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武器商人は忙しい!〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記  作者: 孤高のやまびこ
第4章 決戦

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第94話 狐と狸の化かし合い

 しばらくすると、茂みの中から総理一行が現れた。


 総理は精根尽きた顔をしていたが、山頂のGAT隊を見付けると、みるみる元気を取り戻し駆け寄って来た。


 それに対し、ぬけぬけと敬礼をする男は副長の土方だ。


「総理、ご無事で何よりです!」


 岸本も、ぬけぬけとお世辞を言う。


「おおーGAT隊。よくぞ助けに来てくれた。やはり、一番頼りになるのはGAT隊だよ!」


 てめぇー、GAT隊を潰そうとした張本人が、どの口で言いやがんだあ! と、心の中で毒を吐きながら、土方はニコニコと笑みを返す。


「ハッ、GAT隊には待機命令が出ておりましたので、東京から駆け付けるのに随分と時間がかかってしまいました」


 土方の口から待機命令という言葉を聞いた途端、総理の顔が引き攣った。


 なぜなら自ら選んだ防衛大臣の勝手な判断が、自分をここまで窮地に陥れたからだ。


 まあ、自分の命で償ってもらった訳だが……。


 それでも、岸本は浜井大臣に心底ムカついていた。故に思わず口に出てしまう。


「全く、有能なGAT隊を東京に待機させておくなんて、浜井の無能さには呆れ返るよ。自業自得だ!」


 ニタァ〜。


 土方は心の中でほくそ笑み、白々しく問いかける。


「そういえば、浜井大臣のお姿が見えませんねぇ〜。総理と一緒にお逃げになったと聞いておりましたが……どうかされたんですか?」


「あ、あぁ、残念ながら、浜井君はゴブリンに襲われてしまってねぇ、我々では助ける事も出来なかったんだよ」


「それは……、本当ですかぁ〜?」


 土方は狐の目を更に細め、無言で総理一行を睨みつけた。すると、彼らの額から冷や汗が流れ落ち、各々が一斉にツバを呑み込む。


 ゴクリッ…………。


 しばし無言の会話を楽しんだ後、土方は無念の表情を浮かべた。


「それは残念です。有能な方を失いました」


 心にも無い事をペラペラと口にする土方は心底怒っている。


 貴様らぁー、ただで済むと思うなよぉー!


 狐の残念がる表情に、まんまと騙せたと思い込んだ狸一行は、ホッと胸を撫で下ろしたのだった。


 そんな総理一行に興味を失くした土方は、山頂で休憩するよう促すと、部下に総理確保を意味する信号弾の発射を命じる。


 バシュッー! パラパラパラパラ……。


 信号弾が発射され、暫くの間、上空に赤い光の玉が漂った。


 それを見た岸本総理が土方に尋ねる。


「ヘリは何分後に到着するのかね?」


「総理、残念ながらヘリは来ません。あれは、周辺に散らばったGAT隊員を呼び戻す為の合図です」


 岸本がムッとした顔で問い正す。


「なぜ、ヘリは来ないのかね?」


「岸本総理、ゴブリンには弓使いがおり、ヘリは簡単に撃ち落とされてしまいます。ゴブリンが内陸部に侵入した以上、撃ち落とされる確率が高いと思われますが、それでもヘリに乗りたいですかぁー?」


「うぬぬ……」


 島民救出作戦の折、何機ものヘリが撃ち落とされたのを知っている岸本総理は、唸ってはみたものの、どうする事も出来ず、GAT隊の指示に従う事にした。


 それをいい事に、土方が悪い顔で優しく諭す。


「総理、GAT隊が集結するまで、もう暫くかかります。今の内に少しでも休んでおいて下さい。この後、長ーい山道の行軍が待ってますからねぇ〜」


「わ、分かった」


 ここまでの逃避行で疲れ果てていた総理一行は、山頂に立てられたGATの旗の元へ行くと崩れる様に座りこんだ。


・・・・・


 一方、上空に打ち上げられた赤い信号弾を見ていた4つの部隊は、それぞれが危険な状況に陥っていた。


「井上小隊長、群衆が迫って来ます。すぐ後ろにはゴブリン多数!」


 土方から殿軍(シンガリ)を任された井上は、心底ビビッていた。


 小隊長の中では最も弱く、部隊は自分を含めたったの4人。対して、迫りくるゴブリンは、ザッと数えても50匹以上。そして、逃げて来る群衆は20人ほどで、そのほとんどが自衛官。うち2人が民間人の様だ。


 山頂から見下ろした時には、100人近く見えていたのに、その8割がゴブリンの餌食になった様だ。


 井上は、この20人だけでも救おうと、群衆に向かって呼びかける。


「GAT隊でーす。我々がここで食い止めるので、皆さんは山頂を目指して下さーい!」


 井上の言葉によって死にものぐるいだった群衆の心が一瞬ゆるみ、最後尾を走っていた民間人がゴブリンに腕を掴まれてしまった。


「危ないっ!」


 パンッ!


 銃声が一発聞こえ、ゴブリンがパタリと倒れる。


 部下の1人が貴重な銃弾を使ったのだ。続いて、もう一人の民間人も捕まりそうになり、更に3発の銃弾が発射された。


 これで、残りの銃弾は無くなった。そして相手は約50匹。井上達はしっかりとロングソードを握りしめる。


 やがて、最後尾の民間人が井上達の横を通り過ぎると、ゴブリンが束になって襲ってきた。


「ギギャギギャギギギィーッ!」


「行かせるかあああー、魔石シールド構えええええーっ!!」


 先頭のゴブリン4匹が横一列に盾を構えた井上隊に棍棒を振り下ろす。


 ガキィン、ガキィン、ガキィーン!!


 棍棒は4つの盾に跳ね返され、そこへ4人が突きを放つ。


「今だッ、突き刺せぇぇぇーッ!!」


 ズバーッ、ズバーッ、ズバーッ!!


 天然理心流にとって突きは最も重視されており、試衛館門下生の彼らにとって安定した攻撃である。そして、その最終形が沖田の3段突きとなる訳だ。


 また、井上隊が持つ盾は、創真が持ち込んだバックラーを改造したもの。見た目は機動隊が持つ防弾プラスチックの盾だが、そのプラスチックには粉砕された魔石が散りばめられている。


 藤田開発部長曰く、高分子ポリマーと魔石は親和性が高いとの事だ。


 そういう訳で、最弱6番隊の秘策として4つの魔石シールドを与えられたのだが、ゴブリン50匹を相手に、どこまで持ちこたえる事ができるのか?


 井上小隊長は大きな不安の中にあった。



【第94話 狐と狸の化かし合い 完】

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