万国共通!
私は携帯を台所のカウンターに置いてお母様と日本食を作り始めた。調味料の名前など、韓国語が難しかったので翻訳機とジェスチャーで伝えた。私はB型なのもあっていつも目分量で料理を作るので、いわゆる大さじ小さじが良くわからない。人に伝えるのは不向きだと今頃気付いた。しかしお母様は直ぐに分量を把握した。さすがだ!料理以外もたくさん話をした。ヒョンさんの子供の頃の話や兵役に行く時の事。ジオンさんの事など楽しそうに話してくれた。この時に知ったのは、お母様とヒョンさんは以前は一緒に暮らしてはなかったそうだ。お母様と暮らす事が決まってヒョンさんがこのマンションを買ったらしかった。“だからまだこんなに綺麗で現代的なんだ!”と納得した。お母様も言っていたが本当に彼は優しい人なんだとつくづく思った。ひと通り作り終わったので、ソファで楽しそうに話しをしている3人に声をかけた。『ご飯出来たよ〜!手伝って』すると3人は同時に『はーい!』と返事をして手伝い始めた。それで笑ってしまったのが、ヒョンさんと息子がおかずの置き場所で揉めてた。息子は毎回自分が一番食べたい物を自分の目の前に、あまり好きではない物を自分から離して置く。息子の前に太刀魚の煮付けをヒョンさんが置いたのが始まりだった。息子がそれを遠くに置き換えて唐揚げを自分の前に置いた。それをジオンさんが理由を聞いてヒョンさんに伝えたもんだからわざとヒョンさんはそうしたようだった。結構いじわる!唐揚げが行ったり来たりしていた。私とお母様はそれをほのぼのと見ていた。お母様が私に『親子みたいね。ヒョンも子供の頃は同じ事してたのよ!嫌いなものはジオンの前に置くの』と笑いながら言った。見ているとジオンさんも参加してきりがないので私が止めた。『はいはい!わかりました!唐揚げは母の前に置きまーす!』と自分の目の前に置いた。『ずりー!』と息子が言ったので皆で笑った。
配置も決まり、私達の2日目の宴が始まった。食卓を見ると本当にいつもの我が家の夕飯だった。ただ、足りない物は私が昔から漬けているぬか漬けがない事ぐらいで、その代わりにお母様のキムチになっているだけだった。息子はさておき、お母様もジオンさんも全部気に入ってくれたらしく、後でレシピを書く事となった。ジオンさんが笑顔で『お兄さんがお姉さんの料理は本当に美味しいって、ずっと言ってたのがわかったわ!あっ!みきさんの事お姉さんて呼ぶね』と言った。韓国では親しい年上の人には”お兄さん“や“お姉さん”と呼ぶ事は知っていたので私は特に何も思わなかった。するとヒョンさんが『お母さんどお?たまに行く日本食より何倍も美味しいでしょ?』とお母様に聞いた。お母様は『本当に美味しい!作り方もみきさんが教えてくれたから自分で作ってみたいわ!みきさんありがとう』と笑顔だった。その時息子が口を挟んだ。『母は料理以外はポンコツだけど、料理だけは雑だけど上手いよ!』と翻訳機を使い言った。『なんで?お母さんポンコツじゃないよ〜!』とジオンさんが息子に聞くと、息子は母の天然すぎるドジ話しを始めた。3人はその話しを聞いて驚くように私を見た。私はお酒を一気飲みして『全部本当の話です。すいません!』とキッパリ言って息子を見るとドヤ顔で私を見ていた。”あ~あ!本当にムカつくヤツだわ“と私は彼を睨んだ。ジオンさんが笑いながら『お姉さんもポンコツな所があったんだね!良かった。普通の人で!』と言ってヒョンさんとお母様を見た。二人は笑いながら頷いていた。ヒョンさんは私に『可愛いね!もっと好きになったよ。優しくて、ちょっとポンコツで料理も出来て、頑張り屋さん。最高だね!とも君達は幸せだ』と言って息子を見た。息子は『え〜!ヒョンさん、良く考えてみて!ド天然だよ!ポンコツだよ!それに強いよ!喧嘩したら負けるよ!』と言いたい放題だった。ヒョンさんは『可愛いいじゃない!それに僕はお母さんと喧嘩しないよ!負けるのわかってるから!ただ、守ってあげるだけ!大好きだから!』と舌を出した。皆笑った。私は思わず吹き出しそうになった。
二日目の夕食は昨日とは違って皆がリラックスしていて、幾度となく楽しい時間だった。ただ翻訳機を使わないといけないのがもどかしかったが、韓国語と日本語が飛び交っていて面白いって言えば面白い。私も息子もここ2日間でだいぶ韓国語が聞き取れるようになっていたし。ヒョンさんも日本語がかなり上達していて簡単な会話なら日本語でもじゅうぶん話す事が出来ていた。国際カップルがぶち当たる壁としては言語の問題を良く聞くが、今のこの状況は特に壁には感じなかった。お酒の力もあるかもしれないし、ジオンさんのおかげでもあるのは否めないが…。私はこの先もこの光景を見ていたいと心の中で密かに願った。どこの国でも家族の食卓は万国共通だと感じた。幸せな気持ちがこみ上げた時に突然ヒョンさんが私の手を机の下で繋いできたのでちょっと驚いて彼を見ると、笑顔で前を向いていた。私は思った“この人は私の心が読めるのか?透視能力者か?ヤバイよ!この人、どこまでもハンサムすぎる〜!”と、自分が彼の底なし沼に陥って行くのを実感した。




