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武器商人は忙しい!〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記  作者: 孤高のやまびこ
第4章 決戦

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第93話 鬼の副長

 山頂では、土方率いる6番隊が、双眼鏡で下界の様子を伺っていた。


「副長、中腹に総理一行を発見しました。急いで救援に向かいましょう」


 井上小隊長が双眼鏡を見ている副長の土方に指示を仰ぐも、返事が返ってこない。


「フフッ、どうやら浜井のクソ大臣は足を挫いている様だな。浜井のペースで逃げ続ければ、いずれゴブリンに追いつかれるだろう。これは見ものだな、ハハッ!」


 ブツブツ言っている土方に向かって、井上がもう一度呼びかける。


「副長、どうしましょうか?」


 ようやく、悪い笑みを浮かべる土方が指示を出した。


「井上、ハンディカメラを用意しろ。そして、総理がピンチになるまで手を出すんじゃないぞ!」


 司令官の陸からは、総理の確保が最優先との指示が出ていた。近藤であれば素直に従ったであろうが、癖の強い土方ではそうはいかない。


 土方は常に一石二鳥を考え、目的を果たせるなら、どんな犠牲も厭わない冷徹な男であった。


 だからと言って、誰彼構わず犠牲を強いる訳では無く、あくまで味方以外が対象である。

 更に、敵ならば容赦無くぶっ潰す鬼の様な一面を持っていた。


 土方の指示の元、6番隊は山頂から少し下り、総理一行を遠巻きに眺めた。


 記録班でもある6番隊は、磁気嵐対策がなされた撮影機材を持っており、1人が岸本総理を、1人が浜井防衛大臣を画面に捉え撮影を始める。


 しばらくすると、総理一行が山を登って来た。少し登っては立ち止まり、後ろを向いてはイライラを募らせている。


 遂には、いつも冷静な岸本総理が怒鳴り声を上げた。


「浜井ぃぃー、早く来んかあああーっ!」


「総理ぃぃー、待って下さーい。足が痛くて、もう歩けませーん」


 SP2人に両脇を抱えられ、ゆっくりした足取りで歩く浜井は、足手まといの何者でもない。

 そして、下からはゴブリンに追われる群衆が、悲鳴を上げながら徐々に近付いて来る。


 この危機迫る状況を鑑みて、遂にSPのリーダーが総理に進言した。


「総理、浜井大臣は足手まといです。ここで見捨てましょう!」


 岸本総理は、待ってましたと言わんばかり即座に頷く。


 そうして、総理の許可を得たSPのリーダーは、浜井の両脇を抱える部下に指示を出した。


「残念だが、浜井大臣とはここでお別れだ。我々は総理のSPであって、あなたのSPではない。2人共、職務に戻れ!」


 リーダーの指示を受けた2人のSPが浜井の腕を払いのけると、支えを失った浜井は地面に崩れ落ちた。そして、大声で泣き叫ぶ。


「あ、ああー、総理ぃぃー、置いて行かないで下さーい。まだ死にたくありましぇぇーん!」


「浜井君、運が良ければ又会おう。がんばって生き延びたまえ!」


 泣きじゃくる浜井に別れを告げた岸本総理は、山頂を目指して歩き出した。しかし、後ろから浜井が大声で喚き散らす。


「総理ぃぃー、私はあなたの裏献金を知っているんですよーっ。それに、愛人の事だってぇー、それにそれにぃぃぃ……」


 すると、岸本の足がピタリと止まり浜井の方へ向き直った。その彼の顔は無機質な能面の様になっており、手にはSPから渡された拳銃を持っている。


 そして、浜井の額に狙いを定めると躊躇なく発砲した。


 パンッ!


 ドサーッ!


 浜井は額を撃ち抜かれて、その場に崩れ落ちた。


 岸本は冷徹な目でSP達を見る。


「ゴブリンを狙った弾が、不幸にも浜井君に当たってしまいました。それと、君達の将来は私が約束します。いいですね?」


 5人のSPは豹変した総理の顔を見て、それぞれに頷いていた。


・・・・・


 クックックックックッ!


 少し離れた茂みの中で、土方が声を殺して笑っている。そして、撮影中の隊員に囁やいた。


「今の、撮れたか?」


 隊員が震えながら何度も頷く。


 まさか、こんな場所で殺人事件に出くわすなんて! しかも、犯人が総理大臣。撮影した隊員の手が震えるのも仕方が無い。


 対して、想定以上の収穫を得た土方は楽しそうに笑っている。


 当初、土方は群衆を見捨てる総理大臣と防衛大臣の映像を想定していた。群衆がゴブリンに追われて、総理の元へかけて来る。それを振り払って逃げる総理の映像を撮影し、そのネタで河田元防衛大臣や真壁室長を守るつもりであった。しかし、守るためのネタが、攻めるネタに変わってしまった。


 土方の頭の中で、新たな戦略が組み立てられていく。


「よし、撮影は終了だ。撮影者1人は5番隊の捜索、もう1人は俺と山頂に戻る。井上達はここでゴブリンを食い止めて、出来る限り群衆を山頂へ逃がすんだ」


「了解であります!」


 指示を出し終えた土方は、1人の部下を引き連れて山頂へ戻って行った。


 その後、総理一行をやり過ごした井上は、麓から群衆を追いかけてくるゴブリンに備えるため戦闘の準備を始めた。


・・・・・


 一方、山頂に戻った土方は、今しがた到着したかの様な振る舞いで、総理一行がいる林に向かって呼びかけていた。


「GAT隊でーす。助けに来ましたぁー」


「誰かぁー、いませんかぁぁー?」


 すると、下方の林の中から声が聞こえてくる。


「おーい、岸本総理はここだああー!」


 SPの必死な声を聞きながら、土方が大きな声で返事をした。


「山頂は安全でーす。頑張って登ってきて下さーい!」


 総理すら迎えに行かない鬼の副長は、敵と見なした者には容赦のない非情な男であった。



【第93話 鬼の副長 完】

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