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武器商人は忙しい!〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記  作者: 孤高のやまびこ
第4章 決戦

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第95話 牙突

 斎藤率いる3番隊は山間部を東へ進み、牛根大橋側のレールガン1号機に来ていた。


 ここまで、3番隊は数匹のゴブリンに遭遇しただけで大した障害も無く、想定よりも早く目的地に到着した。


 おそらく、ここにいたゴブリンは群衆を追いかけて牛根大橋を渡っていったと思われる。そして、1号機の周りには、配備された自衛官達の無惨に引き裂かれた死体が至る所に転がっていた。


 3番隊が地面に横たわる無数の死体を確かめていると、上空に赤い信号弾が上がった。


 斎藤が空を見上げて呟く。


「どうやら生存者はいないようだし、戻ろうか?」


 その時だった。


「いやぁぁぁぁぁーーーっ!!!」


 少し離れた漁港の建物から女の悲鳴が聞こえてきた。


 斎藤隊は剣を抜いて素早く建物に近付き、静かに中を覗く。すると、十数匹のゴブリンと灰色がかった大きなゴブリン1匹が、1人の女性の衣服を鋭い爪で引き裂いていた。


 ビリビリビリーーッ!


「いやぁぁぁー、やめてぇぇぇーっ!」


 泣き叫ぶ女性の姿は下着1枚だけとなっており、周りのゴブリンは揺れる大きな胸を見てヨダレを垂らしながら奇声を上げて騒いでいる。


「ギャッ、ギャッ、ギャギャギャッ!!」

「ギャッ、ギャッ、ギャギャギャッ!!」


 また、壁際には自衛官の服を着た5人の女性が震えながら縮こまっていた。


 どうやら、ゴブリン達は女性自衛官だけを生け捕りにして、1人づつ、いたぶろうとしている様だ。


 斎藤が6人の部下に小声で指示を出す。


「いいか、ここで例の銃弾を使う。その後は剣で突入だ。あのデカいのは俺がやる。行くぞッ!」


 3番隊は銃を構えると、ゴブリン達に狙いを定め一斉に発砲した。


 パン! パパン! パパパーンッ!


 特殊な銃弾のお陰で6匹のゴブリンが倒れた。しかし、デカいゴブリンの背中に当たった弾丸は、皮膚に食い込んではいるものの骨には達しておらず、銃創からは緑色の血が数滴流れ落ちるだけ。


 背中を撃たれたデカいゴブリンが鬼の形相で斎藤を睨みつける。そして、床に転がる大きなモリを拾い上げて雄叫びを上げた。


「ギャオオオオオオオオーーーッ!!!」


 すると、残る6匹のゴブリンが鉄パイプや廃材を持って3番隊に襲いかかってきた。


 斎藤は雑魚のゴブリンを部下に任せ、単身デカゴブリン目掛けて飛び込んでいく。


「もらったあああーっ!」


「ググギャギャーッ!」


 ガキィィーーンッ!


 早足剣で相手の懐に入った斎藤の初太刀を、デカゴブリンはモリの柄で受け止めた。そして、力任せに横薙ぎを払う。


 キリキリキリ、ブウゥゥーーン! 


「ぐううッ!!」


 デカゴブリンの重い一撃を剣で支えきれず、斎藤は吹き飛ばされて壁に激突した。


 バーン、ガラガラガラガラガラッ!


 血反吐を吐きながら立ち上がろうとする斎藤へ、間髪入れずモリを振り下ろすデカゴブリン。


「ギギガギカ゚ァーッ!」


 ガキィィーン!!


 かろうじて剣で受け止めた斎藤の体は、またもや吹き飛ばされて再び壁に激突した。


「がはっ!」


 成す術なく崩れ落ちる斎藤。


 跪きピクリとも動かない斎藤の元へ、デカゴブリンがゆっくりと近付いていく。そして、モリを大きく振り上げた時だった。


 先程まで跪いていた斎藤の片膝がいつの間にか立っており、なぜか剣は鞘に収まっている。

 そして、閃光一閃。


 シュパァァァァァァーーッ!!


 モリを振り上げたゴブリンの右手が宙を舞い、腕から緑の血が大量に噴き出した。


「ギ、ギィャァァァァァー!!」


 最後の一手である居合抜きを使った斎藤は続けざま右腕を前に突き出し、その上に剣先を乗せて重心を後ろへと大きく反らす。

 まるで弓使いの様な構え。そして、短かく叫んだ。


「とどめだあああーっ、牙突ッッッ!!」


 次の瞬間、激しい踏込みと共に、大きく後ろへ引いた左手の剣が弓矢の如く発射され、デカゴブリンの喉を突き破った。


 ダダンッ、ズババババババァァーーン!!


「ギィャァァァァァァァァーッ!!」


 デカゴブリンの喉に大きな風穴が空き、灰緑の巨体が崩れ落ちる。


 グラグラグラッ、ドサーッ!


 斎藤の奥義、無明片手一本突きが見事に決まった。


「フッ!」


 無明片手一本突き。沖田の三段突きに比べるとスピードは劣るが、威力とリーチは遥かに上回る。


 但し、片手の一本突きは捨て身の大技で、使い所は絶体絶命のピンチか勝利を確信した時くらいである。


 しかし、斎藤は事あるごとに、この捨て身の技ばかり練習していた。そして名前も正式名を使わずに『牙突』と言っている。 


 そう、斎藤も創真と同じ『るろうに剣心』の大ファンなのだ。それ故、名前が似ている斎藤一の必殺技を真似ているオチャメな斎藤陸尉であった。


 その後、囚われの女性自衛官6名を救出した3番隊は、彼女達から何度も何度もお礼を言われた。


「あ、ありがとうございます。ありがとうございます。うううっ!」


 特に裸にされた胸の大きな女性は、斎藤に飛び付いて一向に離れようとしない。


「お、俺には妻と子があああ……!」


 女性に抱きつかれながら、この後の事を考えていた斎藤は、部下に『救助者あり合流不可』を意味する緑の信号弾を打たせると、3番隊の皆に告げた。


「彼女達を連れて本隊に合流するのは危険だ。俺達は霧島方面へ撤退する!」


 斎藤3番隊は稼働可能な車両を確保すると、6名の女性自衛官を乗せて霧島市へ撤退していった。



【第95話 牙突 完】

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