三男坊
韓国へは三男坊と私の二人になった。お兄ちゃん達は仕事でどうしても都合がつかなかった。彼に伝えると凄く残念そうだったが、次に自分が日本へ行った時の楽しみが増えたと、相変わらず優しい人だった。
私は今回はチケット代とホテルは自分で出すから送らないでと伝えたが、それから2日後には前回のように2名分の飛行機それもビジネスクラスの往復が送られてきた。そして手紙が入っていて宿泊先は僕の家だからホテルはとらないでねとかいてあった。私はあまり彼に負担をかけさせたくなかった。私の悪い所でもあるのだが、昔からボーイフレンドと食事に行っても割り勘にしたり、おごってもらったら次は私が払うなどとにかく負担をかけるのが嫌だった。昔元彼に『おまえ!本当に可愛げがないよ。』と言われた事があった。確かに自分の親には人に迷惑をかけちゃいけない!と言われて育ったからなのか、今まで付き合った人達にも“わがままを言っちゃいけないんだ”と甘える事が出来なかった。だから、”私。出来な〜い!“とか“ありがと〜!ごちそうさま!”と可愛く甘えられる女性が凄く羨ましかった。本当は可愛らしく甘えたかったが、性格なのか外見からなのか、どちらかと言うと”あざす!“と言ってしまうタイプだった。
私はすぐに彼にメールをして無事に到着した事と感謝を伝えた。すると少しして彼から返信が来て、今電話出来ないけどメールありがとう。出発の便が決まったら連絡してほしいと返信がきた。
私はちょっと申し訳なかったが有り難く彼の気持ちを受け入れた。
私は三男坊に宿泊先の件とチケットの件は伝えたが、ビジネスなのは当日まで黙っとこ!と言わなかった。なぜなら、またドヤ顔で理由のわからない家族メールを送って集中砲火を受けるのは三男坊なので可哀想だと思った。
それから出発までの10日間私と三男坊は、必死で韓国語の勉強をした。さすがだと思ったのが、現役の学生は物覚えも早い!私の方がだいぶ出来ていると思っていたが何気に話せるようになっていた。終いには私に発音がおかしいとまでダメ出してきた。
出発の朝早く彼から電話が入った。『おはよう!공항에서 기다리고 있을게!빨리 만나고 싶어!사랑해!(空港で待ってるよ!早く会いたい。愛してるよ)』とワクワクした感じで言った。『おはよう。ありがとう。나도 보고싶다.사랑해. 이따 봐.(私も会いたい。愛してる。あとでね)』と電話をきった。すると三男坊が起きてきた。
『今日は車じゃないからね!早く準備してね』と寝ぼけたような三男坊に言うと『ねー!パンツ何枚持ってけば良いの?』と聞いていたので驚いた!『今更〜!4泊だから4枚で良いんじゃないの?漏らすならもっと持ってけば!』と私が言うと『もらさねーし!』とちょっとムッとした感じだったので思わず吹き出してしまった。『あと、30分後に出発ね!OK?』『OK!』と三男坊はそそくさと準備を始めた。そう!予定では4泊5日の韓国旅行の予定だ。ヒョンさんは1ヶ月ぐらいいてほしいと言われたがさすがに私の仕事が休めなかった。そして私達は出発した。
空港まではタクシー→電車→リムジンバスを利用して向かった。いつも車の私はかなりハードな乗り換えだった。
私達は無事に空港に到着してまずはお土産を買いに行った。
三男坊に以前私が渡したお土産を説明して、悩んだ末、お母様には日本の風呂敷、ジオンさんには扇子、ヒョンさんには雪駄を買った。三男坊が全部選んだものだ。その他、韓国に持ち込みOKな食品を買ってチェックインカウンターに向かった。
チェックインを済ませて私達は出発ロビーからラウンジに向かった。私は歩きながらやっと今回はビジネスクラスに乗せてもらう事を話した。初めての飛行機の三男坊はいまいち意味がわかってなかった。私は飛行機にはいろんなクラスがあって自分達みたいな普通の人間にはもしかすると一生乗れないクラスだと説明した。すると三男坊は目をギンギンにして『マジか!俺こんな格好で来ちゃったけど大丈夫?ヤバくない?』と焦っていて笑った。『大丈夫だけど、ヒョンさんに本当に感謝しなよ!』と私は言ってラウンジの前で止まった。すると入口に立っていた女性が『搭乗券を拝見させて頂いてもよろしいでしょうか?』と笑顔で尋ねてきたので見せると中に案内してくれた。私もそうだが三男坊もかなり恐縮していて思わず彼を見て吹き出してしまった。
私達は中に入り飛行機の見える窓際の席に座った。すると三男坊はまるで田舎から東京に来てあまりにも別世界に驚く田舎者のようにキョロキョロあたりを見回していた。そして私に聞いた。『あそこの食べ物食べる時は先にお金払うの?』と、以前私がここの従業員の方に聞いたような質問をしたので”やっぱり、親子だわ〜“と思いながら『無料だよ』と伝えた。三男坊は『全部?マジで!すげー!じゃあ、持ってくるわ』とそそくさと食べ物を取りに行った。
戻ってくると両手にいっぱいに食べ物と飲み物を持っていた。『こんなに食べられるの?』と聞くと『余裕!』とドヤ顔を見せた。『たぶん飛行機でも食事でるから程々にしなね!』と私が言うと『先に言ってよ〜!』と口いっぱいにほおばって言った。私は飲み物を持ってきて三男坊が取って来た食べ物をつまんだ。そして食べ終わると私に真面目な顔で言った。
『母!マジでありがとう。なんか最高だわ〜!』と目を輝かせていた。
私は心の中で“驚くのはこれからだよ!”と喉元まで出かかった言葉を飲み込み『は~い!』と答えて笑った。




