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我が属性はTERRA  作者: 鬼明或呑
~第三章~ SOMEDAY,HERS BIND VOICE 前編
20/52

夜を通して。ストレ…

 夜を通して。ストレイトスはイリスに説明し、承諾させて―。

 朝。あの女の話に乗ることに決めた。風の王宮に還る。

「あの方、あの黒衣の方―信じて、よろしいのですか? 知らない人について行っては―危険なのですよ? 」

「分からない、素性も何も―何故ここに来たか、ウドゥンが教えたのか、僕のことがばれたのか。だけど、嘘かどうかにしろ、還る手だてがあるならば―」あの女の術に乗る。

「でも、よろしいのですか、ストレイトス。これは貴方にとっても機、なのではありませんか? 」

 あの女が魔族の術によって門を開くというのならば、ストレイトスはついに故郷に帰れる。その目がある。だが―。

「いいんだ。僕はイリスと風の王宮に還る」―さあ、一度寝なおして、それから仕度をしよう。ストレイトスの表情は吹っ切れていて―。

 午後三時。街の者に見つからずに街のそばの鍾乳洞に来い。場所は―見えているだろう。勇者よ。

 女の言葉を思い出し、門を越える前に、ルルイエにウドゥンや黒衣の女のことを聞くことに決めた。

 

 ~

 

 遅い朝食を取りに来た二人はウドゥンのいぶかる視線に会い、イリスはバツが悪そうに黙々と食べ、やがて部屋に戻った。ウドゥンを避けるストレイトスの視線はルルイエの姿を認め、彼に話しかけ、ルルイエの部屋に入り、扉を閉じる。

「何か用なのかね」

 窓際に立つルルイエに、ストレイトスは、

「ウドゥンの素性を教えてください」直入に言った。

「君は、何も知らずに彼についているのかね? 」

「あのものは肝心なことは何も語りません。何かを隠している。門―息吹を研究しているというのも、あれだけの術の展開も、何か理由がある。失礼ですが、貴方と彼は―何を知っているのですか」

 場を沈黙が包み―やがてルルイエが重そうに口を開く。

「君が知る必要は―ない。若い世代には、もう、そういうものだと、認めさせるしかない」

「昨日、部屋に女が来て―何もかも知った風だった。あの女は異世界を語り、僕の素性に気づいていた。ウドゥンは外世界との門を研究しているといった。貴方は、あの女や、ウドゥンと―」

 どこから来たのですか? 

「君は―」

「無礼を知った上で質問をしています。ただ、僕も、イリスも―異世界から来た。ウドゥンは、中つ国から来たと名乗った。あの女も含め、地平の果ての砂の嵐、この世界の魔族。息吹。僕らは、知る必要がある」

「私は、この湖畔の、街で、生まれ育ち―」

 ―12騎士という者がいた。いつか、砂嵐が世界を覆ったころ。彼らは魔族と戦い、人びとの期待を集め―やがて戦いの意味を失い、皆離れて行った。

「ウドゥンと共に、私は侍として名を上げ―砂嵐は消えず、何かに立ち向かう強さもなくした」

 そう言ってルルイエは話を打ち切る。以上だ―。

「いつか、君も―分かる」

 

 ~

 

「よくきたね―」

 薄い灯りの中、昨夜、青年と少女の部屋に来た黒の狩猟着の女は、湖畔のそば―湖ともつながっているのだろうか―暗い鍾乳洞の中へと、ストレイトスとイリスをいざなった。

「パラケルススを知ってるかい? 」

 アウリュはそうとだけ言い、返事も聞こうとせず、灯りも持たず洞窟の闇の中をすいすいと歩く。

 地下へと―。

 アウリュとストレイトス、イリスはやがて奥深くへとつき、無理に開かれた世界の門―息吹の前にたどり着いた。

「行先は決めてきたかい」

 世界を越え、勇者は少女と風の王宮に還る。そう少女に承諾させ、ここまで連れてきた。

「かまわないなら、歩を進めるがいい」

 二人は手をつなぎ、同時に門を越え―やがて二人が消えた後、門を残し、振り返ったアウリュの前に砂髪の老人が姿を現した。


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