第91話 ゴブリンスレイヤー爆誕!
ステージの前で、6対6で睨み合う角刈り1番隊とホブゴブリン。
副官マサを筆頭に、筋肉で威嚇する角刈り隊。
フン、フン、フゥンッ!
ホブゴブリンも、灰緑にテカる腕に力こぶを膨らませ、負けずに筋肉ポーズを取る。
ギッ、ギッ、ギィンッ!
やがて、マサとホブゴブリンの間に、筋肉同士の友情らしき空気が流れ、目を合わせてニヤリと笑みを交わす。
「フッ!」
「ギギッ!」
しかし、それは筋肉同士に芽生える友情などでは無く、総子への筋肉アピール。この場の勝者が、総子とアヤヤを我が物に出来るという暗黙の会話が成立していた。
しばし無言の睨み合いが続くと、しびれを切らした角刈り隊がホブゴブリンに襲い掛かった。
「死ねやぁぁぁー、エロゴブリンッ!」
早足剣で一気に間合いを詰めた角刈り隊は相手の頭を狙う。いわゆる剣道の先手必勝の技、飛び込み面だ。
対して、構えも出来ていない隙だらけのホブゴブリンに、先手の一撃は本来なら脳天をかち割るはずであった。
しかし、魔法障壁2を持つホブゴブリンに安物ロングソードでは頭をかち割る事が叶わず、額に傷を負わせただけ。角刈り隊の剣は横へと弾かれてしまった。
そこへ、怒声を上げたホブゴブリンが反撃に出る。
「ギギギギェェェーーッ!!」
ブウゥゥーーンッ、ガキィィーーンッ!!
鉄骨の横薙ぎをロングソードで受け止めた角刈り隊は、剣は折れないまでも威力を打ち消す事かなわず、次々とふっ飛ばされていく。
「ぐうーっ、うわあああああー!!」
ふっ飛ばされた角刈り達は、地面に体を打ち付けられて血反吐を吐いた。
「がははっ、げふっ、ごほほっ!!」
そこへ、追い討ちをかけんとするホブゴブリンの前に隊長の沖田総子が立ちはだかる。
「ここは行かせん。私が相手だああーっ!」
行く手を阻む総子を強敵と認めたホブゴブリン6匹は、追撃は止めたもののニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
なぜなら、ここまで切込み隊長として前線を突き破ってきた総子の疲労はピークに達しており、既に息が上がっていたからだ。
「ハァ……、ハァ……、ハァ……」
「ギヒッ、|ギュギャギャア!《コノオンナ、オレノモノ!》」
総子の疲労を悟ったホブゴブリンは、仲間と示し合わせて総子を囲んでいく。そして、前と左右から一斉に襲い掛かった。
「ギャギャギャギャギャギャーーッ!」
キン、キン、ガキガキガキガキーンッ!!
防戦を余儀なくされる総子。
一対一なら奥義を放つ事も出来るが、6体のホブゴブリンから次々と繰り出される重い攻撃に、さすがの総子もジリジリと追い詰められていく。
後ろの角刈り達は倒れたままで助けは期待できない。
ヨダレを垂らしながら、ジワリジワリと距離を詰めてくるエロい顔のホブゴブリン。
「ギヘへッ! グフフッ! ギヒヒッ!」
足がよろけ、刀を杖にひざまずく総子、絶体絶命のピンチ!
「くっ!」
これをチャンスと見たホブゴブリンは、総子目掛けて再び襲いかかった。
「ギャギャギャギャギャギャーーッ!」
しかし、次の瞬間、憤怒の雄叫びと共に巨大な風圧が総子の頭上を通り抜けた。
「うぉおおおりぁああああーーーっ!!!」
ブウウウーーーーーンッ!!
総子を囲むボブゴブリンの胴体が盛大な血飛沫を巻き上げ、切れ味の悪い刃物で強引に引き千切られていく。
ブチブチブチッ、ベキベキベキッ、グチャ、ビチョ、ベチョーッ!!!
