第88話 地獄絵図
群衆を追ってきたゴブリンの先頭を斬り伏せた総子の前に、数百匹のゴブリンが雪崩を打って押し寄せてくる。
ギギギギギュァ〜!
ギギギギギュィ〜!
「はぁぁぁぁぁぁああああーーーっっ!」
ヒュン、ヒュン、ヒュン!
バシューッ、ザシューッ、ブシューッ!!
総子の剣技の前に、頭から緑の血を吹き出して次々に崩れ落ちるゴブリン達。
しかし、総子が女と分かると、目の色を変えて我先にと襲ってきた。
|ギギギギギュィ〜!《あのオンナ、いただき〜!》
|ギギギギギュィィ〜!《ヒャッハ〜、オンナ〜!》
|ギギギギギュィィィ〜!《オンナ、オンナ、オンナ〜!》
「ゲス共めっ!」
総子は試作日本刀を構え、3連打の突きを放つ。
ヒュン、ヒュン、ヒュン!
ガァァッ! ギィィッ! グゥゥーッ!!
数百を超えるゴブリンの集団に、先陣を切って突き進む彼女の姿は、まるで北欧神話出てくる戦場のヴァルキリー。
総子は神速の剣を自在に操り、無数のゴブリンを斬り捨てていった。
「姐さぁぁーん!」
ようやく、部下6名が追いついてきた。しかし、ここで休む訳にはいかない。なぜなら、この先に救える人がいるかも知れないからだ。
総子は休む間もなく声を上げる。
「止まるなああ、進めえええーっ!!」
「うおおおおおおおおおおおーっ!!」
ガキーッ、バキーッ、ズバァァーッ!!
再びゴブリンの群れに突入した1番隊は、斬って、斬って、斬りまくった。
フンッ! フンッ! フゥンッ!!
ザシュッ! ガシュッ! バシューッ!
ガガーッ、ギギーッ、グェェェーッ!!
・・・・・
ここまで何匹のゴブリンを斬ったのだろうか……?
総子の全身はゴブリンの返り血で緑に染まり、その周りは足の踏み場も無い程に屍で埋め尽くされている。だが、その屍の山はゴブリンだけではなく、同じ数だけ人の死体も転がっていた。
首が無い者、手足がちぎれている者、衣服を切り裂かれ、露わになった裸を晒し狂気の顔で息絶えている者。赤い血と緑の血が入り混じり、この場所で何が起きたのかを物語る。
まさに、ここは地獄絵図と化していた。
「姐さぁぁーん、ご無事ですかぁー?」
角刈りマッチョの副官マサが駆け寄ってきた。
「ああ、問題ない」
1番隊は数百匹のゴブリンの壁を、総子の先駆けで強引に突破した。そして、ゴブリンの壁を越えた先に見たものは、ステージに並ぶ若くて美しい10人の女達。その中には、令和の歌姫アヤヤの姿もあった。
そして、彼女らの前には司祭服を纏った一回りデカいゴブリンがおり、マイクを持って司会をしていた。
|ギギギギギギギギギギギュァー!《レディースアンドジェントルメーン!》
|ギギギギギギギギギュィィー!《最初のまな板ショーはこのオンナだー!》
そう言うと、ゴブリン司祭は鋭い爪を剥き出し、その女の衣服を切り裂いていった。
ビリビリビリーッ!
「いやぁぁぁぁぁーっ!」
女性の叫びに呼応して、ステージ周りのデカいゴブリンが小躍りして奇声を上げる。
|ギギギギギュィー!《そのオンナ、ヤラせろー!》
|ギギギギギュィィー!《俺がヤル〜、俺がヤルー!》
|ギギギギギュィィィー!《オンナ、オンナ、オンナー!》
身を乗り出したゴブリン達が、拍子に合わせてステージを叩く。
ギャッ、ギャッ、ギャッ!
バンッ、バンッ、バンッ!
まるで、何かの儀式か、はたまたコンサートか?
大きな盛り上がりの中で、ゴブリン司祭が1匹のデカいゴブリンを指名した。
|ギギギギギュァー!《お前一番殺した。褒美だ!》
ゴギャアアアアアアアーーーッ!!!
指名されたゴブリンは嬉しそうな雄叫びを上げてステージに駆け上がった。そして、自慢げに巨大マラを女の顔の前に突き出した。
「いゃぁぁぁー、やめてぇぇぇーっ!」
ギャッ、ギャッ、ギャッ!!
バンッ、バンッ、バンッ!!
女の悲鳴を聞いて歓喜するゴブリン達。その中でも特に熱狂しているのが、灰緑色のデカい体をしたゴブリンの上位種ボブゴブリンであった。
1番隊がゴブリンの壁を突破してきた事にも気付かずに、ステージに群がる魔物達は下品極まるコンサートを楽しんでいた。
それを見た1番隊隊長の総子が、2番隊と4番隊の到着を待たずに声を荒らげる。
「ゆ、許せん。今すぐヤツらの息の根を止めるてやる。1番隊、続けええええーっ!!」
総子の怒声と共に、1番隊がステージを眺めるゴブリン達を背後から襲った。
ザシュッ、カ゚シュッ、バシュッ!
ギャャー! ギェェー! グェェー!
雑魚どもを斬り倒し、ステージに向かってくる1番隊に気付いたゴブリン司祭が、まな板ショーを始めようとするボブゴブリンに待ったをかけた。
|ギギギギギュァー!《お前、ヤツらを止めてこい!》
ギャ二ガギィ!
すると、ショーを中断させられたボブゴブリンの体が、怒りで灰緑から灰赤色に変わる。そして、ステージから資材の単管を引き抜くと、1番隊に向かって飛び上がった。
ヅガガカ゚カ゚ーンッ!
1番隊の前に、突如舞い降りたデカマラボブゴブリンが真っ赤な顔で吠えちぎる。
|ギギギギギュェェー!《俺の楽しみ邪魔する人間、コロース!》
「その汚い物をしまいやがれーっ! くそゴブリンがあああああーっ!!」
デカマラボブゴブリンに呼応して、勇んで前に出て来たのは角刈りマッチョの副官マサであった。
ズサッ……!
ジャリッ……!
ボブゴブリン対角刈りマッチョ。両者は武器を構えて睨み合う。
体格は同じ、筋肉マッチョ量も同じ。違うのは武器の格。相手は資材の単管に対し、こちらは刃の付いたロングソード、一見楽勝かと思われたが……。
ブゥゥゥゥゥーン!
ガキィィィィィーーンッ!!
振り回された単管をロングソードで受け止めたマサは、あまりの衝撃の強さにふっ飛ばされた。
「な、何だあ、この強さはあああーっ!?」
ドッパァァーン! ゴロゴロゴローッ!
GAT隊がまだ知らない、これが魔法障壁2を持つボブゴブリンの力であった。
【第88話 地獄絵図 完】




