第85話 GAT隊出動せよ!
「GAT隊出動せよ!」
真壁司令官の号令でGAT隊0号指揮車を先頭に、1から7号車が各小隊を乗せて格納庫から出て行く。
各車輌の隊員達が、それぞれに口ずさむ。
「おいおい、まさか本当に救援要請が来るとはなあー」
「さすがだぜぃ。俺達の司令官はっ」
「初の実戦、腕が鳴るぜー!」
GAT隊8台の車輌が朝霞駐屯地内を疾走し、ちょうど正門に差し掛かった時に事件が起きた。
キキキキキィィィーッ!
「誰だあ、こんな所にバリケードを作ったヤツはああーっ?」
「フフフッ、ここは通しませんよ!」
関東軍第1中隊が正門の前に車輌をバリケードにして立ち塞がり、その中央で仁王立ちした黒原中隊長がGAT隊を睨みつけていた。
「やれやれ、黒原親子には困ったものだ」
司令官の陸が呆れ顔で呟いた。そして、指揮車のマイクを手に取り、黒原中隊長に告げる。
「貴官の親父さんが窮地に陥っているが、そんな事をしていて良いのかい?」
父親である黒原総監の命令で、GAT隊を監視していた黒原中隊長が動揺する。
「な、何の事だ??」
「10分前に、あんたの親父さんから救援要請が入ったんだ。早く道を開けないと、親父さんが危険だぞ!」
それを聞いてGATの隊員達が声を上げる。もっとも、4番5番隊のバカ2人組の隊長が先頭を切って叫んでいるのだが……。
「黒豚ぁー、そこをどきやがれえええ!!」
「盗聴器なんか仕掛けやがって、クソゴキブリ中隊長がぁー!!」
「すぐにバリケードをどかしやがれえー腹黒中隊長!!!」
「はっらぐろ! はっらぐろ! はっらぐろ! はっらぐろ! はっらぐろ!!」
GAT隊から罵詈雑言を浴びせられ、黒原中隊長の顔がみるみる赤くなっていく。
「むむむぅ……真壁ぇぇぇーっ、貴様の浅はかな嘘には騙されんぞおおおー!!」
激怒した黒原中隊長が片手を上げると、関東軍第1中隊100名がGAT隊に向けて自動小銃を構える。
GAT隊も臨戦態勢で小銃を構え、両者睨み合いとなった。
「やれやれ、血気盛んなのは内も変わらんなあー」
陸は頭を掻いて再びマイクで語りかける。
「第1中隊の諸君、スマホを持っている者はニュースを見たまえ! 今、桜島で何が起きているのか、直ぐに分かるはずだ」
陸の言葉に反応した黒原の副官がスマホを見ようとした時、黒原が怒鳴り声を上げた。
「貴様あああー。任務中にスマホを見るとは何事かあああああーっ!」
しかし、それだけでは収まらず、後方から次々と声が上がる。
「おいっ、真壁陸佐が言っている事は本当だ。桜島が大変な事になっているぞっ」
「ほ、本当だ、こりゃあマズいぜっ!」
数人の隊員がスマホを見てつぶやくのに便乗して、数名の隊員が声高に吹聴する。
「GAT隊を妨害すると軍法会議だぞおおおおおおーっ!」
「防衛省から作戦指令書も届いているぞおおおおおーっ!」
「直ぐにバリケードをどかせえええーっ!」
すると、みるみる内にGAT隊の包囲網が解かれ、バリケードも撤去され、立ち塞がるのは黒原中隊長だけとなった。
「な、何が起こったというのだ……?」
一人立ち尽くす黒原中隊長の横を、悠然と通り過ぎるGAT隊へ、第1中隊の数名が敬礼を送っている。そして、陸と土方も彼らに敬礼を返していた。
というのは、黒原陸佐がGAT隊にスパイを送り込んでいたのだが、同様に真壁陸佐も土方に指示して第1中隊にスパイを送り込んでいたのだ。そして、今回のスパイ対決はGAT隊に軍配が上がったという訳だ。
膝をついてうなだれる黒原中隊長。その横を通り抜け、ようやく朝霞駐屯地を出たGAT隊は急ぎ入間基地へ進路をとる。
「真壁陸佐、上手くいきましたね」
「ああ、GAT隊に情報戦のプロがいて助かったよ、土方」
「いえ、任務を遂行したまでです。それよりも、黒原のお陰で30分もロスしてしまいました。急ぎましょう!」
「ああ、そうだな」
速度を上げたGAT隊が入間基地に着いたのは、ちょうど正午過ぎ。入間基地に入ったGAT隊8台の車輌はC3輸送機に案内され、そこには天堂空佐が待っていた。
「遅かったな真壁」
「悪い、少しトラブルがあってな」
「また黒原か、大変だったなぁー」
「まぁな」
「それよりも、真壁室長から作戦変更の指令が入った。詳しい事は輸送機の中で話すから、お前達は車輌を3台、輸送機に乗せてくれ」
「車輌を持っていくのか?」
「ああ、そうだ!」
陸は不思議そうな顔で、天堂の指示に従った。
C3輸送機、別名空飛ぶマッコウクジラ。戦闘能力は無いが、搭載車輌は3台、搭乗人員は100名の新型輸送機だ。中にはブリーフィングルームを兼ね備え、動く司令室とも呼ばれている。
GAT隊50数名を収容した輸送機は直ぐに鹿児島へ向けて飛び立った。そして、搭乗した隊員達は輸送機の座席で休憩を取り、幹部達はブリーフィングルームで作戦会議に入った。
「天堂、ヘリは使わないのか?」
「ああ、事態は予想以上に深刻だ。新田原基地へ寄り道する時間は無い。直接、桜島口まで送り届ける事になった。それに、多数のゴブリンが内陸に侵入したのでヘリは使えない。直ぐに撃ち落とされてもいいのなら構わないが……?」
「わ、分かった。それで、具体的にどこへ下ろすというのだ?」
天堂が画面に桜島周辺の地図を映し出す。
「現在、レールガン2号機のある桜島口には500名の招待客がおり、そこにゴブリンが殺到している。そして、総理はそこから1号機方面へ向かったという事だが、1号機とは先程、音信が途絶えてしまった」
「すると、総理は今どこにいるんだ?」
「もし、生きているとすれば、この山間部へ逃げ込んだと思われる。それで輸送機は山間部と桜島口手前の道路の2カ所でGAT隊を下ろす」
「すると、山間部はパラシュート降下という事か?」
「ああ、その通りだ!」
岸本総理の命と招待客500名の命。GAT隊をどのように振り分けるのがベストなのか?
陸は小隊長達の顔を見て、考えを巡らせていた。
【第85話 GAT隊出動せよ! 完】




