お墓参り
私達は途中で花とお酒を買いお父様の眠るお墓に向かった。自宅から車で1時間ぐらいかかった。そこは凄く綺麗で広い霊園だった。私は韓流ドラマなどでしか見た事がなかったので、建物の中にあるロッカーのような所かと思っていたが違っていた。今日はお天気も良く朝から少し暑かった。私はお母様の手を取り歩いた。駐車場からちょっと距離はあったがお散歩日和だったので夏の風が心地よく気持ちよかった。私はお母様を気遣いながら出来る限り韓国語で話しかけた。たぶん、はたから見ると親子のように見えるだろうと思った。そして同時に自分の母親の事も思い出していた。母も韓流が好きでお友達と2回ほど韓国旅行に行っていた。75歳で仕事中に脳梗塞で倒れてから残念な事に失語症と高次機能障害で全く話す事が出来なくなった。良く話していたのが三男坊が高校生になったら一緒に韓国旅行に行こうと言っていたが叶わなかった。もう母の声は聞けないが今でもたまに母と話している夢を見る。夢の中では元気に笑っている母だった。
私達はお父様のお墓の前に到着した。私は韓国のお墓参りの作法がわからなかったのでヒョンさんに聞いた。日本とさほど変わりは無いように感じた。お墓を洗い、お花を手向けてお父様が好きだった食べ物をお供えする。お辞儀の作法は違っていた。お墓の前に敷物を敷いてお辞儀をした。その後、お父様が好きだったお酒をお墓にかけた。そして彼は私の肩に手を回してお父様に向けてこう言った。『お父さん。僕にもやっとお父さんに紹介出来る人が出来たよ。みきさん。日本の方だよ。お父さんもきっと好きになるよ』と私を笑顔で見つめた。私も『はじめまして。ヤマダミキです。よろしくお願いします』と韓国語で挨拶をして一礼をした。そして私達はお墓の前に座りしばらく話をした。
『ヒョン。お父さんのお墓に女性を連れて来たのは始めてよね?お父さんも喜んでるわ!』と、お母様が笑顔で言った。『そうだよ!なかなか運命の人には会えなかったからね』と笑って答えた。『お父さん心配してたのよ!あなたがなかなか結婚しないし、ジオンも自由人だから。きっとそれだけが心配のタネだったのよ。でも、その心配もなくなりそうで良かったわ』とお母様が私に微笑んだ。私は実際に“結婚”と言う言葉が出ると複雑だった。だから、あえて避けてきた。複雑な気持ちだったが一応笑顔で返した。すると彼は『ここの霊園にはかなり有名な人達が眠っているんだよ。僕の友達もいるから後で一緒に挨拶してくれる?』と尋ねてきたので私は笑顔で答えた『もちろん』と。私はちょっと話題を変えて聞いた『ヒョンさん。ソウルに日本の食材店はある?今日私が日本食をご馳走したいと思ってるんだけど。料理は上手じゃないけどね』と聞いてみた。『ちょっと大きいスーパーなら大体あるかな!帰りに寄ってみよう!あ~!みきの料理が食べれるの楽しみだ!』と彼は笑顔で言った。お母様も『わ〜!楽しみ。』と言った。私は”ハードルが上がってしまった!何作るかな?“とちょっと不安になってしまった。その後、私達は彼の俳優さんで友人の方のお墓参りをすませて駐車場に戻った。
帰りにスーパーに寄った。今日のメニューは決まった。ハンバーグ、肉じゃが、ポテトサラダ、太刀魚の煮付け。ちょっとガッツリ系のような気がするが決めた。調味料は全て揃った。お昼にかき玉うどんを作るための食材も買って家に帰った。私は日本から持ってきたマイエプロンを付けて、昼食の準備を始めた。お母様には日本から持ってきた緑茶、ヒョンさんにはコーヒーを入れてリビングで休んでもらう事にした。スーパーで片栗粉が見当たらなかったが“ジャガイモの澱粉”らしきものが家にあるとの事だったので代用した。ちゃちゃっと作って2人に食べてもらった。私が不安気に二人の様子をみているとお母様が『みきさん!美味しい。後で作り方教えてくれる?』とお口に合ったようだった。彼も『美味しい!』とあっと言う間に食べて終えた。私はちょっとホッとした。片栗粉の代わりに代用した物もちゃんとトロミもつけられたので片栗粉で間違えなかった。お母様は緑茶も気に入ってくれて何杯も飲んでくれた。『お口に合いましたか?』と改めて聞いてみた。お母様は『日本のお料理は美味しいって聞いてたけど本当ね!特に年寄りには本当に良いわ!韓国料理は結構油っぽいものや辛い物も多くてね。最近はお粥みたいな物が多くなっちゃうのよ。』と本当に気に入ってくれたようで、夕食の準備は一緒にお手伝いしながら覚えたいと言ってくれた。彼も『僕も手伝うよ』と笑顔で言った。私はとりあえず夕食までお母様には休んで頂くように伝えた。『ありがとう。少し休ませて頂くわ。』と部屋に戻られた。私と彼は後片付けをすませてソファで少し休む事にした。私はテレビをつけて韓国のテレビを見ていると、ヒョンさんのカッコいいCMが流れた。私はテレビと彼を交互に見ていると『ん?どうした?』と聞いたので、『멋있어.(カッコいい)』と笑顔で言った。すると彼の耳が赤くなったので私は更に『귀여워.(かわいい)』と追い打ちをかけた。彼は照れくさそうに私の肩に顔をつけた。”カッコいいのにかわいいって罪だわ〜“と私は彼をジッと眺めた。すると今度は彼が出演しているドラマの予告が流れた。それは女優さんとのキスシーンだった。私はそれをジーっと見ていると彼が気がついてすぐにテレビを消した。『なぜ消すの?』と私が聞くと、『嫌でしょ?』と言った。確かに凄く綺麗な女優さんとのキスシーンはちょっと妬ける。でも、別に嫌ではないし彼の作品はずっと見ている。彼に会う前は羨ましい〜!と綺麗だわ〜!の気持ちで見ていたが、彼とこうなってからは見てる方が羨ましいとか綺麗と思える程演技が上手いんだな〜!と尊敬の目で見ている事が多かった。私は『嫌じゃないよ。だってお仕事でしょ。とても綺麗よ。』と言った。彼はちょっと驚いて『普通彼女は嫌じゃないの?演技とは言え他の女性とキスするとか?』と聞いた。私は『いちいちそんな事気にしてたらテレビの人とは付き合えないでしょ?ちょっとはヤキモチも妬くけどヒョンさんのドラマは好きで見てるよ!嫌な気持ちになった事はないよ。それに、私の事を好きだって言ってくれてるのを信じてるし何の心配もしてないよ!』と笑顔で言った。彼はそんな風に言われたのは始めてだったようだ。私を抱きしめて『고마워요.(ありがとう)』と呟いた。私は『ねえ?このドラマの結末教えて〜!』といたずらっぽく言った。すると彼は私に真面目な顔で、『안돼!(だめ!)』と言って二人は吹き出して笑った!




