表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/142

携帯

 空港からの帰り道は渋滞に巻き込まれた。こういう時に一人での運転は淋しく感じてしまう。そんな時は決まって大合唱が始まる。ま〜、眠気覚ましにもなると思うし、子供達が乗っていないので心置きなく歌えるのも良い。

 とりあえず、私はヒョンさんから教えてもらった子供向けの歌を忘れないように練習した。とにかく、韓国語の発音は難しいと思いながら渋滞の我慢の時間を乗り越えた。

 家についたのは夜になっていた。

『ただいま〜!』と家の中に入って行くと、いつものようにソファでテレビを付けたままYouTubeを見てる三男坊がいた。

『おかえり〜!腹減った。夕飯何?』と、彼の決まり文句を発した

“でたよ〜!君はその言葉しかしらないのか!”と私は苦笑いした。すると、『ちゃんと海行ってあげたの?』と相変わらず携帯から目を離さずに言った。『行ったよ!それでまさの所でご飯食べたよ。』と返すと『たかは?』とやっとこちらを向いた。

『たかちゃんは学校行ったあとだった。サーフィン頑張ってるみたいだよ』私が言った。二人は幼馴染みたいな関係で、毎年皆で夏にはキャンプ、冬はスキーに行くのが年中行事だった。

『凄いな!俺はサーフィン才能ないからバイト頑張るわ!』と笑った。

 私は夕飯のメニューを考えていたが、面倒な時は丼ものと決めていた。”良し!親子丼だ“。決まれば早い。私はちゃっちゃと親子丼となめこがあったのでなめこの味噌汁、それからぬか床からきゅうりのぬか漬けを出し、“はい!終了!”。

『できたよ~』と息子に呼びかけるとすぐにいつもの席に座った。

『いただきます!』と凄い勢いで食べ始めた。”君の胃袋はバキュームクリーナーか!“と思いながらその食べっぷりに感心していた。彼は食べながら聞いた。

『ヒョンさん今度はいつ来るの?』と急に言ったので一瞬戸惑ったが、『次はいつ来れるかね〜!俳優さんだから忙しいからね』と、言ったタイミングで私の携帯から聞き覚えのない音が連続して鳴った。

『何その音。何か携帯の音変えたの?』と息子が言ったので、『母がそんな技出来るわけ無いやん!』と、私は携帯を取ってみた。“ん?このマーク何?”と思いながらタップしてみるとヒョンさんから連続して写真が送られていた。ご飯の写真、お母様の写真。この人誰?の写真。などなど。8枚ぐらいあった。

『ヒョンさんからじゃないの?』といつの間にか息子が携帯を覗き込んで言った。『うん。ヒョンさんだね。』と言った途端に今度はハングル文字が送られてきた。『母、読めるの?』と尋ねられたので『ん〜。無理だ!』と答えた。『じゃあ、ダメじゃん!』と息子は笑って続けた。『あ~あ!ちゃんと勉強しとけば良かったのにね〜!残念!がんばって!』といつの間にか食べ終わった夕飯の食器を片付けながら言い放って風呂に行ってしまった。でも私は、”こう言う時の翻訳機でしょ!“と翻訳機で翻訳してみた。

“미키! 잘 도착했어?내일부터 일 열심히 할게.(みき!無事に着いた?明日から仕事頑張ります)”と書いてあった。私も返信してみた。”안전하게 도착했습니다. 무리하지 마라. 열심히! 편지와 목걸이 감사합니다. 소중히 할게.(無事に着きましたよ。無理しないでね。頑張って!手紙とネックレスありがとう。大切にするね)“と、合ってるか不安だったが送ってみた。するとすぐに返信が来て“보고싶어 못 참겠어요。사랑해.(あなたに会いたくてたまらない。愛してるよ)“と返ってきた。“早い!”私も慌てて返信した。”저도 같은 마음입니다.사랑하고 있어요。(私も同じ気持ちです。愛しています)”と返した。すると彼の手でハートを作った自撮り写真が送られてきた。何だか可愛らしくて一人でニヤついてしまった。私も彼からもらったネックレスを付けてる首の部分だけの写真を送ってみた。するとすぐに”당신의 얼굴이 찍히지 않아(顔が写ってないよ).”と返ってきたので、“얼굴은 필요 없어.(顔は必要ありません)“て返したら泣き顔のスタンプが送られてきて笑ってしまった。すると、“미팅 하러 다녀올게(打ち合わせに行ってくるね)”とこれから仕事のようだった。”다녀오세요(いってらっしゃい)“と送った。大きいハートのスタンプが送られてきた。私はこれ以上送ったらきりが無くなりそうなので送るのをやめた。

 こんなにたくさんの写真を、それもご飯の写真や自撮り写真などを送られたのは初めてだった。嬉しさもあったがちょっと圧倒されてしまった。とりあえず、全部保存をしてみた。

 私は彼の返信の速さを見て、“これが、アラフィフとアラフォーの違いか!”と携帯をいまいち使いこなせないでいる自分が恥ずかしくなった。

 いつの間にか風呂から戻った息子が更に追い打ちの一言を放った。『母。眉間にシワよってるよ!おばあちゃんみたいだよ!』と笑った。”このアホ息子!“と心の中で叫び飛び蹴りしたい気持をグッと抑えた。私は冷静を取り戻す為に黙ったまま風呂に向かった。

 だいぶ冷静を取り戻して湯船につかったまま考えた。

 いつもと変わらない日常がこんなにも自分にとって幸せな事なんだと。更にヒョンさんがいてくれる事で今まで一人で頑張ってきた気付かない緊張感から少し開放されたようで幸せが倍増してるのを感じた。

 そして、頭の中に美空ひばりさんの“愛燦燦”が流れ出したので思わず声を出して歌った。

なぜか、風呂で唄を歌うと上手に聞こえてしまい、私は風呂場て美空ひばりさんになりきって歌った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