有名人は大変だ!
ロビーに着いた時に驚いた。この嵐の中でまだ何人もの方々が彼等を待っていた。いわゆる出待ちと言われるものだった。私はこのような光景を見るのは初めてだった。ヒョンさんとチェさんはマネージャーさんと何やら話していた。私は隣にいた息子を見て驚いた。その人達に向かって手を振っていた。“この子、おかしくなった?”と、慌てて息子の手を下げた。『あんた何やってんの?君の事待ってんじゃないから!』と言うと『だってこっちに手振ってんだもん。申し訳ないじゃん!』とまた手を振ろうとしたので制止した。”どこまで能天気なんだ!誰似?“と疑問になった。するとヒョンさんが私に『ちょっと行ってくるから、ともとここで待ってて』と告げると3人は出口に向かった。『俺も行ったほうが良いかな?』とアホな質問をしたので私は彼の腕を掴んで近くのソファに座らせた。彼等は風の強い中出口の外で囲み取材のようになっていた。自動扉が開くたびに“キャー”と声が聞こえてきた。私は”スターは大変だな!“となぜか他人事のように眺めていた。しばらくして先程乗ってきたTAXIが来た。マネージャーさんが私達を手招きして呼んだので小走りに出口へ向かった。出口を出るとあまりの風に一瞬息が出来なかった。マネージャーさんが私達を先にTAXIに乗せてくれてから彼等をサポートしながらTAXIに全員乗り込んだ。彼等の髪の毛は皆大変な事になっていた。チェさんが運転手の方に行き先を告げてすぐにTAXIはその場から離れた。『大丈夫?』と私が言うと二人共頷いた。するとチェさんが『兄さんが言ってた人いたよね?』と尋ねた。彼は頷くと黙っていた。チェさんが息子に翻訳機を借りて話しだした。『実は兄さんね、あるファンの女性に狙われてるんだよ!さっきその人がいてずっと兄さんに抱きついてきてヤバかったんだよ!』と言って『やめろよ!大丈夫だから!』とヒョンさんがチェさんを止めた。いわゆるストーカーってやつ?と私は思って聞いた。『え〜!大丈夫?ずっとつけられるとか?』と聞いた。チェさんは『それもある。この前なんか兄さん宛に婚姻届が送られて来たんだよ!事務所が今どうするか検討中みたい。警察に届けるかどうか。』と言ったので驚いた。でも、まだ彼女は毎日ついてきたりはしていないようだった。私は『ヒョンさん大変な思いしてたんだね!ごめんね!気付いてあげられなくて』とヒョンさんに言った。彼は『ごめんね!心配かけたくなかった』と申し訳なさそうに言った。するとマネージャーさんが『昨日、事務所は警察に届ける事に決定したって連絡ありました。』と話してくれた。チェさんが『兄さん良かったね。放っておいたら今度はみきさんに何かしかねないからね!』と言った。私は『良かったね!もう安心だ。』とヒョンさんを見ると、ちょっと笑顔が戻っていた。すぐにショッピングモールに着いた。私は『マネージャーさんはこの後はお仕事ですか?』と聞くと、実は今日の飛行機でソウルに戻る予定が全て欠航になってしまったらしかった。私は『これから一緒にご飯たべませんか?買い物も一緒に!』と言ってヒョンさんを見ると笑顔で頷いた。『じゃあ決まりで!腹減った〜!』と息子が言って私達はTAXIを降りた。かなり大きいショッピングモールでいろいろな店が並んでいた。私達はまずは腹ごしらえとイタリアンに入った。マネージャーさんが店員の方と話して奥の個室に通してくれた。まずチェさんがシャンパンを1本とジュースを頼んでくれて乾杯をした。昼間からシャンパンなんて贅沢だな!と思いつつも一気に飲み干した。すぐに店員さんがシャンパンを足してくれた。オーダーはチェさんとヒョンさんが適当にオーダーしてくれた。するとヒョンさんが私に『先に食べてて。ちょっと用事をすませてくるね』と席を外した。チェさんが私に『どこ行ったの?』と尋ねたので『ちょっと用事をすませてくるらしいよ。先に食べてて良いって』と伝えた。すぐに食事が運ばれてきたので私達は夢中で食べた。なかなか帰って来ない彼の為に少し食べ物を取り分けておいた。ワインも一本追加して結構な量の食べ物だったがかなりなくなっていた。取り分けて正解!と思っていると彼が戻って来た。『どこ行ってたの?』と息子が聞くと『ちょっと用事があって。でも終わったから大丈夫!お腹すいた〜!』とワインをグッと飲んで食べ始めた。