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狼と森の国

掲載日:2026/02/05

このページを開いていただきありがとうございます。

このお話は、自分が構想している物語の、日常パートを書いたものです。初投稿です。

また大変申し訳ないのですが、物語はまだ公開しておりませんしするのかも未定です。


なので話の流れやバックグラウンドは全く意味不明だと思います。

それでも良ければ私の自己満足にお付き合いください。


エピソードタイトルをつけるなら「趣味の集い」です。

 ミルドリッドの城内にある隊員向けの食堂。お昼のピークを過ぎた今の時間帯は、食堂にいる隊員もまばらだ。シフト明けや午後は半休なのだろうか、食事を急ぐ者はいなかった。

 天井近くの採光窓から入る光は柔らかく、厨房からは食器を洗う音が響いて、なんとも穏やかな空間になっている。


 そんな食堂の一角、四人の少女が机を囲んでいた。

「……えっと、主計長(しゅけいちょう)さま。この部分はどのように?」

 長さ30㎝程の、先の尖った二本の棒を持った黒髪の少女は、困り顔で隣に助言を求めていた。そのうちの一本には毛糸が規則正しく絡まっており、布になって垂れ下がっていた。長さは20㎝程度だろうか、何を作るかは知らないが、まだまだ序盤らしい。


 「あ、そこまでいきました? 早いですねキティルさん。……では私がやるのを見ていてください」

 主計長と呼ばれた亜麻色髪の少女は、同じく二本の棒をもっており、これもまた同じく20㎝程度の布が出来上がっていた。彼女、ルネリア・アガスミトスは少し考えた後、椅子を少し近づけ、手元が良く見えるように教え始めた。

 机には毛糸玉と道具を入れる布袋がそれぞれ置いてあり、編み物教室を広げている。


 その手元を空色の瞳で見つめるのは、サマル・キティル侍従次長。褐色肌に侍従(メイド)服を着て編み物を教わる彼女は、真剣そのものだ。以前から教わっていたかぎ針を使った編み方には慣れたのか、今日は二本の編み棒を使ったやり方に挑戦中らしい。

 編み棒に糸を引っ掛け、かと思ったら外し、また引っ掛けるのを繰り返すうちに、どんどん布が出来上がっていく。手の動きも合わせると、頭が混乱してきそうだった。


 そんな彼女たちの向かい、自分の隣にも少女が座っている。

 「……」

 落ちついた金色の髪をショートにして、略式防具を着た少女、エイブリス・スール第二分隊副隊長は黙って手元を見つめていた。そこには直系15㎝ほどの丸い木枠で固定された布――おそらくハンカチだ。そこへ迷いなく刺繍糸を通した刺繍針を刺していく。表から裏へ、裏から表へ。慣れた手つきで黙々と図柄を作っていく。


 そんな彼女たちを横目に見ながら、自分、ミケーネ・アル=メネスは何をしているのかというと、

 ぺらっ。

 本をめくる音が静かに響く。四六判程度の大きさで、厚みは1㎝ちょっと。植物のデザインが入った革の表紙は、表面が滑らかになっており年季を感じさせる。開いた時に古書独特のにおいがふわりと広がる。苦手という人もいるが、自分はこのにおいが好きだ。

 これは自分の上司、イル=イースから勧められた詩集本だった。1/4を読んだくらいで、いったん顔を上げた時が今だ。この四人で集まるようになったのは、いつからだっただろうか。最初はおしゃべりが主だったが、最近は各々の趣味もやるようになった。

 目的は特にない。

 ただ一緒に過ごす。

 それだけだ。


 コップに入ったお茶を一口飲む。そして今読んだ詩を反芻する。

 この本は故ゼーリア王国の詩をまとめたもので、内容的には恋に関するものが多かった。今も昔も、恋愛は人の悩みであり喜びであるようだ。


 「……いま編んでるのは、何になるの?」

 何の気なしに向かいに座る二人に聞いてみる。

 二人は作業を止め、顔を合わせた後にルネリアが最初に答えた。


 「今日は棒針編みの最初なので、簡単な模様も入れたマフラーを作ろうかと」

 「ありがたいことに主計長さまも同じものを作って教えてくださいます」

 「いいわね」


 最初から模様込みで編むのは難易度が少し高いのではないか?と思ったが、編み物に詳しくないミケーネには判断がつかなかった。教わる本人にやる気はあるし、順調そうなので聞くようなことはしなかった。

 二人の次は横にいる戦友だ。会話は聞いているだろうが、顔は布から離れない。


 「スーは?なんの図柄?」

 愛称で呼ばれた彼女は、手を止めることなく答える。

 「ウィークスの花だ。花自体は小さめにして、数を多くしようと思っている」


 ウィークスは低木の常緑樹で、冬に赤い花をつける。雪に強いので街の生垣などによく植えられており、雪とのコントラストが綺麗で人気のある花だ。詩集のモチーフに使われても違和感はないのだが……。


