第34話 GAT初陣
GAT隊が現場に到着すると、至る所で銃声が鳴り響き、辺りには多数の警官が血を流して倒れていた。そして、その前方には殺戮を楽しむゴブリンの集団。
近藤が怒気を込めて号令をかける。
「GAT隊突入!!」
「うおおおおおおおおおおおーっ!!」
先陣を切るのは永倉。彼は正面の1匹に力を込めて斬り込んだ。
「おおりゃああああああーっ!」
ブゥゥーンッ!
しかし、刀剣を使った初の実戦で永倉の動きは硬く、ゴブリンは余裕をもってスルリと交わす。
「ギㇶッ!」
永倉が次の太刀を放つも、反撃を受けて防戦一方。他の前衛も同様に剣が当たらず、次第にゴブリンに囲まれていく。
ガキン、ガキン、ガキィィーンッ!
予想外の劣勢に堪りかねた近藤が中衛に指示を出した。
「土方、原田、前衛を加勢しろっ!」
「おぅ!」
戦況は中衛の2人が加わった事で、なんとか膠着状態になったが、この芳しくない戦況を見て近藤がつぶやく。
「一度、下がらせるか?」
「ちぃッ!」
後衛として近藤の脇に控えていた沖田が突然走り出した。
「沖田ぁー、待てぇぇぇーっ!」
近藤が必死に呼び止めるが沖田は止まらない。そして、あっという間に永倉の横をすり抜けると、左腕一本で三連打の突きを放った。
バスッ! バスッ! バスーッ!!
永倉を取り囲む3匹のゴブリンの喉を、沖田の剣が次々と貫いていく。間をおかずして、倒れた3匹のスペースに入った沖田は、更に2匹を斬り伏せた。
ズババァァァァァーッ!
沖田に助けられた永倉が叫ぶ。
「ふ、総子さんに続けぇぇぇーっ!!」
「おおおおー!!」
防戦一方だった4人は総子の介入で息を吹き返し、彼女の左右を扇状に固めると、目の前のゴブリンを次々と倒していく。
ザシュッ! バシュッ! ズバァァーッ!
「ガギャァ! ギギャァ! グギャァァ!」
そして、最後に残ったリーダー格も、総子の突きで呆気なく倒してしまった。
バスーッ!!
「ゴギャァァァァァーッ!」
全ての敵を殲滅した総子は艷容な笑みを浮かべ、剣についた緑の血を払って鞘に収めた。
その様子を、遠くから見ていた陸は総子の凄さに唸る。
「うーん、これ程とは……!」
暴挙を振るっていた16匹のゴブリンを殲滅したGAT隊は、半数を周囲の警戒に割き、残りの半数で人質がいる管理小屋を取り囲んだ。そして、窓から中の様子を窺った近藤が突入の指示を出した。
「突入!」
「行けっ、行けっ、行けーっ!」
最初に突入したのは原田。続いて永倉が突入し、剣を構えながら周囲を確認する。
「クリアー!」
安全が確認された小屋の中に入った近藤と山南が目にしたものは、裸で床に横たわる4人の女性。
しかし、その内の2人は既に息をしていなかった。また、残る生存者の1人は放心状態で命に別状はなさそうだが、もう1人はお腹が膨れ息が絶え絶えになっていた。
軍医の山南が急いで脈を測り、女性のお腹を触診する。すると、お腹の中の何かがムニムニと動き出した。
「あっ、あああっ、ぎゃああああーっ!」
山南が躊躇している間に、お腹の何かは更に激しく動き回り、女性の叫びがもう一段高まる。
「ぎゃあああー、ぎゃあああああーっ!!」
遂には頭や手の形が腹の皮膚に写し出され、断末魔の叫びと共に女性は沈黙。その後、股の間から大量の血と共にゴブリンの幼体が顔を出した。
「ギピー、ギピー、ギピー!」
山南が青ざめた顔で近藤を見る。
「隊長……どうしましょうか?」
「ちょ、ちょっと待て!」
近藤は陸に無線を繋いだ。
「陸佐、救助した女性のお腹からゴブリンの子供が生まれてきました。どう致しましょうか?」
「なっ、何ぃぃー!? と、とりあえず捕獲だ。こちらで檻を用意する」
傍で無線を聞いていた山南が、スキン手袋をはめてゴブリンの幼体を女性の股からゆっくり取り出すと、側で見ている原田に手渡した。
「原田君、ちょっと持ってなさい!」
「オ、オレぇぇー!?」
