はじまりの前のはじまり
バキバキだった携帯もやっとの事直し、公園での出来事も毎日の日常の中ですっかり電話の下の引出しに追いやられるように忘れていた。
私は飽きもせず韓流ドラマを見ては韓国語の勉強を続けていた。
しかし、字幕なしで韓流ドラマを見てもさっぱりわからず挫折寸前であるのは確かだ。
実際勉強する時間は家事も全て終えた寝る前の数時間しか出来なかった。
“韓国語って難しいわ。頭の脳みそのシワがだいぶなくなってきてるから覚えても、寝たら忘れちゃうんだよねー。“
正に三歩進んで二歩下がる状態だ。
そんなある日の夕方、携帯が鳴った。知らない番号だ。
“また、セールスの電話かな”と、思い出なかった。
しかし、その夜もまた次の日も同じ番号から電話が来た。流石に気になった
”もしかしたら、急用で間違えて連絡してるのかもしれない“と思い始めた。
“もし、またかかってきたら間違えを伝えてあげよう”と決心したがそれ以降しばらくその番号の電話はなかった。1週間が過ぎた頃、再度あの番号から電話がきた。
『はい』
『良かった!出て頂いて。ご無沙汰しております』聞き覚えのある女性の声だったが、思い出せない!
『ごめんなさい。どちら様でしたか』
『あ、すいません。星と申します』
『あ~。あの時のマネージャーさん。どうかなさいましたか?』
『実は近くまで来ていて、お会い出来ませんか?』
私の中ではその言葉の意味が理解出来なかった。
”もしかして、この人友達いないのかな“ “何で?2回しか会った事ないよね” ”本当は詐欺師?“
私の頭の中は今や洗濯機の渦の中の状態だった
『ごめんなさい。今忙しくて。息子も帰ってくるので、本当にごめんなさい』嘘をついてしまった。
『そうですよね!突然申し訳ございませんでした。その後携帯は大丈夫ですか?』
『大丈夫ですよ。本当に全然お気になさらないで下さいね!ありがとうございます』
『良かったです。何度もお電話してしまい申し訳ございませんでした。それでは、失礼します』電話は切れた。
電話を切ったあと考えた。
“そんな事ある?ただぶつかって、ただ携帯が割れて、たまたま撮影が近くであったから見学しようとしてただけだよね?そんなに、気にするような事?損害賠償でも起こされるか心配してる?そんなに不審な人に見える?ただの小さいおばちゃんじゃん!”何だかちょっとの怒りとちょっとの不安を感じた。
そんな事を考えていると程なくして、生意気な息子が帰ってきた。
『ただいま!腹減った。今日の夕飯何?』
”でたー!お決まり文句“
『シチューとハンバーグと小松菜のお浸し、あと何か』
『唐揚げも』
『了解!お風呂はいっちゃってね!』
『わかった』
昨日も同じ会話をしている事に笑ってしまった。普段の日常に戻っていた。
ある程度の準備を済ませて、夕飯前にお風呂に入ろうとした時に玄関のチャイムが鳴った。