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武器商人は忙しい!?〜貧乏高校生の成り上がり英雄譚  作者: 孤高のやまびこ
第1章 ゴブリンの恐怖

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第30話 剣術指南役 沖田総子

 ゴブリン討伐隊、通称GAT隊が結成され、現場指揮官の近藤隊長の元に8人のメンバーが集った。


 メンバー全員が試衛館の門下生であり、近藤の勧誘に応じて自衛隊員の中から招集されたのだが、1人だけは民間から剣術指南役として招待されていた。


 彼女は沖田総子。高校教師にして試衛館の師範代。剣道高校大学女子チャンピオンの経歴を持つ剣の達人だ。


 ただ一つ性格に難があり、普段はおしとやかだが、剣を持つと人格が体育会系女子へと変わり、ここに集まったメンバーは少なからず彼女の洗礼を受けていた。


 また、GAT隊には朝霞駐屯地の一角、今いる作戦会議室の建屋、隣の室内訓練場及び第3格納庫、そして200名を収容できる宿舎が割り当てられていた。


 ちなみに、格納庫には10人乗りの高速機動車8台と輸送車両2台が配備され、宿舎には24時間食事ができる大食堂と男女別の大浴場が備わっている。


 近藤が一通りの説明を終えると、数名の事務方が壇上の隅に整列した。


「説明は以上だ。この後は事務方が貴官らを案内する。昼食後はロッカールームにある新装備に着替えて、一四〇〇に室内訓練場に集合だ。解散!」


 各隊員が事務方について会議室から出ていくのを見て、陸が近藤を問い詰める。


「近藤、なんで総子さんがここにいるんだ?」


「先輩は民間人の勧誘も許可されました。私は上官の命令に従っただけであります!」


 近藤がニヤり顔で答えた。


「……もういい。それで真面目な話、なんで総子さんを招待したんだ?」


「総子さんは、この部隊に必要な人材だと思ったからであります。この部隊はいずれ200人に達しますが、皆が剣術に優れているとは限りません。部隊の質を維持する為には、優れた実践剣の指導者が必要なのであります」


「しかし、こんな危険な仕事を彼女がよく承諾したなぁ?」


 近藤は視線を外し、遠くを見て答える。


「総子さんは、ちょっと変わってまして……剣が好きというか、実践がしたいというか……まあ見てれば分かりますよ!」


「まったく……」


「それと総子さんには、SATの装備の改良に力を貸して頂きました」


 日本警察特殊部隊SATの装備。自衛隊に比べると軽装で剣士部隊のGATに適しているとして、SATの装備をモデルにGATの装備が開発されていた。


「了解した。それで今日集まった8人は使い物になるのか?」


「はい、その点はご心配なく。試衛館の中でも選りすぐりの8人を集めました。いずれ彼らには小隊を任せようと思っております」


「そ、そうか……とにかく、まずは今の8人を小隊として機能する様にしてくれ」


「ハッ!」


 陸はロングソードを近藤に渡して会議室を後にした。


♠♠♠♠♠


 異世界長期滞在5日目。


 チュン、チュン……。


 オレは宿屋のベッドで気持ちの良い朝を迎えていた。


「ようやく家に帰れる。母さんは元気にしてるかなぁー?」


「創真よ、母親は元気だと思うぞ。なぜなら日本では半日しか経っとらんでなぁー。カッカッカッ!」


「分かってるよ。気持ちの問題だよ!」


 オレは宿の朝食を食べると、チェックアウトをして武器屋へ向かった。


 店に入ると、武器屋の主人が愛想笑いを浮かべて擦り寄ってくる。


「いらっしゃーい!」


「ご主人、今日は鋼の剣を10本買いに来たんだけど、銀貨が2枚足りないんだ。何とかならないかなぁー?」


「えーえー良いですとも。大和様はお得意様ですから多少の足が出たとしても問題ございません。但し、お金が届いたら期待してますぞー」


 しめしめ、計画通りぃぃー!


「ご主人、ありがとう」


 オレは主人に金貨4枚と銀貨8枚を渡して剣を抱えると、重大な問題に気付いた。


 剣を10本も持てないよぉぉー!


