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自信と覚悟、そして…

 突然の事で私はただじっと左手の薬指を見つめていた。もしかしたらいつかはと心の何処かで考えてはいたけれど、果たしてそれを自分が望んでいた事かと思うと良くわからなかった。確かに自分にはあり得ないぐらいの奇跡のような出来事で、断る余地は無い事なのはわかっていた。でも、それは私が20歳ぐらい若ければの話しだ。ましてや彼はまだまだ若くてこれからたくさんの出会いがある。こんなバツイチのアラフィフのおばちゃんにプロポーズをするなんてと、何とも言えない辛さを感じた。”じゃあ、あなたはどうして彼と一緒にいるの?“とまた別の私が問いかけた。“好きだから。大好きだから!心から愛おしく思うから!”と心の中で呟いた瞬間に涙がどっと溢れ出し私は手で顔を覆った。彼がそんな私の背中をさすりながらゆっくりと話しだした。『みきがわざと結婚の話しを出さなかったのは気付いてたよ。それが、なぜなのかも多分僕はわかってる。だから悩んでた。僕の為にでしょ?だからずっと真剣に考えてたんだ。でも聞いて?みきがもし僕の事を思ってくれるなら”Yes“って言ってほしい。僕に引け目を感じているなら、そんな事考えないでほしい。』と。私は涙が止めどなく流れた。胸が苦しくなるほど彼を愛しているのを感じた。そして言った。『ごめんなさい。正直に話すと、私は今でもあなたと一緒にいて良いのか悩んでる。あなたはまだまだ若くて私以外にもこの先たくさんの人に出会えると思う。そして、あなたに似たかわいい子供を持つ事も出来る。私はもうあなたに似た可愛い赤ちゃんも産む事も出来ないし、あなたの家族にも抱っこしてもらう事も出来ない。それに、あなたより先におばあさんになってあなたを支える事すら出来なくなる。そしてあなたには、あなたを大好きで応援してくれてるファンの人達がいて私なんかと一緒にいたらきっとがっかりする。あなたは優しいからその事で胸を痛めると思う。そんな事を考えると胸が苦しくて息も出来なくなる。でも、あなたをどんどん好きになってしまってそんな気持ちをごまかしてきた。だからあなたの事を忘れる為に一度は離れようと努力したけどダメだった。ごめんな…』と言い終わる前に彼は私を抱きしめた。私の肩越しで彼も涙が溢れていた。私達はしばらく黙ったまま泣いていた。彼は私を抱きしめたまま『僕は君との子供なんか望んでないし、君がおばあさんになったってその時は僕が支えるつもりだよ。君の最後まで僕は君の隣にいたいんだ。世界中の人が何て言おうが僕の決心は変わらないし、これから一生僕の隣にいてほしいんだ。こんなにも一人の人を愛おしく心から愛せたのは君だけなんだ。だからと言ってこの気持ちは一時的な事ではないし、僕を信じてほしいんだ。』と優しく語りかけた。私は“ありがとう”の言葉を伝えるのが精一杯だった。まるで一生分の涙が出ているかのように涙が止まらなかった。彼は私の背中を黙ってさすってくれた。彼がこんなにも私を思い私の全てを受け入れる決心をしてくれたのに、私は現実から目を背け彼との将来からも目を背けてきた事にいたたまれない気持ちだったし、自分の行動に腹立たしささえ覚えた。すると私の心がたずねた”何があっても彼を心から愛し続ける覚悟はある?“と。そして別の心が“覚悟じゃなくて自信はある!”と叫んだ。いつかのキムさんの言葉が頭をよぎった。”自分の気持ちに正直に生きましょう“と。私は彼に『こんな私で本当に後悔しない?』と抱きしめられたまま聞いた。彼は私を抱きしめたまま『みきだから後悔しないよ』と優しくて囁いた。私はその言葉にまた涙が溢れてきて彼をギュッと抱きしめた。そして決意して『ありがとう。よろしくお願いします』と伝えた。彼は私を強く抱きしめ返して『もう一度言わせて。僕と結婚して下さい』と。私はゆっくり『はい』と答えた。彼は私にそっとキスをして私の涙を優しく拭いながら『泣きすぎ』と笑った。この時の彼の目は強い覚悟と自信と優しさに溢れていた。その目を見て私は何があっても二人で乗り越えて行けるとなぜか根拠のない確信を感じた。そして、今迄心の奥底にあった見て見ぬふりをしていた暗い影のようなものに小さな光が差し込んだと同時に、二人のジグソーパズルの最後の1ピースが埋まったような気がした。この日は私達にとっての最強の記念日となった。

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