「ギギャァァァァァァァァーーーーッ!!」
首から上が無くなっている者、腹の半分が抉られている者、両腕がもぎ取られている者、上半身が丸ごと無くなっている者。
凄まじい凶器の嵐が、総子を囲むホブゴブリンをアっという間に一掃していった。
「師範、大丈夫かい?」
「あ、あぁ、助かったよ」
そこに立っていたのは、巨大なバスターソードを軽々と肩に担ぎ、楽しそうに笑うミンミンであった。
そして、その後ろから山南小隊長が何やら叫びながら走ってくる。
「ミンミーン! 勝手に前に出るんじゃありませーん」
山南を見て焦った顔のミンミンが総子に告げる。
「あたしは、ステージの上にいるデカいのを殺ってくるから。じゃあねっ!」
そう言い残したミンミンは、山南から逃げる様にステージへ飛び上がり、ゴブリン司祭の脳天にバスターソードを叩きつけた。
「死にさらせえええー、エロゴブリンッ!」
「ヒギッ、ヒギヒギヒギャァァーッ!!」
ミンミンの剣が未熟なのか、それともわざとなのか、バスターソードは面でゴブリン司祭の頭上に落ちると、ハンマーの如く全身を捻り潰していった。
メキメキメキメキメキメキメキィーーッ、グッシャァァァァァァァーーーーーッ!!!
ぺしゃんこに押し潰されたゴブリン司祭の身体は、あっけなく肉の固まりと化した。
ただ、その肉片の下にある奇妙な魔法陣が緑の血を吸い取り、薄っすらと光り始めた。
遂にホブゴブリンのボスを倒して興奮冷めやらぬミンミンは、バスターソードを頭上高らかに掲げると、ステージ下の兵士達に向かって雄叫びを上げた。
「くそゴブリンの親玉はあああー、このミンミンがああー、討ち取ったぞおおおおおおーーーっ!!!」
すると、ステージ下の兵士達が、てんでんに声を上げる。
ミンミ〜ン! カッコイイイイ〜ッ!!
ミンミ〜ン! ステキイイイイ〜ッ!!
ミンミ〜ン! 大好きイイイイ〜ッ!!
わああああああああああああああああああああああああああああーーーっ!!!!!
いつの間にか2番隊と4番隊もゴブリンを制圧してステージの周りに集まり、ミンミンに大声援を送っていた。
そして、その中の誰かが叫んだ。
「ミンミンはゴブリンスレイヤーだあー!」
おおおおーっ、ゴブリンスレイヤーッ!
ゴブリンスレイヤーッ! ゴブリンスレイヤーッ! ゴブリンスレイヤーッ! ゴブリンスレイヤーッ! ゴブリンスレイヤーッ!!
わあああああああああああああああああああああああああああああーーーっ!!!!!
会場にいる兵士の誰もが、数え切れぬゴブリンを倒し、アドレナリンが満ち溢れた一種のトランス状態。
そこへ、ゴブリンのボスを倒したミンミンの登場で、リスペクトと共に癒やしを求めた兵士達は、彼女に熱い声援を贈った。
ミーンーミン! ミーンーミン! ミーンーミン! ミーンーミン! ミーンーミン! ミーンーミン! ミーンーミン!
この日より、ミンミンの二つ名がゴブリンスレイヤーとなり、2番隊と4番隊はミンミンの熱狂的信者となった。
程なくして、近藤隊長と共に到着した司令官の陸がステージに上り辺りを見回す。
すると、200匹近くいたゴブリンは全て掃討されていた。しかし、地面にはそれを上回る数の人の死体が無惨な姿を晒しており、ゴブリンの無慈悲さを物語っていた。
陸はステージに残された10名の人質に向き直り、その中央に立つ令和の歌姫アヤヤに問いかける。
「アヤヤさん、自衛隊の黒原総監を見かけませんでしたか?」
アヤヤはレールガン2号機の方を指差して、吐き捨てるように答えた。
「自衛隊の偉い人なら、真っ先にあの戦車の中へ逃げ込んで行かれましたわ。ホント最低ねっ!」
【第91話 ゴブリンスレイヤー爆誕! 完】
ここまで読んで下さった方へ。
いよいよ第1部の終盤です。
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