私の初恋
夕食も片付けも終わりお母様は先に休まれ、私達4人はリビングで二次会を始めていた。息子とジオンさんは本当に姉弟のような関係になっているようで、2人でツッコミツッコまれしなから、韓国語レッスンが始まっていた。そんな2人を見ているとヒョンさんが私に聞いた。『ねえ?みきの昔を教えて?』と笑顔で言った。『え?私の過去?ん〜!逆に何が知りたい?』と私が聞いた。彼はしばらく考えてから『じゃあ、みきの初恋の人』と言った。”ん〜。初恋か!“とちょっと考えてから私は話し始めた。
私の初恋は?と聞かれるとちょっと悩む時がある。保育園の時にも好きだった男の子はいたけれど『◯◯君大好き〜!』と皆に言えるレベルだから、私の思う初恋は、その子の事を考えると胸がウズウズしたり、チクチクする恋を初めてした時が初恋だと考えている。だから私の初恋は小学4年生の時だった。その子は4年生から転校してきた。社交性もあり運動も出来てルックスも良かった。もちろん、すぐに人気者になった。こう見えて私も地域のサッカークラブに所属していたりと運動神経は良く、なぜか立候補していないのに学芸会の主役に抜擢されたりそこそこ目立つ小学生だった。彼とはすぐに仲良くなった。彼は先輩にも後輩にもモテていてラブレターをもらっているのを何度も目撃した。私はそんな勇気はなくただ仲良しの友達でいるだけで満足だった。そう言えばこんな事があった。6年生の最後の学芸会の時の事だった。“天狗太鼓”と言う演目をやる事になり彼が主役の天狗に、そして準主役の天狗を助ける女の子役をたくさん立候補されてる中、なぜか立候補していない私が抜擢された。当日の体育館は満員でちらほら先輩もいた。その1シーンが問題だった。太鼓に落ちた天狗を私が手を取り引き上げるとの設定で、練習では別に普通に引き上げられていたが当日に事件がおきた。引き上げようとまず手を握った瞬間にブーイング!これは想定内。その後に彼はなぜか私の手をグイッっと引いたからバランスを崩して彼の上に覆いかぶさる形になり、何を血迷ったか彼は私を抱きしめる形になった。案の定、体育館はブーイングを通り越し悲鳴に近い声があちらこちらから聞こえたのを覚えている。その時の私の気持ちはただただ恥ずかしさしかなかった。終了後彼から『ごめん!でも、みきお重すぎんだよ!』と笑いながら謝られた。そうそう、私は今でもそうなのだが、あだ名はみきおちゃんだった。中学も一緒だったがありがちな私の幼馴染が好きな事を知って仲を取り持ち自分は告白出来ず。大人になっても仲は良かった。毎年の中学の忘年会では必ず同じテーブルだった。彼の兄弟も良く知っていて仲は良かった。しかし、13年前に事故で亡くなった。私は葬儀の受付を頼まれ受付もしたし、火葬場で骨も取らせてもらった。でも、昨年まで一度もお墓参りには行けなかった。行けなかった方が正解かもしれない!もちろん、大人になってからはお互いの人生をそれぞれ歩んでいた。ある意味お葬式に出ても信じたくなかったのかもしれない。彼が亡くなる1週間前に私は彼から飲み会の連絡でメールや電話をしていた。行けないと言ってもしつこく誘ってきて、悩んだ末何か話しがあると言われて渋々了承した。その次の日彼は亡くなった。今でも何を私に話したかったのかわからない。去年まで一度もお墓参りに行かなかったのも、たぶん私の心の奥の奥で初恋が終わらなかったのかもしれない。私は去年彼のお墓に“ずっと好きだったんだぞ!”とやっと告白出来たある意味スッキリした。そして一緒に行った幼馴染に言われた。『彼はみきの事、ずっと好きだったんだよ!気付かなかったの?』と。私は『えー?そっちが付き合ってたじゃん!私、協力したし!』と言った。すると幼馴染が『なんでうちら別れたか知ってる?』と聞いてきたので、『知らない!振ったんだったよね!』と私が聞いた。『私から言ったけど、2人でいる時にみきの話しばっかりで明らかにみきの事が好きなのわかったから、こっちから言ったんだよ!なんでみきは告白しなかったの?みきも好きだったでしょ!それに、卒業式の日にあいつみきの所に行ったよね!』と”あんた知らなかったの〜!鈍感過ぎるわ!“と言わんばかりの顔で言った。私は『え!来たよ。理由わからないけどボタン持ってきたのよ。それで、あまりなんだからいらないよ!って断ったらあいつ、ポケットに勝手に入れてったのよ!』とわけわからん!と言うと、『え〜!そのボタン第2ボタンだったんだよ!その時に付き合ってた子にも渡さなかったんだよ!断わった?みきらしい!鈍感すぎ!』と笑われた。幼馴染には言えないが今でもそのボタンは大事に取ってあった。今だから言えるが、私がその時に告白していたら私の人生変わっていたのかな?と思ったりもする。
不思議な事がある。私が離婚をした年に彼が亡くなって、私が初めてお墓参りをした年にヒョンさんと出会った。たぶん偶然なのだと思うが彼からのプレゼントなのかもしれない。“おまえ!やっと会いに来たな!遅いよ!でもありがとう!今度は幸せになれよ!”と言ってくれてるような気がする。
私はヒョンさんに私の初恋の彼の話しをした。ずっと静かに聞いていて、私が話し終わるとポツリと呟いた。『その彼の事、まだ好き?』と真面目な顔で聞いてきたので、私は『好きだよ!きっとこの先もずっと良い幼馴染としてね!』と笑って言った。『彼が羨ましい!みきと一緒に笑っていた時間も、僕が知らないみきの時間を知っていて、僕じゃかなわない。』と落ち込んでしまったようだった。”かわいい〜!“と思いながらゆっくりと話しをした。『私もヒョンさんの昔はわからないよ。楽しく過ごしていた時もわからない。でもね、そんなの何でもないし今のヒョンさんがあるのはその人達のおかげでしょ?私は感謝するよ。どれだけ長く一緒にいたかより、どれだけ深く幸せな時間を過ごすかの方が大事じゃない?私はヒョンさんとこれからどれだけ幸せに過ごせるかが楽しみよ!』と笑って伝えた。
彼は笑って『そうだね!ちょっと彼にヤキモチやいちゃったよ。ごめんね!ありがとう』と彼は私にハグをしようとして、“ハッ”と息子とジオンさんを見ると、二人でニヤけながら『どうぞ〜!』と手で促した。私はわざと”ないない!“と手でジェスチャーしていると、ヒョンさんが『사양말고 그렇게 하겠네요.(遠慮なくそうしますね)』と笑顔で私を抱きしめた。すると息子が『母、俺もハグしてやろうか?』と聞いてきたので私は速答した。『結構です!』と。