 「ウィークスの花には、どんな意味があるのですか?」

 疑問に思ったキティルが聞いてくる。確かに、刺繍に使われるモチーフには意味がある物が多い。同じモチーフでも、国や文化で違うもの、同じものもあって面白い。


 ちょっと話が面白い方向に転がりだしたことを感じながら、ミケーネは答える。

 「ティルはこの国に来て日が浅かったわね。ウチだと一般的には『忍耐強くあれ』や、『苦難を乗り越えられるように』って願いを込められることが多いかしら」

 ウィークスは寒く湿潤な地域に生えている植物だ。暖かく乾燥した国から来たキティルには馴染みがないのだろう。


 そこでいったん顔を戦友へ向ける。努めて自然に、だが確信を持って聞く。

 「スー。それ、自分用?」

 「いや、頼まれものだ」

 「誰から?」


 彼女は生真面目な性格だ。ここで嘘をつくようなことはしない。

 「……じ、ジーランドのヤツだ」

 畳みかける。

 「花の数は?」


 「―――ッッ」

 スールが初めて顔を上げ、こちらを睨みつけてくる。少し耳が赤い。

 「じゅ、十二だ……」

 言い終わると同時に、観念したように項垂れた。


 「ふふ、スールさんも隅に置けませんね」

 静かに話を聞いていたルネリアが笑顔だ。

 「な!? ルネリアも知っていたのか?」

 ミケーネ以外にも知っていたことに驚いているようだった。だが、言った後に「しまった」という表情をしたことをミケーネは見逃さなかった。


 「? 十二のウィークスの花にはどのような意味が?」

 「あまり一般的ではないですが、女性から男性に贈る場合、『無事に帰ってきて』という意味になりますね。花の数が十二の時だけになりますが」

 話についてこれなかったキティルに、ルネリアが解説する。


 「これは故ノルン王国にあった古いお話で、王女が戦に赴く婚約者へ、十二のウィークスの花を全体に刺繍した下着(アンダーシャツ)を贈ったそうです」

 「戦は一年を想定されていたので、王女は『毎月一つのウィークスが、あなたが流す血の代わりになりますように』と願って、婚約者に贈りました」

 「そのおかげか一年後に、婚約者は無事に帰ってこれたそうです」

 ちなみにこの話を聞いたイル=イースと衛生総監と医局長は、「出血箇所が分からなくなるからやめてほしい」と言ったとか言わなかったとか。


 「そして二人は無事に結婚した。というところで話は終わるわね」

 「すてきなお話ですね」

 「古い文献にくらいしか載っていないので知っている人は少ないですね。私は幼いころに、祖母が話してくれたのを覚えています」


 「た、たまたまだ。アイツはすぐに訓練をサボるヤツだからな。少しは辛抱強くなれと思って、その――」


 「でもスー。それならルネリアに『知っていたのか』って言うのはおかしくない?」

 ミケーネは戦友の言い訳を遮り、矛盾を突き付ける。


 「それに言った後『しまった』って顔もしてたわよ」

 最後に逃げ道も塞いでやる。


 「い、いや……。これは、その……」

 うぅ…。と俯いてしまった。もう顔は茹だこ状態だ。

 ここまでされて怒らない辺りが彼女の美点だと思う。そして、それを知ってからかう自分のなんと性格の悪いことか。


 (ジーランド副隊長も花の意味は知らないでしょうし、気づかれないとは思うけど……)

 彼の詳しい出自は知らないが、肌の色と訛りから少なくとも南方であることは確実だ。花や刺繍に詳しい可能性は低い、とは思う。

 だが、受け取る本人がおそらく知らない意味を込めた刺繍。しかも最終的に結婚するような逸話に絡んだモチーフを選ぶ辺り、スールはかなり本気なのではないか? 本人に自覚があるかは知らないが。


 (スーって意外と重いのね……)

 戦友の知らない一面を知ってしまった。

 しかし上司同士がくっついているのは知っているが、まさかその部下同士でもよろしくやっているとは。これで第二分隊と欠損兵団の関係はゆるぎないものになったと言える。


 (まあ仲が悪いよりかは良い方が良いに決まっているわね)

 欠損兵団もその兵士たちも、うまくこの国に馴染んでくれればそれで良い。彼らの受けてきた仕打ちを思えば、ここでの生活で安らぎを得てくれることを願うばかりだ。


 「えーっと……。ふ、二人のマフラーは誰かへの贈り物?」

 「「……え?」」

 「ん?」

 これ以上スールをつつくのは不味いと判断したミケーネは、向かいに座る二人に会話を振ってみた。だがこちらへ来ると思っていなかったのだろう。二人は反応できず、素の反応を返す。その顔が心なしか、赤くなってきているのを見たミケーネは、次の標的を定めた。