するとチェさんが『とも、俺が服のコーディネートしてあげる!』と息子に言った。息子は『え〜。俺金ないよ!』と答えたのでチェさんは笑って『バカだな!プレゼントしてあげるに決まってんだろ!』と言うと息子はガッツポーズをして『カムサハムニダ』とチェさんと握手をした。私もチェさんに『정말 죄송합니다!(本当にすいません)』と頭を下げた。息子はルンルンで食事をしているのが誰しもわかるほどの単純さに皆が笑った。するとヒョンさんが『みきは何か欲しいものないの?』と聞いてきた。私は少し考えたが特に思い浮かばなかったので『特に無いな!あっ!甘栗!』と言ったので息子以外の3人“は?”と言うような顔をした。甘栗だけ日本語で言ったので皆わからないかと思い私は携帯で写真を検索して見せた。だけどまだ皆”は?“の顔だったので逆に尋ねた。『何か変?』と。するとチェさんが『何で無いの?あるでしょ!カバンとか靴とか宝石とか!ましてや焼き栗なんて!正直に言って良いんだよ!兄さん買ってくれるから!』と呆れ顔で言った。『別に気を使ってる訳じゃなくて、別にほしい物がないだけよ!』と笑顔で言った。そして息子も『母、昔から食欲あるけど物欲ないから!』と言った。私は“何もいらない事がそんなに変か?”と頭からハテナマークが3つぐらい出ていた。チェさんは『普通は彼にいろいろおねだりするもんじゃない?女性は?』と言ったので私が首を横に振って言った。『世の中そんな女性ばかりじゃないのよ!ただ、そばに居られて彼が笑顔でいてくれるのが一番のご褒美って思う女性もいるって事。おねだりばっかりする女性は私が男だったら好きじゃない!』と彼を論破した。マネージャーさんとチェさんは”なるほど!“と言う顔で私を見ていた。横を見るとヒョンさんは優しく笑っていてそして尋ねた。『二人共おねだり女性しか知らなかったの?』と聞いた。二人は同時に頷いた。『実は僕も会ったことなかったけどね』とヒョンさんは舌を出した。私は何て可哀想な男性達なんだ!と思いながら『でも甘栗食べたい!』と言った。息子がすぐに『ほらね!食欲は誰にも負けないから!気をつけてね』と言ったので皆で吹き出して笑った。私達は食事を終えると買い物をする為にいろいろ店を回った。チェさんは息子の頭から足まで全てコーディネートしてくれた。金額もかなりお高い物もあったので申し訳ない気持ちだった。マネージャーさんも自分の服を買っていた。私とヒョンさんは私が欲しがっていた甘栗を買った。屋台みたいな感じの所で皮を剥いてある、見た目は日本で言う“甘栗むいちゃいました”的な感じだった。味は甘味料の甘さは無く本来の栗の甘さだけという感じで、それもまた美味しかった。私とヒョンさんはベンチに座り甘栗を食べていた。笑えるのが通る人通る人が彼を二度見していた。”まさかヒョンさんがこんな所でおばちゃんと栗食べてるはずはないよな?えっ?ヒョンさんじゃん!“みたいな感じだ。ヒョンさんはそんな事全然気にせずに、私と栗を食べながらおしゃべりをしていた。『たのしいね!』と私に微笑んできたり、『夜は何を食べようか』とか本当に普通の夫婦やカップルが話しているように。私はさっきのストーカーの話しがあったので、周りをかなり気にしていたのが彼にわかったようで『気になる?もしかして怖い?』と聞いてきた。私は『I'm not scared, but is it okay for you to eat chestnuts with me so proudly? That's what I think.(怖くはないけど、こんなに堂々と私と栗食べてて大丈夫かな?とは思ってる)』と答えた。彼は笑って『It's totally fine! I want to interact with Miki normally without worrying about the people around me(全然大丈夫だよ!僕はみきと周りを気にせずに普通に接したいんだ。) 』と言った。私は笑顔で“OK!”と言って栗を食べ始めた。そんな私を見て彼は『Even so, you eat well!I love women who eat a lot!(それにしても、良く食べるね!よく食べる女性が大好き!)』と笑顔で言った。私はそれを聞いて手に持っていた栗をそっと袋に戻した。




