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武器商人は忙しい!〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記  作者: 孤高のやまびこ
第3章 ゴブリン攻略

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第70話 バスターソードの依頼

 創真が異世界で露天風呂に入っている頃、1人の女性が自衛隊中央病院の病室でテレビを見ていた。


「本日、桜島で行われたレールガンの試射は見事に成功を納めました。その様子をご覧下さい」


 画面にレールガンが映し出され、対岸のゴブリンを次々と撃ち抜いていく。

 それを見る女性の顔は怒りに満ちており、ベッドのフレームを強く握り締めた。


 バキッ、メキメキメキメキーッ!


 丸い鋼管のフレームが手の形に沿って潰される。そして、女性はブツブツと何度も同じ事を言っている。


「ゴブリン殺ーす! ゴブリン殺ーす! ゴブリン殺ーす!!」


 彼女の名前は宮下美紀、通称ミンミン。


 昨日、手術を終えたばかりなのに、普通ではあり得ないほど回復している。しかし、心の闇が彼女を蝕み、今朝から同じ言葉を繰り返しているのだった。


 テレビの映像がスタジオに戻り、コメンテーターが得意気に話す。


「素晴らしいですね! さすが浜井大臣です。これで内閣支持率も大幅に上がるでしょう」


 GAT隊の酷評で30%に落ち込んだ支持率は、レールガンの宣伝により50%まで回復しており、本日の試射成功で来週には70%を越えると言われている。


「このレールガンですがね、岸本総理がアメリカ大統領に何度もお願いをして、ようやく手に入れた物らしいですよ。総理の努力に感服致します」


「そうなると、GAT隊はどうなるんでしょうか?」


「そうですねぇ、もう必要ないんじゃないですかあー?」


 コンコン。


 ノックをして病室に入ってきた軍医の山南がミンミンの側に寄り添う。


「美紀さん。体の具合いはどう?」


「あんなんじゃ倒せない! あんなんじゃ倒せない! あんなんじゃ倒せない!」


 山南はミンミンの言動の変化に気付くと、ベッド横の椅子に座り彼女の肩にそっと手を置く。

 すると、ミンミンが山南に向かい鬼気迫る表情で訴えた。


「あんなんじゃゴブリンを倒せない! 山南さん、私をGAT隊に入れてっ!!」


♠♠♠♠♠


 オレは異世界勉強3泊4日の旅を終え、月曜日の朝7時に我が家へ帰って来た。

 もちろん、本日納品する鋼の剣5本も持ち帰っている。


「母さん、ただいまー」


 部屋から出てきて、ただいまとは奇妙なものだが、さすが母親、全く動じていない。


「お帰り、鹿児島はどうだった?」


「あのね、鹿児島はね……」


 大和家の朝食を食べながら、母に国内一人旅の話をする。飛行機に乗った事。黒豚しゃぶしゃぶを食べた事。桜さんの事。レールガンの事。


 さすがにゴブリン2匹を倒した事は言わなかった。


「ごちそうさま。それじゃ行ってきまーす」


 今日から4日間、期末テストの始まりだ。異世界でしっかり勉強してきたオレに死角は無い。いや、無いはず。いや、無ければいいなぁー。


「おはよう創真君!」


「おはよう香織!」


 先日のキスから、少しぎくしゃくしていた2人の関係も、今では自然に会話が出来るようになっていた。


 これが付き合っているという事なのだろうか? いや待てよ、もしかして、付き合っていると思っているのはオレだけかもしれない。香織はどう思っているんだろう?


「創真君、どうしたのー?」


 オレは意を決して香織にたずねた。


「か、香織、……今日のテストは大丈夫?」


「たぶん大丈夫よ、沢山勉強したもん」


「そうかぁ、ガンバレよ!」


「ありがとう。創真君もガンバってね!」


 ヘタレなオレである。


 教室に入ると雰囲気が一変、クラスメイトは鬼気迫る表情で最後の追い込みをかけていた。


 期末テストは1日3〜4教科。合計14教科で競われる。


 1学年300人で、上位から50人単位でAからFに格付けされ、いつもオレはDランク。なんだかギルドの冒険者ランクみたい。


 ちなみに、香織はAランク。慎吾はAとBを行ったり来たりで2人とも頭が良い。


 今回のオレの目標はCランクに入り、少しでも香織に近付く事。


 オレも机に座り、負けじと最後の追い込みをかける。


 キーンコーンカーンコーン。


 いよいよ期末テストが始まった。


 今日は現国、物理、地理の3教科。異世界を使って勉強してきたオレの全てをぶつける。


 カリカリ、カリカリ、カリカリ……。


 午前中で試験が終わり、オレは慎吾と家路についた。


「創真、現国の問題、解くの早かったな?」


「そうかぁ?」


「ああ、今回はスゲー難しかったよ」


 どうやら理系頭の慎吾には、現国が難しかった様だ。


「慎吾だって、物理は時間前に終わってたじゃないか」


「まあな、物理は誰にも負けん!」


 文系対理系の戦いがここに始まる。


 やがて、いつもの別れ道に来ると、慎吾がお決まりのサヨナラで茶化した。


「創真、香織ちゃんの為にも、必ず追い付いて来いよー!」


「余計なお世話だ、じゃあな!」


 家に着いたオレは、鋼の剣をゴルフバッグに詰め込み、急いで隠れ家へと向かう。


「東雲さん、遅くなってすみません」


 オレは向かいの席に座り、残り5本のロングソードを納品した。


「お疲れ様でした。これで第一の依頼は達成ね。うふふふふ♡」


 なぜか、東雲さんが含み笑いを浮かべながらオレを見つめる。


 今までの経験から、この人が含み笑いをする時は決まって何かある。


 オレは恐る恐る聞いてみた。


「な、何か?」


「うふふ、察しがいいわね。創真君に特別注文を依頼したいのよ」


「な、何でしょう?」


「新しく入る隊員が怪力でね、ロングソードだと直ぐに変形しちゃうの。それでね、もっと丈夫な剣が欲しいのよ。例えば『バスターソード』とかぁ。創真君なら調達できるよね?♡」



【第70話 バスターソードの依頼 完】

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