血まみれのウネウネ動く幼体を持って嫌な顔をする原田をよそに、山南は手袋を脱ぎ捨て再び脈を取るが女性は既に息絶えていた。
「隊長、亡くなっています」
「そうか……残念だ」
近藤は再び無線を繋ぎ、状況を報告する。
「陸佐、小屋の確認が完了しました。生存者1名、死亡4名。ゴブリン幼体1匹です。救急隊をお願いします」
しばらくすると、救急隊が担架を持って現れ、拉致被害者3名とミンミン、及びマネージャーの亡骸を運び出していった。
その後、小屋の確認を終えた近藤が外へ出ると、周辺を警戒していた斎藤から報告を受ける。
「隊長、ゴブリンが消えた後に黄色の宝石が落ちていました。どうしましょうか?」
近藤は不思議な輝きを放つ黄色の宝石と、ロングソードの柄の宝石を見比べ直感的に思う。
「うーん、何かの手掛かりになるかもしれん。檻を待っている間に全員で探せるだけ探せ!」
さっそく、GAT隊の面々は宝石の探索を始めた。しかし、血みどろのゴブリンの幼体を手に持つ原田だけは、嫌そうな顔で不満を漏らす。
「うぇぇー隊長、いつまでコイツを持ってなきゃいけないんですかぁー?」
「えーい、もう暫くだ。我慢しろっ!」
小屋から真壁陸佐のいる駐車場までの林の小路を近藤と原田が歩く。すると、林の至る所にゴブリンに殺された警察官の無残な死体が転がっていた。
「た、隊長、ゴブリンって、いったい何なんスかねー?」
「分からん。ただ一つ言える事は、人類の敵って事だ!」
やがて、2人が真壁陸佐の元に辿り着くと、陸佐の足元にはペット用の檻が用意されており、急いで幼体を檻に入れた原田は、嬉しそうに近くのトイレへ駆けて行った。
原田を見送った後、近藤は陸に向き直り敬礼をする。
「真壁陸佐、無事、任務が完了しました!」
「近藤、ご苦労だったな!」
「はい、一時はヒャッとしましたが、総子さんのお陰で助かりました」
「ああ、彼女は想像以上に凄いな!」
「はい、想像以上です!」
予想を上回るGAT隊の戦果に、2人は目を合わせると思わず笑いが込み上げてきた。
「ハハ、ハハハハ、ハハハハハハ、ワハハハハハハハハハ……!!」
その後、全員を呼び戻したGAT隊は速やかに多摩湖から撤収していった。
・・・・・
翌朝、どのチャンネルもゴブリンの話題で大騒ぎとなっていた。
「緊急速報です! 昨夜、多摩湖に16匹のゴブリンが出没しました。ゴブリンは民間人5人を拉致し、小屋に立て籠もっていましたが、自衛隊の新設特殊部隊GATが突入し、全てのゴブリンを殲滅しました。しかし、拉致者の4名は死亡。救助されたのは、たったの1名です。また、警官隊の被害も甚大で、死者30名、負傷者20名との事です。GAT隊がもう少し早く駆けつけていれば、被害は最小限に抑えられたかもしれません!」
GAT宿舎の食堂で、朝食を取りながらテレビを見ていた近藤が憤る。
「おいおい! これじゃGAT隊が悪者みたいじゃないかぁー!?」
隣のテーブルでコーヒーを飲んでいる山南も苦言を呈する。
「テレビ局の悪意を感じますわね!」
近藤と一緒に朝食を取っていた真壁陸佐も、やれやれといった感じで話す。
「防衛費がここ数年で2倍に膨れ上がっているからな。金食い虫の自衛隊が気に食わないんだろうさ」
「ですが陸佐、それはアメリカから新型兵器を買う予算であって我々には回ってきてませんよ!」
「だけど、国民には分からないからなぁー」
「自分は悔しいです。うううっ!!」
朝っぱらから熱血の近藤であった。
「ところで山南、今日は休日のところ悪いんだが、中央病院を見てきてくれないか?」
「例のユーチューバーの方ですわね?」
「ああ、それで彼女が落ち着くまでは側に付いててやって欲しいんだ。先方の病院には話を付けてある。よろしく頼む」
「了解しました!」
山南は敬礼をして席を外した。
「さてと、俺達は研究本部だ!」
陸と近藤も食堂を後にした。
【第34話 GAT初陣 完】




