切っ先の炎が髪を焦…
切っ先の炎が髪を焦がす。夕方から夜に、下弦の月が浮かびはじめ―目の前の異形、岩石を帯び、戦鎚から魔剣へと姿を変えた獲物を構え、こちらに単眼? を向ける魔族に―女、エイリは炎の槍斧を構え、対峙する。
「手の内は同じ、か―」エイリは嘆息した。
崩れた岩石をまとう魔族。ヘルクレウスの、周囲の残さで身を包むやり口は、エイリの戦い方と同じだった。詠唱で周囲の岩、鉄、或いは木材を集め、融かし、装甲とする。防御を固め、反撃に集中する。
エイリは楼閣と揶揄され―砂上の楼閣―状況によってはもろい。まず一対一は得意ではない。この遠い間合い、リーチの差。エイリにこの距離を届かせる技術はない。
だが―ヘルクレウスの獲物、黒き魔剣に光が集まる。魔剣から放たれる光は遠い距離を越え、建屋を潰し、地に穴をあけ―鎧を紡がず、避けに専念するエイリを足場から崩す。
周囲に人波はない。皆逃がした。
エイリは槍の構えを変え、反撃を打ち込む隙を狙うが―奴を覆う岩は厚く、槍は―槍では、あの装甲を抜け、内部に届かせることはできない。槍斧の燃やす炎が立ち消え―。エイリを上から覆う巨体の影を裂いて、一条の光がヘルクレウスを射抜いた。
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「ここは―街に戻った、のか? 」
「そうさ。668つ目。コル・ミドガルダル。湖畔の―侍が生まれ、育った街。あのものならばこういうのかな―? 勇者よ」
ルルイエに応え、アウリュは同時にウドゥンを冷やかし―視線は対峙するエイリとヘルクレウス、湖から飛来するストレイトスとイリスと―勇者の構える宝剣を認めた。アウリュは弓を取り出し、ヘルクレウスに向ける。
ウドゥンはルルイエをその場に残し、岩の大剣を掲げ、TERRAの奥義、虎咆剣を―共振により内部に衝撃を向ける奥義を―唱え始める。
「天帝の剣、七星の輝きの元―」ヘルクレウスが飛来する二人を見据えた。「―虎は爪を隠し、牙を伏せて―」投げつけられる黒き星を旋回してかわし、勇者は宝剣を構え、雷刃の詠唱を紡ぐ。「―爪牙に集う虎、猛き五虎―」虎咆剣。老人の魔術、高周波に寺院や屋敷の窓が砕けた―。集中。「山河に吠え、お前は爪を潜め―雷に震え―」共振の集中にヘルクレウスの岩の装甲が崩れ始め、露出した心臓? に黒き光が集まる。その単眼? はウドゥンを見た―。「西の果てに鳴く、荒ぶる野心―風に対峙し、爪牙を向け会う―我が剣、白峰の虎咆―」空気の震えは束ねられ、ウドゥンは大剣を両手で構え、突き出し―。「R・I・P―風龍をも滅さん!! 」虎咆の剣が届く時。黒き光は空間に門を開き―崩れた岩と黒血を残して、ヘルクレウスは去った。