、国語、数学などの科目のことである。

 この学校はその基本科目を単位制で行うことになっている。

 また授業はパソコンを利用して、通信授業のような形で行うことになっているため、好きな授業をとることができる。

 テストは昔から変わらず、紙を使った筆記テストである。

 能力学は名前の通り、能力者のための授業だ。学校によっては行われていないところもある。

 この学校の能力学には二つの種類があり、一つは戦闘系、もう一つは制御系だ。

 戦闘系は対能力者の戦闘技術を学ぶ。

 制御系は精密的に自分の能力を扱うことを目指す。

 また両方とも、能力者についての理論や、法律について学ぶことになっている。

 

「朝からパソコン開いて何見てんだ?」

「ん?」


 声をかけられた竜也は、一旦パソコンから視線をはずして顔を上げると、何か武術を習っているのか、少し筋肉質な男子生徒が横から竜也のパソコン画面を覗いていた。

 こういう場で話しかけれるあたり、志津留と同じで、フレンドリーな性格をしていると思われる。

 性格はどうであれ、これからクラスメイトとしてやっていく人物に話しかけられて、初対面の相手に冷たくあしらうような性格をしていない竜也はそれに答えた。


「これか? 今年一年間の授業の設定についてだな。どうやら今日の最初の二つの授業を使って決めることになってるらしい」

「ふーん、そうか……あ、俺は垣崎圭介。ぜひとも圭と呼んでくれ」

「俺は椎原竜也。竜也でいい」

「了解だ……って今、椎原って言ったか?」

「あ、ああ。そうだが……」


 竜也が名乗り終え瞬間に、神妙な顔付きで、いきなりそんなことを竜也に尋ねる圭介。先程言ったばかりのことを、わざわざ尋ねてきたことに戸惑いながらも、竜也は頷いて見せる。


「じゃあ、あの銀髪の美少女と兄妹ってことか?」

「銀夜のことなら確かに俺の妹だが……」


 別に隠すことでもないので、さらっと肯定する竜也。それによって目を見開き驚きをあらわにしている圭介。

 竜也はそんな様子を見て、入学早々に名前が噂として知れ渡っている銀夜は、さすがと言うべきなのだろうと思っていた。


「……マジでか?」

「嘘なんてついてどうする」

「それはそうなんだがな……正直、似てないよな……」

「俺もそう思ってる」


 圭介からの的確な指摘に、竜也は思わず苦笑いを浮かべていた。

 そんな二人のところに、ちょうど教室にやって来た志津留は一直線に歩み寄ってきた。


「おっはよー、椎原くん」

「おはよう、徳永さん」

「君もおはよう」

「お、おはよう」

「うん。で、何。この微妙な空気は?」


 圭介とはは特に面識はないはずだが、持ち前のフレンドリーさで輪のなかにはいる志津留。もはや、流石としか言いようがない。


「えっと、徳永さん、だったよな? あの銀髪の子を知ってるか?」

「確かAクラスにいるって噂の?」

「そう、それだ」

「それでその子がどうしたの?」

「実はその子の正体は、竜也の妹らしいんだ」

「えー!? 椎原くんのいもうと!?」


 自分が叫んだことを自覚し、恥ずかしそうに周りに頭を下げた後、志津留はこちらに向き直る。


「マジですか? 兄さん」

「本当だが、兄さんはやめてくれ」


 妹以外に兄と呼ばれるのは、どうにも変に感じた竜也は、それを拒否した。

 その言葉を聞いて残念そうにしている志津留に竜也は呆れたような表情を浮かべる。


「それじゃあ、竜也くんで。それなら良いでしょ? 椎原くんじゃ、妹さんと会ったときに困るかもだし」

「……まぁ、構わないけど」

「その代わり私のこともシズって呼んでいいからね」

「いや、俺は別に徳永さんでいいよ」

「シズって呼んでいいからね」

「……分かったよ、シズ」


 同じように繰り返される言葉。どうやら強制的なようだった。


「君もシズって呼んで構わないからね」

「あ、ああ。それなら俺は圭でいいよ」

「オッケーオッケー」


 志津留は楽しそうに笑いながら、満足気に頷いていた。


「それにしても意外だなぁ。全然似てないのに。あそこまで似てない兄妹って結構珍しいんじゃない?」

「そうかもしれないな」


 二度目の似てない発言に、さっきよりも濃い苦笑いが竜也の顔に浮かぶ。

 自覚してはいるが、こう連続して似てないと言われるのも、少々複雑な気分だった。


「でも、なんか不思議な感じだよな。妹はAクラスで、兄はFクラスなんて」

「確かに言えてるかも。イメージ的には逆って感じ」


 うんうんと二人して頷く。

 いつの間にか意気投合したような二人の様子に、笑みを浮かべる竜也。

 だが、その内側には誰にも言えない複雑な思いが渦巻いていた。

 

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