第72話 モルゴスの大剣
玉鋼の作り方を見せてもらえる事に喜ぶアウレが、嬉しそうに手に持った剣をオレに差し出す。
「創真、これが今の俺に出来る日本刀だ。いや、ここは日本じゃねーからアウレ刀かぁ、ワハハハハハ!」
オレは、鋼の剣以上、風の剣以下のアウレ刀をもらう事になった。
お代は無し。日本刀サンプルのお礼という事だ。
早速、アウレ刀をドワーフ水晶で鑑定してみる。
試作日本刀(アウレ刀) Lv2
攻撃 D
魔法障壁 Lv1
魔石(風) Lv1 速さ10%UP
魔石(土) Lv1 攻撃10%UP
他の剣と比べると、こうだ。
鋼の剣 Lv1
攻撃 E
魔法障壁 Lv1
魔石(火) Lv1 クリティカル10%UP
風の剣 Lv3
攻撃 D
魔法障壁 Lv2
魔石(風) Lv2 速さ20%UP
魔石(土) Lv1 攻撃10%UP
スキル 瞬歩
試作日本刀、別名アウレ刀は鋼の剣と風の剣の中間で、スキルは無く普通剣だった。
「アウレ、この剣は魔法障壁をLv2に出来ないのかい?」
「ああ、刀の耐久力が無くてなぁ、Lv2の魔石が上手く乗らねぇんだ」
なるほどねぇ。レベルの高い魔石を埋め込むには、レベルの高い剣が必要という訳だ。
「ところで、アウレはバスターソードを作れたりするのかなぁ?」
「すまん、俺は繊細な中型剣が得意なんだ。そして、いつの日か大剣を超える中型剣を作るのが俺の夢だ!」
いつの間にか、アウレの夢の話になったので、オレは話しを戻す。
「故郷から、バスターソードの依頼を受けたんだけど、武器屋の値段が高くて困っているんだ」
「武器屋って風の剣を買ったカインの店か?」
あのおやじ、カインっていうんだ。
「ああ、ちなみに防具屋の主人の名前は何ていうんだ?」
「アベルだよ」
カインとアベル、どこかで聞いた様な……?
「それで、バスターソードを安く手に入れる方法はないもんかなぁ?」
「うーん、本来なら中抜きはダメなんだが、俺が買った事にすれば誤魔化せる。よし、創真ついて来い」
オレは言われるがまま、アウレに付いて行く。
「なぁアウレ、どこへ行くんだ?」
「本当はイヤなんだけどな、オレが越えたいと思っている先輩の所さ」
アウレの工房から300メートル離れた所に、アウレ工房より一回り大きな工房があった。
「モルゴス、いるかあー?」
工房の中は鉄を叩く音が室内に響き渡り、全く声が聞こえない。
「モルゴース! 客を連れて来てやったぞー!」
ようやくモルゴスが手を止め、ゴーグルを外してこちらを向いた。
アウレより一回り大きな体格で、立派なあごひげを伸ばしている。歳は……ドワーフは分からん。アウレより少し上なら30代だろう。
「ようアウレ、どうしたあ?」
そして、オレを見るなり手を叩く。
「あんたは、ラゲルタの店にいたにーちゃんじゃねえか? オレに何の用だ?」
「にーちゃんじゃねー、創真だ。お前さんから武器を買いたいんだとよ」
アウレが仲介に入ってくれたので、他人行儀だったモルゴスの顔が若干緩んだ。そして、オレ達はサーバーの側へ招かれ、ギンギンに冷えたエールをジョッキに入れて渡された。
「まずは駆け付け一杯、話しはそれからだ。 カンパーイ!」
「カ、カンパ〜イ……」
ゴクゴクゴク、プハー!
ドワーフの挨拶する時に酒という習慣が未だに分からないが、まずは一杯目のジョッキを飲み干した。待てよ、アウレの所でも飲んだから2杯目かぁ。今日の勉強は完全に諦めよう。
「ひゅー、に〜ちゃん。良い飲みっぷりだなー。俺はモルゴス、よろしくな!」
「創真です、よろしく!」
モルゴスと握手を交わし、早速商談が始まった。
「アウレから、大剣を買うならモルゴスが1番と聞きました。バスターソードを売って下さい」
オレの言葉に対し、最初は嬉しそうにあごひげを触っていたモルゴスだったが、だんだんと険しい顔つきに変わっていく。
「うーん……悪いんだが創真、この界隈で中抜きは禁止されてるんだ。売ってやりたいのは山々だが、カインの所から買ってくれねーか?」
中抜き。一般的に中間マージンを取っている商社や小売りを外す事だが、昨今ではネット販売等で、メーカーからお客への直取引、いわゆるBtoCが増えつつある。
「モルゴス、1本だけだ。それを俺に技術試供品として売ってくれれば、カインに見つかっても誤魔化せる。なぁ頼むよ」
「うーん……分かった、今回だけだぞ」
アウレが説得してくれたお陰で、最初は渋っていたモルゴスだったが、今回はアウレの顔を立てる事にした様だ。
「モルゴス、ありがとう!」
オレが礼を言って頭を下げると、モルゴスがご機嫌な顔でオレ達を呼んだ。
「お前ら、こっちゃ来い」
オレ達がクーラーの効いたモルゴスの事務所に通されると、そこには一撃必殺の大型武器がずらりと並んでいた。そして、モルゴスが得意気にデレ顔で話す。
「創真、こちらが俺の可愛い子ちゃん達だぁー!」
か、可愛い子ちゃん??
オレが耳を疑っていると、モルゴスが右端の剣から説明を始めた。
「これがバトちゃん。可愛いだろう?」
「バドちゃん?」
アウレが耳元で呟く。
「創真、バトルアックスの事だ」
なるぼどね、ハハ。
「これがクレイちゃん。曲線がステキだろう?」
「創真、クレイモアだ」
うん、うん。
「そして、これがバスターソードだ!」
「創真、バスターソードだ」
アウレ、翻訳はいらないよ。
そこには赤、青、黒の3本のバスターソードが並んでおり、赤と青はカインの店で見たので、オレは黒に興味を持った。
モルゴスはオレの興味を察し、黒のバスターソードを持って来る。
「創真、持ってみな」
オレが黒のバスターソードを受け取ると、その重さに驚愕した。両手で抱えないと持ってられない。ちょうど鋼の剣5本分の重さだ。
結局、振る事も出来ないのでドワーフ水晶の鑑定を見る事になり、モルゴスが得意気な顔でバスターソードをかざした。
「創真、性能を見て驚くなよおおー!」
【第72話 モルゴスの大剣 完】




