第97話 覚醒
「死ねやぁー、クソゴブリンがああー!!」
「ギギャァー、ガギガガギガガアアー!!」
ガキィーン、バキバギィー、ドッカーン!
最初は押されていたミンミンも、今では互角に打ち合っている。
そして、ジャンプ一番バスターソードを叩き込んだ。
ガガーンッ、ミシィーッ!
ゴブリンウォリアーのバトルアックスに亀裂が走り、そこへ容赦なく追撃をかけるミンミン。
ガガガーンッ、ミシミシミシィィーッ!
ブツブツ言いながら、彼女は単調な攻撃を繰り返した。
「ゴブリン殺ーす、ゴブリン殺ーす、ゴブリン殺ーす、ゴブリン殺おおおーすっ!!」
その時だった。突然、彼女の体に力が溢れ、バスターソードの魔石が光る。そして、大ジャンプと共にバスターソードを高らかに振り上げたミンミンは、バトルアックス目掛けて思いっきり叩きつけた。
バギィィィィィーンンンッ!!
すると、彼女の頭の中に文字とも声とも言えぬメッセージが流れてきた。
『スキル、ゴブリン特攻発動! スキル、粉砕発動!』
「えっ、今の何!?」
次の瞬間、バトルアックスが粉々に砕け散る。
バキバキバキバキィィー、パリーン!
そして、その勢いのままゴブリンウォリアーを真っ二つに斬り裂いていった。
ズバババババババァァァーーーッ!!!
「ゴガギグギグエエエエエエエーーッ!!」
体を斬り裂かれたゴブリンウォリアーは靄となって消え、その跡には見たこともない直径3センチの大きな魔石が転がっていた。
そこへ親衛隊、いや4番隊がミンミンの元に駆け寄ってくる。
「ミンミン、カッコィィー!」
「ミンミン、ステキィィィー!」
「ミンミン、アイシテルゥゥー!」
「ゴブリンスレイヤー、バンザーイ!!」
ちょうどその時、上空に赤の信号弾が打ち上がり近藤が空を眺めて呟く。
「どうやら、土方は総理を確保した様だな」
現在、近藤達がいる場所は1号機と2号機の中間地点。ちょうど創真が下見で千里眼を使用していた場所だ。
そして、前方に見えるのは逃げる群衆を追って、山へ雪崩込んでいくゴブリンの集団。
近藤は休む間もなく皆に告げる。
「我々は前方に見えるゴブリンの集団を掃討しながら山頂を目指す。全軍進めぇぇー!」
近藤率いる4番隊は、山へ入っていくゴブリンの最後尾を目指して駆け出していった。
・・・・・
一方、山の中腹を守る井上6番隊は、倒しても倒しても次々と現れるゴブリンに追い込まれ、遂には周りを囲まれて絶体絶命のピンチに陥っていた。
4人は4枚の盾で前後左右をブロックし、いわゆる方円の陣を敷いて、なんとかゴブリンの攻撃を防いではいたが、気力も体力も擦り減らして崩壊間近となっていた。
「小隊長、俺、結婚したかったっす!」
「小隊長、最後に彼女に会いたいっす!」
「か、母ちゃーん!」
皆の最後の言葉を聞きながら、井上も後悔していた。
あぁーあの時、特別手当に目が眩んでGAT隊に入るんじゃなかった。家族には遺族年金が幾ら振り込まれるのかなぁ……。
じわりじわりと追い詰められ、もう駄目だと観念した時だった。
左の茂みから威勢の良い掛け声と共に原田率いる5番隊が現れ、6番隊を取り囲むゴブリンに背後から襲いかかった。
「行けぇぇぇー、うおおおおおー、6番隊を守れぇぇぇぇぇーっ!!」
ザシュッ、バシュッ、ズバッーッ!!
「源さん、大丈夫っすか?」
「おおー、原田くーん!!」
「5番隊だ、5番隊が来たぞぉー。助かったんだぁー、わあああああああー!!」
6番隊の喜び様は尋常では無かった。それほどピンチだったのだ。そして、5番隊が合流した中腹の守りは、段々とゴブリンを押し返していく。
そこへ、麓から仲間の声が聞こえてきた。
「おーい、生きているかあー? 4番隊が助けに来てやったぞーい!」
「バカモン、こんな時におちゃらけるヤツがあるかっ!」
あれは……近藤中隊長と藤堂の声だ。
あまり活躍してない原田が、ここぞとばかりに叫ぶ。
「よぉぉーし、挟み撃ちだぁー。ゴブリンを押し戻せぇぇぇーっ!」
「わぁー、行けぇー、突っ込めぇぇぇー!」
上下から挟み撃ちにあったゴブリンの集団は、瞬く間に数を減らしていく。
特に活躍していない原田隊の猛攻は激しいものであった。
ザシュッ、バシュッ、ズバッーッ!!
グギャー、ギギャー、ゴギャーッ!!
やがて、最後の1匹となったゴブリンを、ミンミンがバスターソードの面で叩き潰す。
「死にさらせー、クソゴブリンがああー!」
ベキベキベキィー、グシャァァーッ!!
ミンミンの必殺技『ハエ叩き』が炸裂し、それを見た5番隊と6番隊は背筋に悪寒が走り、ミンミンファンをやめようと思った。
対して4番隊はミンミンに大声援を贈り、彼女を崇拝した。
やがて、その場が落ち着くと井上が近藤の元に駆け寄ってくる。
「中隊長、助かりましたぁー」
「よくぞ生きていた井上、怪我はないか?」
「はい、なんとか大丈夫です。それで……山頂で副長がお待ちです」
井上はあえて総理の事には触れなかった。
「分かった。合流しよう!」
GAT隊の面々は、井上に案内されて山頂へと向かっていった。
・・・・・
山頂で近藤と土方が合流した頃には、鹿児島湾の波面が夕日に赤く染まり、辺りは薄暗くなっていた。
そして、土方から色々と報告を受けた近藤は、総理の元へ挨拶に行く。
「岸本総理、GAT中隊長の近藤です。ご無事で何よりです」
「おおー、君が近藤君かね。噂は聞いていますよ。剣の達人なんだってねー」
「ありがとうございます。それで今後の事ですが、今から夜間行軍を開始しますので、出発の準備をして下さい」
それから10分後、近藤達は垂水市を目指してへ山道の夜間行軍を開始した。
時計の針は18時30分を差しており、日没まであと30分。明るい内に少しでも距離を稼ぎたいと思う近藤であった。
【第97話 覚醒 完】