 「……誰に、渡す、の?」

 ゆっくり、単語を切るように問いただす。自然に身体は前傾姿勢になり、敵を追い詰めた時のような緊張を感じていた。


 「け、警護長さま。お顔が怖いです……」

 「笑顔ですけど私も怖いです……」

 「副長補佐として聞きます。誰に、渡すの?」

 部署は違うが自分は彼女たちが所属する第五分隊の実質的な副隊長だ。だが上官命令とは言わない。

 これはただのおふざけなのだから。


 「い、今作っているのは練習なので、これをお渡しする訳ではないのですが……」


 「うまく作れるようになったら、軍師さまに! お渡ししようと、思ってい……ます」

 だんだんと顔が下がっていき、言い終わるころにはキティルは完全に俯いてしまった。先ほどよりも顔が赤い。


 「私は、これをそのままグルブスコーニさんに。あの方は寒がり屋さんなので」

 対してルネリアは照れが少ないが、嬉しさが隠しきれていない。「屋さん」をつけるあたり、なんだか距離が近いように思える。


 「やっぱりそうなのね。ま、知ってはいたけど」

 これくらいは最近の二人を見ていたら自然とわかる。ここまで素直に話すのは正直意外ではあったが。

 こちらも突くのはここまでにしておこう。ミケーネはそう思っていたが、隣からとんでもない爆弾が放り込まれた。


 「兵站総監殿が主計部隊に来ている時は、嬉しそうだもんな。ルネリア」

 羞恥から復活したスールが、当たり前のように言う。ミケーネには分かったが、スールに悪気は一切無い。


 「え! わたし、そんなに分かりやすい顔してました?!」

 今まで比較的落ち着いていたのに、急に絵に描いたような慌てっぷりを見せる。他人にも分かるくらいバレバレな態度をしていたかもしれない、と言う事の方が彼女にとっては恥ずかしいらしい。


 「いや、おそらく分かっていないのは兵站総監殿だけだ」

 スールが真面目な口調でフォローを入れるが、それは裏を返せば他の主計部隊員にはバレているということだ。スールは事務仕事も得意で、よく主計部隊に手伝いで出入りしているので、部隊の雰囲気は分かっている。


 「―――ッッ?!」

 ルネリアは耐えられなくなったのか、両手で顔を隠して喋らなくなってしまった。亜麻色髪から出た耳が、先の方まで真っ赤になっている。傍から見れば実に微笑ましい光景なのだが……。


 (ルネリア、この後に戻って仕事出来るのかしら……)

 主計部隊の長である彼女がこのままの状態では、作業効率が非常に落ちる。下手をすると分隊長にも事情を聞かれ、叱責される恐れも出てきた。彼女のフォローと、万が一のためにも各所への根回しと調整が必要になった瞬間だった。


 (話の流れを作ったのは私だし。これが因果応報ってやつね……)

 今日は帰りが遅くなりそうである。


 「……そういえば、キティルの雰囲気というか、表情が柔らかくなったのは軍師殿が来てからではないか?」

 「……はい。自分でもそう思います。軍師さまに来ていただけたおかげで、私はこの国の国民になれたと知ることが出来ました」

 キティルにとって、それが何より嬉しい事だったのだろう。その頃から彼女の雰囲気が変わったのを覚えている。以前は笑った所なんて見たこともなかったが、今ではこんなにも嬉しそうな表情をするようになった。


 「あの天啓騒動の時か……」

 「軍師さまからすれば、関係のない事なのでしょうが。それでも何かお贈りしたくて」

 本人に自覚があるかは分からないが、完全に顔が恋する乙女である。


 「いやー。それにしても三人とも想い人がいて何よりですなー」

 芝居がかった口調と仕草で椅子から立ち上がるミケーネを、二人が見上げる形になった。ルネリアはまだ顔に手がくっついたままだ。

 名残惜しいがそろそろ仕事の時間である。この会も締めなければならない。


 「ミケーネ、そういうお前はどうなんだ?」

 「そういえば、ずっと読んでいた本はどのような?」

 すっかりいつもの顔に戻ったスールが、「お前も話せ」と聞いてくる。

 キティルは普通に、ミケーネが読んでいた本が気になったらしい。


 「私は相手いないし。この本は分隊長から勧められた詩集本で、そうね」

 「『恋は相手を想うことに始まり、愛は相手に何かしてあげることから始まる』って書いてあったわ」


 「「「……」」」

 スールとキティルがまた俯いて沈黙してしまった。ルネリアに至ってはもう指まで赤い。


 そんな茹だこ三人組を見て、ミケーネは食堂の天井を仰ぐ。少し日が傾いてきたが、まだまだ日没は先のようだ。

 (とりあえず、今から兵站総監に理由をつけて「しばらく主計部隊に顔をだすな」って言ってくることから始めなきゃかしら)


ここまでお読みいただきありがとうございます。

いろいろ意味不明だと思います。完全に自己満足で書いて投稿しただけです。


ただ何かを書き上げて公開してみたかったんです。

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