表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/142

生き恥

 あっという間にソウルに到着した。ヒョンさんとチェさんは、また帽子とマスクを付けて飛行機を降りた。息子はチェさんにピタリと張り付いて周りをキョロキョロしながら歩いていた。まるでSP気取りだ!ロビーに出た所でヒョンさんのマネージャーさんが待っていた。『おかえりなさい!この後お二人にちょっと打合せをしたいんですが、お時間少し良いですか?』と二人に聞いた。『ねえ!俺のマネージャーは?』とチェさんが聞くと『実は体調崩してひとまず僕がお二人につく事になりました。その事め含めてお話しがあって』と伝えた。ヒョンさんは私に『ちょっと打合せしたいみたいなんだけど、ともと待っててくれる?』と聞いた。私は『もちろん!空港のお店見たかったから、ともと見てるね。終わったら連絡してね』と笑顔で言った。『ありがとう。ごめんね』と彼は私に告げると3人は歩いて行ってしまった。息子が『え?俺達は行かないの?』と不思議そうな顔をしたので経緯を説明して、私達はお土産を見に歩いた。国内線のりばなのでたいした物もなかった。特に買いたい物もない私達はとりあえずカフェに入った。余談だがソウルだけなのかわからないが、やたらとカフェが多い。日本のコンビニ並みだった。話は戻るが空港内のカフェだけあって日本語が通じるのはありがたい。息子の勉強の為と思い注文をお願いしたのだが、日本語で対応してもらっていたので意味がなかった。席に座り一息つくと息子が『ねぇ母。俺マネージャーの仕事に興味あるんだけど』と突然言ってきた。私は驚いて『いきなりどうした?』と尋ねた。息子は『ただ何となくヒョンさんのマネージャーさんを見てて思った』と言った。何にでも興味を持つ事は良い事だと思って、出来る限り子供達のやりたいようにやらせては来たが、さすがにマネージャーさんの仕事はアドバイスしたいがわからなかった。私は『じゃあ、とりあえずヒョンさんのマネージャーさんやヒョンさんにどんな仕事をするかとか、資格は必要なのかとか今のうちに聞いてみたら?明日日本へ帰るから明日までしか聞けないよ』と息子に伝えた。息子は少し考えてから『ん〜。やっぱりちょっと考えてみる。日本に帰ったら気が変わるかもしれないしね!』と笑顔で言った。私は“俳優になる!って言わないだけ良かったわ!”と内心思っていた。すると息子はおもむろに携帯を出して私に一枚の写真を見せた。それはチェさんと部屋で撮った写真だった。『良く撮れてるね』と言うと息子が『良く見て!何でチェさんの肌こんなに綺麗なの?俺よりずっと背が高いのにこんなに顔が小さいのは何で?チェさんに聞いたけど何もしてないって!絶対嘘だよね!小さい時からキムチ食べてればこんなに肌が綺麗になるの?』とやや興奮ぎみに言った。何を言うのかと思えば…と思いながら『彼は俳優さん!わかる?皆に夢を与える為に日々努力してるに決まってるじゃん!肌だって釣りの時覚えてる?日焼けしないように完全防備してたでしょ?そうした日々の積み重ねが彼を作ってるの!別にキムチ毎日食べてるから肌が綺麗な理由じゃないし!母だって小さい時からぬか漬け食べてるけどこんなだよ!』と言った。彼は納得したように頷いた。そして息子が『今日から肌ケア始めるわ!』と彼に美の神が降りてきたように言った。私は笑いながら頷いた。そんな他愛もない会話をしているとヒョンさんから連絡が入って、ロビーで待ち合わせする事になった。私達は残っていた飲み物を飲み干して空港ロビーに向かった。彼等を探すのは容易だった。普通にただの白いTシャツを着ていてもさまになってしまい、まるでTシャツのCMでも撮影してるように見える。”あれじゃあ、バレるよね!“とちょっと遠くから見ながら思った。近くまで行こうとして私達は足を止めた。彼等のもとに近づいて来た人がいて、一眼レフのカメラを持っていた。私の推測からすると記者だ。私は息子を制して少し遠くから彼等を見ていた。するとヒョンさんが私に気付き手を上げようとしたので、私は大きく首を振り胸元でバツを作ってわざとそっぽを向いた。息子が不思議そうな顔をしていたので、事情を説明した。息子も納得したようで私達は彼等に背を向け見ないようにしていた。すると誰かが私の肩をトントンと叩いたので振り返るとヒョンさんとチェさんと例の記者らしき人が立っていた。私はビックリして思わず“人違いです!”と言うと息子の腕を掴みその場から離れようと動いた。そんな私の腕を今度はヒョンさんが掴んだ。私は彼に、背を向けたまま”何やってんのよ〜!バレちゃうよ“と手を振り払おうとしたが今度はチェさんが声をかけた。『미키씨, 무슨 일 있어요?(みきさん、どうしたの?)』と尋ねた。私はどうしようか悩んだが振り返り堂々と挨拶をした『안녕하세요(こんにちは)』。するとヒョンさんが『彼は事務所のカメラマン。キム君』と笑顔で言った。“え〜!記者じゃないの〜!”と拍子抜けしてしまった。息子が『なんだ~!記者さんじゃないじゃん!意味わかんね』と呆れ顔で私に言った。『あ~。記者かと思って知らない人になってたんだ!』と笑ってチェさんにも説明した。二人は大笑いしながらキム君にも話した。私は内心”記者じゃなくて良かったけど、何で空港でそんな大きいカメラ首からぶら下げてんのよ!この人は!“と思っていた。本当に紛らわしいったらありゃしない。でも理由は単純で事務所のSNSにあげる画像を撮影していて、たまたまヒョンさん達を見かけて駆け寄って来たらしかった。私と息子は改めて自己紹介をして彼は現場に戻って行った。あー!なんて失態をさらしてしまったんだと深く反省してると、その傷をえぐるように息子が『母さ、カメラ持ってる人みんな記者に見えるんじゃないの?それに日本語で“人違いです!”はないわ!アホすぎて笑える』と言った。それを更に翻訳機で皆も分かるように言ったものだから3人で吹き出して笑っていた。私は心の中で”笑えねーよ!“とツッコんだが確かにアホすぎて言葉が出なかった。そんな落ち込んでいる私の腕を組みヒョンさんが『괜찮아! 명연기였어!가자!(大丈夫!名演技だったよ!行こう)』と笑顔で言って私達は出口に向かった。

 それにしても、これで3人目のキムさん。韓国にはどれだけキムさんいるんだよ〜と彼に腕を引かれながら考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