 武器屋の主人が笑いをこらえながら、オレに麻袋を差し出す。


「よかったら、これを差し上げますよ。ククッ」


 このおやじ、笑ってやがる。先日の仕返しかあー?


 オレは麻袋を受取り鋼の剣を10本入れて持ち上げようとするが、重過ぎて持ち上がらない。


 1本抜き、2本抜くと、なんとか持ち上げる事ができた。


 またもや、武器屋の主人が笑いをこらえながら、オレに銀貨8枚を差し戻す。


「大和さん、今日は8本にしときなさいよ。クククッ」


 顔を真っ赤にしたオレは、ぶっきらぼうに銀貨8枚を掴み取り、そそくさと店を出た。


「ありがとうございましたぁ。またのお越しをー!」


 したり顔で笑う店主を見て、「次は値切ってやるからなー!」と捨てゼリフを吐きながら転移の丘へ向かって歩いていると、今度はタケじいが現れた。


「創真よ、今回はしてやられたのぅ。クククッ」


「タケじい、お前もかっ!」


 北門を出ると丘までそう遠くは無い。しかし、登り坂で剣8本の麻袋はとにかく重い。


 5歩進んでは休憩をとり、10歩進んでは休憩をとり、ようやく丘の上に辿り着いた。


「ハァハァハァ、やっと着いたどー!」


 オレはその場に倒れ込み、しばらく休んでから転移を唱えて久しぶりの日本へ帰還した。


 ガタンッ!


 日本、いや自分の部屋に帰還すると土曜日の正午。母は仕事で家には誰もいない。


 早速オレは東雲さんに連絡を取り、1時間後に喫茶『隠れ家』で会う事になった。


 鋼の剣、いや大和商店カタログではロングソード8本をゴルフバッグに詰め込むと、オレは商売道具のバッグを片手に隠れ家へ向かった。そして、少し早めに到着すると、既に東雲さんが奥の席で待っていた。


「ご無沙汰してます」


「大和様、なんだかお疲れの様ですね?」


「まぁ色々ありまして、ハハハ……」


 オレが席に座ると、さっそく秘密の取引きが始まった。


「例の物を確認してもよろしいでしょうか?」


「はい」


 オレがテーブルの上に8本のロングソードを並べると、東雲さんは鞘から剣を抜いて1本1本確認していく。


 やがて、全ての確認を終えた東雲さんがにっこり笑った。


「見事なロングソードです。確かに8本受け取りました」


 その後、彼女が電話で指示を出すと、外からスーツ姿の男が2人入ってきて、テーブルの上の剣を布に包み外へ運び出していった。


 彼らを警戒しているオレに、東雲さんが説明を加える。

 

「大和様、彼らは防衛省の職員ですので心配には及びません。それで請求書は書いてこられましたか?」


 しまったあー、重い剣を運ぶのに気を取られて伝票書くのを忘れてたぁー!


「す、すみません。忘れてました」


「ふぅー」


 東雲さんはため息をつきながら、もう一度丁寧に伝票の書き方を教えてくれた。


「はい確かに、8本✕50万円=400万円、振込みは月曜日になります」


「あ、ありがとうございます!」


 ようやく取引きが終わり、ゆっくりアイスコーヒーを飲んでいると、東雲さんが焦り顔で聞いてくる。


「それで、次の納品はいつ頃になりますか?」


「そんなに急いでいるんですか?」


「はい、桜島のゴブリンの数が予想以上に増えています。猶予期間を2ヶ月とみていましたが1ヶ月に縮まりそうです。特殊部隊の訓練も必要です。大和様、どうか一刻も早く武器を調達して下さい!」


 彼女の鬼気迫る話に、状況が悪化している事を知ったオレは、400万円ゲットで浮かれていた気持ちを引き締めた。


「が、がんばります!」


 その後、東雲さんから隠れ家で昼食を取っていくように言われ、オレは防衛省のツケで有り難くエビフライ定食を頂いたのだった。


【第30話 剣術指南役 沖田総子 完】

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