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決意

 私達は空港に到着し、まずチェックINをすませてカフェに向かった。前に彼が家出してきた時に寄った同じカフェだった。私達はガラス越しのカウンター席に座った。

この前の事がまるで昨日の事のように思い出された。けれど、気持ちは以前よりもずっと穏やかだった。

 私達は本当に他愛も無い話をしていた。ごく普通にまるで何年も経過した夫婦のように。

『次に日本に来た時はお兄ちゃん達と会いたいな!』と彼は言った。私は『そうだね。みんなで食事しよう!』と笑顔で言った。楽しい時間はあっという間に過ぎて、私達は出発ロビーに向かった。

 エスカレーターを降りていると向かいから立てに並んで楽しそうに話しているアラフォーぐらいの3人組の女性とすれ違った。

“これから旅行かな。楽しそう”と思いながら彼女達とすれ違うまで見ていた。

 私達は出発ロビーに到着して搭乗口に向かっていると、後ろから声をかけられた。振り向くと先程エスカレーターですれ違った3人組だった。

『すいません。ヒョンさんですか?ずっとファンです。写真撮ってもらえませんか?』とお願いされた。ヒョンさんは笑顔で『良いですよ』と日本語で言った。私はさり気なく手を離そうとしたが、彼はわざと強くにぎっていた。私は前回の事があり少し学習していた。『ご一緒にどうですか?私が撮りますよ!』と彼女達に言って彼に”どうだ〜“と言わんばかりのドヤ顔で笑った。『良いですか!ありがとうございます』と彼女達が言ったので彼は“やったな〜!”と苦笑いしながら手を離した。一人の女性から携帯を預かると女性達を彼の方へ促した。すると彼はわざと女性三人いっぺんに肩を抱き寄せて、私に向かい舌を出して笑った。私は”はは~ん!私がヤキモチ焼くと思ってるな!そうはいかないよ〜!全然大丈夫だよーだ!“と、めいいっぱい明るく『いきますよ!はい、チーズ』と号令をかけた。彼女達は私から携帯を受け取ると『マネージャーさんですよね?ヒョンさんは韓国に帰られるのですか?』と私に聞いてきたので『はい』と笑顔で答えた。すると彼に『握手してもらって良いですか?』と詰め寄って行った。“凄いパワーだ!”とただただ唖然と見ていた。彼もかなり圧倒されていたが、笑顔で快く握手をした。そして彼女達は『カムサハムニダ!』と彼に一礼し、大興奮状態で行ってしまった。すると彼が笑いながら私に近づいて来て『질투 났어?(嫉妬した?)』と聞いてきたので、『全然!』とわざと笑顔で言った。本当はプロの一面を垣間見れて嬉しかったが、ちょっとヤキモチをやいた自分がいた。

彼はそれを察知したかのように私を抱きしめて『仕事だからね!미안해. 사랑해.(ごめんね。愛してるよ)』と言った。私はヒョイッと彼から離れると『ダメです。マネージャーなので』と真面目な顔で言った。私達は我慢出来ずに吹き出して笑ってしまった。

 私達は搭乗口の近くまで行くと彼がいつものように私の手を取って、『電話しても良い?』と聞いてきた。『電話待ってるね!でもゆっくり話してね。もっと韓国語勉強するね。ありがとう』と私達は日本語で話した。そして『じゅっと、愛してます。合ってる?』と聞いてきたので私は『じゅっとじゃなくて、ずっとね!』と笑った。彼も笑顔で『사랑해.愛してます?』私は笑顔で頷いて『オッケー!私もずっと愛してます』と答えた。なぜか韓国語で”愛してます“とか“大好きです”はあまり恥ずかしくないのだが、日本語ではちょっと恥ずかしかった。意味は同じなのだが、不思議だ。

彼はギュッと私を抱きしめた。もう何回抱きしめられたんだろう!私と彼は背の高さが30cmぐらい違うので私を包み込むような感じが凄く好きだった。アラフィフになると人に抱きしめられる事もない。子供達も小さい時は良く抱きしめてあげたが、小学校高学年ぐらいになると、私が抱きつこうとすると逃げるようになっていた。仕方のない事だがちょっと淋しく思う。そんな私がこの歳になって人に抱きしめてもらうなんて、ましてや自分が大好きな人にされるなんて奇跡としか言いようがない!このたくましさと温もりと安心感はたまらなく好きだった。いつまでもこうしていたい気持ちをグッとこらえて私は彼の胸から離れて言った。『いってらっしゃい。いつも応援してる。』。すると彼も『行ってきます』と笑顔でキスをした。

 私は彼が見えなくなるまで、手を振って彼を見送った。

 私は一人駐車場に向かって歩き出した。淋しさを振り切るように元気良く歩いた。

 車に戻ってエンジンをかけてフッと助手席を見ながら考えていた。この先彼とどうなるかわからないが、子供達に話した方が良いか?それともしばらくは黙っていた方が良いのか?悩んでいた。たぶん上の二人は”おばちゃんが何勘違いしてるんだ!“と笑い飛ばされるのは大体想像がつく。だからと言って彼はきちんと私の事や子供達の事もご家族に話をしてくれている。私だけ黙ったままなのはいかがなものかとも思う。   私はとりあえず家に帰ろうと、BGMを選んだ。

 サンボマスターさんの“できっこないをやらなくちゃ”だ!

そうなんだ!今までだって何でも4人でいろいろ話してやってきたんだ!

“ちゃんと話そう!”と心に決めて私はアクセルを踏んだ!

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