第63話 再会
チェックインを済ませたオレは、手荷物カウンターで竹刀入れとリュックを預けた。すると、荷物係がX線装置を見て訝しげな顔をする。
「お客様、これは何んでしょうか?」
「剣です」
「け、剣ですか? では、このリュックの中は?」
「た、盾です……」
「た、た、盾ですか?? 失礼ですが、お客様は年齢からすると高校生ですよね? なんでこんな物を持っているんですか?」
「それは、そのぅ……」
オレが焦ってしどろもどろになっていると、数名の係員が集まってきた。
「お客様、すみませんがこちらに来て頂けますか?」
係のリーダーらしき人が、怖い顔でオレを別室へと誘導する。もう一人が荷物を台車に乗せて後について来る。
別室に通されると、イスに座らされ保安係の尋問が始まった。
「お客様、身分証等はお持ちですか?」
オレは恐る恐る東大和高校の学生手帳を差し出す。
「ふぅーん、高校生ねぇ〜。では質問だが、何で高校生の君が剣や盾を持ち歩いているのかな?」
「……………………」
保安係の言葉が、お客様から君呼ばわりに変わった。
今までは、ゴルフバッグで姿を隠してさえおけば、電車だってタクシーだって疑われる事は無かった。
まさか、飛行機に乗る為には手荷物検査があるなんて夢にも思っておらず、この時のオレは気が動転していた。
保安係は、何も話さないオレに追い打ちを掛ける。
「では大和君、財布を見せてもらえますか?」
オレは、現金50万円が入った財布を差し出した。ちなみに、スマホデビューを果たしたばかり。お財布ケータイはもちろん、クレジットカードの類は一切持っておらず、常に現金を持ち歩いているのだ。
そして、サイフの中を見た保安係が驚く。
「何で高校生が、こんな大金を持っているんだあー? いかにも怪しい!」
もう一人の係員がリュックを漁り、机の上に中の物を並べていく。
「大和君、高校生の君が、なんでこんな大金を所持しているのかな?」
「りょ、旅行です」
バンッ! 「ウソを付くなっ!!」
突然、保安係が机を叩き、怖い顔で捲し立てた。
すでに犯人扱いである。まさか、鹿児島のゴブリンを倒しに行きますって言ったら信じてくれるのかよっ?
何も話さないオレに、しびれを切らした保安係が遂に警察を呼んだ。
それから数分後、部屋に入ってきた警察官は何やら口上をたれると、オレの両腕を押さえつけて手錠をはめた。
ガチャリ!
ええっ、オレは逮捕されてしまったのかぁぁぁー!?
その時だった。
「ちょ、ちょっと待って下さい」
リュックを調べていた保安係が声を上げる。そして、彼がリュックのポケットから取り出したのは『銃刀類所持許可証』。
そういえば、最初の取引の説明で「大和様、武器を運んでいる時に職務質問を受けたら、これを見せるのよ!」と東雲さんが言っていた。
警察官が許可証を開くと、オレの顔写真と警視庁印の入った証明文が出てくる。更に、防衛大臣印の証明文を見て警察官が驚愕した。
『記、大和創真に武器調達の特命任務を与える。何人も武器所持に関する妨害行為を禁ず』
警察官の許可証を持つ手がプルプルと震えている。
「こ、こんなの、初めて見ましたよ……」
保安係のリーダーも証明文を見て、同じ様に驚いている。
「な、なんだコレはー!? 保安を20年もやってきましたが、こんな映画のスパイみたいな許可証を始めて見ましたよ」
ようやく、我に返った警察官が急いでオレの手錠を外し、整列して謝罪を述べた。
「大和様、誠に申し訳ございませんでした。我々一同、深くお詫び申し上げます!」
警察官と保安係が深々と頭を下げる。
なんだか、水戸の黄門様になったみたいで気分が良い。「これにて一件落着、カッカッカッ!」と言ってみたいと思ったのも束の間、そこからが大変であった。
「ああっ、もう時間がない。大和様、私について来てください」
オレと保安係2名は裏口を使って搭乗口まで走り、ギリギリで出発に間に合った。
機内に入る際、保安係がキャビンアテンダントと何やら話しているのを待ってから、CAに案内された座席が、一般座席を通り過ぎた所にある一回り広いシートだった。
ここは、チケットの座席番号とは違うんだけど……?
ちなみに、荷物は機内に持ち込んでおり、竹刀入れは足元、盾が入ったリュックは上部ラックにしまった。
席は左の窓側で隣は空席になっており、ゆったりと外の景色を眺める事ができる。
また、CAさんが飛行機初心者のオレに気を遣って、シートベルトの締め方や機器の操作、機内食等について親切丁寧に教えてくれた。
しばらくして機内放送がかかると、飛行機が動き出した。そして、どんどんとスピードを上げて離陸する。
オレは、初めて乗る飛行機に恐れ慄いていたが、滑空して小さくなっていく地上の景色に感動して、いつの間にか不安は消えていた。
しばらく外の景色を眺め、ようやく落ち着いたオレはCAから受け取ったアイスコーヒーを飲み始める。
すると、通路を挟んだ隣の席の若い女性が声をかけてきた。
「もしかして、大和君?」
「えっ……ふ、総子さんですか?」
かなり大人になってしまったが、見覚えのある綺麗な顔立ち。小学生の時にオレと慎吾に剣道を教えてくれた怖くて優しいお姉さん、沖田総子さんだった。
【第63話 再会 完】




