第80話 GAT隊の秘策
創真が異世界へ旅立った頃、朝霞駐屯地にあるGAT隊の作戦会議室には創設初期メンバーが集まっていた。
そこには、バスターソードと試作日本刀を届けに来た東雲も真壁室長の代理として参加しており、その隣には胸に空佐のバッチを付けた新顔の自衛官が座っている。
会議室の上座には、このメンバーを招集した真壁陸佐、その両脇を近藤隊長と土方副隊長が固めており、皆が集まった所で土方が報告する。
「真壁陸佐、会議室の盗聴器は全て撤去しました。また、会議室の外には信頼のおける部下に見張らせております。そろそろ、会議を始めてもよいかと思います」
陸は目で頷き秘密の会議を始めた。
「皆んな、ここに集まってもらったのは、明後日に行われるレールガン2号機の試射に対応する作戦を立てる為だ。しかし、浜井の息がかかった黒原のゴキブリ野郎がGATの内部にスパイを送り込んできている。それで、この施設の至る所に盗聴器が仕掛けられ、我々は常に監視されている。そして、明後日の試射においても、GAT隊には待機命令が出されており、唯一の抜け道である沖田陸尉の隠密作戦も、監視の目が厳しくて今回は使えない状況だ」
ゴキブリ野郎、もとい黒原幕僚総監。
浜井議員が防衛大臣に就任してから総監に抜擢され、今や自衛隊のトップに君臨している。
この黒原という男、以前から真壁室長をライバル視しており、何かに付けて対立していた。そして、自衛隊トップになってからは、その陰湿さに歯止めが掛からず、真壁は窮地に立たされていた。
真壁陸佐は話を続ける。
「レールガン1号機の試射では、3匹のゴブリンが湾を渡ってきたが、ここにいる沖田小隊長のお陰で事なきを得た。だが、2号機の試射には黒原の監視が厳しくて沖田を派遣できない。そこで、どうするかをここで議論したい!」
鬼軍曹、もとい沖田小隊長。
今やGAT隊は50名にまで増えており、初期のメンバー全員が陸尉に昇格していた。そして、各々が隊員6名を預かる小隊長になっていた。
また、剣士部隊は通常の小隊とは異なる為、小隊の呼称が簡略化されて番手呼びとなっていた。
そして、それぞれの小隊には強い順に番号が振られており、その1番隊隊長に抜擢されたのが沖田である。
続いて、2番隊隊長は永倉、3番隊隊長は斎藤、4番隊隊長は藤堂、5番隊隊長は原田、6番隊隊長は井上、7番隊隊長は山南。
但し、6番隊は補給部隊、7番隊は救護部隊であり、実戦は主に1から5番隊が担う事になっている。
真壁陸佐の話は続く。
「まず私の考えだが、もし鹿児島で有事が起きた場合、GAT隊を空輸しようと思っている。その為に、ここへ呼んだのが埼玉航空第5師団の天堂空佐だ。彼は防大の同期であり私の親友だ。信頼のおける彼に輸送計画の全てを任せようと考えている。天堂、説明を頼む」
天堂がスクリーンに日本地図を映し出し、ポインターを使って説明を始めた。
「皆さん初めまして、天堂と申します。私は真壁陸佐の親友であり、信用して頂いて結構です。さて、今回の作戦ですが、空自の演習を名目として、C3輸送機と輸送ヘリ7機を準備しております。これから説明する内容は、明後日の午前11時に有事が発生すると想定した部隊の輸送計画になります。まず、救援要請を受けたGAT隊は、ここ朝霞駐屯地から埼玉の入間基地まで高速機動車で1時間の移動。入間基地から宮崎の新田原基地まで輸送機で1時間の移動。新田原基地から桜島口までヘリで1時間の移動。合計3時間の行程になります。以上で説明を終わりますが、ご質問はありますか?」
すると、東雲が手を挙げた。
「天堂空佐、ヘリの輸送経路について、桜島を横切る事になっておりますが、ゴブリンアーチャーが危険です。経路の変更を具申致します」
「どのくらい距離を取れば良いのでしょうか?」
「はい、初期の島民救出作戦では、桜島海上のヘリが、ゴブリンアーチャーの矢によって次々と撃墜されました。おそらく矢の射程は300メートル程と思われます」
やはり、美人秘書は副官であった。
「分かりました。ヘリの経路は桜島を左回りに迂回する事に致しましょう」
「感謝しますわ。天堂空佐」
美人秘書にお礼を言われた天堂は、まんざらでもない顔をしていた。
輸送計画が固まると、次はゴブリンとの戦い方について話し合われた。
近藤が立ち上がり説明を始める。
「私がGAT中隊隊長の近藤陸佐です」
近藤も陸佐に昇格していた。
「そして、土方陸尉が副隊長を務めます。1番隊は沖田、2番隊は…………」
一通りの紹介が終わると、フォーメーションの説明に入った。
「前衛は1番から3番隊、中衛は4番、5番隊、中隊長の護衛は6番、7番隊とする。次に新装備だが……」
土方が各隊長の前に小さな箱を置いていく。箱を配り終えると、今度は沖田の前に試作日本刀を、山南の前にバスターソードを置いた。
「まずは箱の中を見て欲しい」
小隊長達が箱の中から薬莢を取り出して、不思議そうな顔をする。
「その薬莢は、開発部がゴブリンの魔石から作り出した弾丸で、ゴブリンに効果がある唯一の飛び道具だ。しかし、数が全部で50発。1人に1個だけ装備させ、いざという時に使用する事とする。また、ゴブリンを倒した際にドロップされる魔石は弾丸の材料になるので、可能な限り回収するように!」
「ハッ!」
「そして、もう1つの新装備が、沖田の試作日本刀と山南の所に配属された新人のバスターソードだ。あまり日は残されていないが、最低限の訓練を付けてやって欲しい!」
「ハッ!」
沖田と山南が立ち上がり敬礼をした。
【第80話 GAT隊の秘策 完】




