表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が属性はTERRA  作者: 鬼明或呑
~第四章~ GNOMES SPIN TEMPEST 前編
35/52

料理人の通用門から…

 料理人の通用門から来た白猫―イヌハは、あっという間に首をつかまれて、料亭の親爺と対面した。

「にゃー? 」

「あんだぁ、この猫? 」

 親爺は左手でイヌハの首根っこをつかみ―右手には包丁が光る。

 だが、そのイヌハを高く上げた手は、老人―カウンターの前に立った客に気づき、包丁をまな板におろした。イヌハも一度放されて、厨房の床に降りる。

 イヌハは老人の―ウドゥンともルルイエとも違う、老紳士を見て―。

「にゃ? 」首をかしげた。

 応対する親爺も、首をかしげ―そうになった。老紳士は、目の前にいるのだが―品の良い、衣服も高級そうだ―相貌が、どうしても見えない。分からないのだ。

 訝り、首をかしげる親爺に、何も言わぬ老紳士が微笑を残し、会計を払った時。

「たのもー! 」

 入口から威勢のいい声が聞こえてきた―。

 

 ~

 

「たのもー! 」

 威勢のいい―女の子、この場にそぐわぬ声の主は、入口を三歩歩いて、前のめりに倒れた。

 店内の客が振り返り―通路を歩いていた、魚のアラを持った使用人も入口を振り返るが―声の主、ノームの熊耳は臭気に引きつけを起こして―倒れた。

 女の子の後からおずおずと入ってきた少女は、倒れた女の子、オレリアを見て―いわゆる、テンぱった。

 焦る少女の背中。

 見慣れぬ鳥の羽根に視線が集まり、鳥人の少女、イリスは

「あの、あの、猫を探してて」

 昼の酒場の客の視線に―怯える。親爺は猫を思い出し、厨房の床を見るが、猫はどこかに消えて、気がつけばあの紳士も―いない。

 右の座敷のホルモンや、店内の臭気に少女は「あの、白い猫ちゃんで、イヌハって言います。あの、あの」

 ―もう、食べちゃったんでしょうか? 

 少女の意識は、はるか斜め上を飛んでいて―。

 

 ~

 

 猫の、黒猫の瞳は、厨房の隅から店内を見渡していた。

「食べたな、食べたな、食べたのかー!」叫び暴れまわる熊耳、ノームと―。

「食べられちゃった、どうしよう、どうしよう」自分が言ったことなのに、真に受け、入口で泣き出した娘。

 騒ぐ二人に、用心の男がでてきたが―娘二人、初めての相手に戸惑う。

 ノームの女の子、オレリアは皿を返し、手を振り乱して―首には腸詰肉をかけて、恐慌して―。

「目にもの見せてやる! メテオストライク! アースサラウンド! ノーム族の奥義! 」

 黒猫は―かつての12騎士が一人は、厨房の隅でまだ気づかれず、オレリアに僧侶の面影を見ていて―目を細めた。やがて用心棒が、オレリアをつまみ上げたころ。

「ニャン」背後から白猫、イヌハが飛び出して、用心棒に飛びかかり爪を立てた。猫はオレリアをかばった。

「イヌハ! 」

「え? 」

「どこに行っていたのです、心配して」

 イヌハはオレリアと―イリスのそばによりかかり、安堵した少女たちだが。

「てめえら、出ていけェ! 」

 親爺がどなりちらし、少女たちは猫を抱え、走って逃げて―。

 

 ~

 

「ハァッ、ハァッ、ハァ―」逃げ出した少女たちだが―オレリアが首の腸詰肉に気づき、倒れて―イリスも足を止める。

「オレリア、しっかりして、もう」

 気がつけば街なみの外れに来て―道に迷った。イリスは周りを見渡すが、人の姿はなくなり、道の向こうは農耕地なのか、畑が広がる―少女は戸惑う。

「飛んでみようかな―」

 空中から辺りを見る。見てみる。イリスがそう決めた時、イヌハがまたどこかへと、歩きだした―。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