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想い出の味

 私達は10分程歩いて目的のカフェに到着した。私はドアを勢いよく開けた。『いらっしゃ…!あっ、みきちゃん!あれ?どうしたの?』とその男性は私に言った。そう、ここは私がお世話になったお店。彼は店長さんの息子さん。歳はヒョンさんの1つ下41歳。

『ちょっと別の用事があって海に来たから寄ってみた。たっちゃんは学校?』『そう。今日波が良かったのかなかなか帰って来なくて、飯も食わないで行ったよ』彼はほとほと困ってます!みたいな顔をした。そしてヒョンさんを見て会釈した後に“誰?”と目配せした。私は翻訳機を用意して言った。

『こちらヒョンさん。韓国の有名な俳優さん。』次はヒョンさんに、

『さっき話した店長さんの息子さんで、たちばなまささん。このお店の店長さん』”あ~“と『はじめまして。ヒョンです。彼氏です。よろしくお願いします』と日本語で挨拶をした。するとまささんは、『彼氏〜?うそでしょ?あり得ない!かっこよすぎるでしょ!』と半ば本気に思ってない様子で笑った。

『ヒョンさん?何食べたい?』と聞くと『任せるよ』と、笑顔で言った。するとまさが、『とりあえず、コーヒーいれるね。』と笑顔で言った。

 店は昼には少し早い中途半端な時間だったが、年配の御夫婦がテラス席に座っていた。私達はカウンターに席をとった。

『はい、どうぞ。でも何でみきちゃんが有名な俳優さんと一緒にいるの?確かに韓流ドラマ好きなのは知ってるけど。』すると私は、『これには、長い長いお話しがあって今は話すには時間がたりないなか〜!』と、わざと一笑した。ヒョンさんは翻訳機で私達の会話を聞いていて、笑顔で口を開いた。

『僕が偶然彼女と出会って好きになって口説きました!』とサラッと言った。まさは翻訳機に目をやり一瞬目を見開いたが苦笑して私に言った。

『みきちゃん〜!彼に間違ってもそんな冗談は言っちゃダメって教えとかなきゃ〜!日本の女性はみんな勘違いしちゃうから。』と私に言って続けた。『ヒョンさん!ダメダメ!彼女は冗談通じないよ!本気に思って韓国まで付いて行っちゃうからね!まっ!こんな52歳のおばちゃんに言っても誰も信じないけどね』と爆笑した。“歳まで正確に言ってんじゃないよ〜”と私が睨むとまさが、『あ~、怖い怖い!怒ってるわ』と更に爆笑した。

 まさと私は彼が小学生の頃からの付き合いで、姉と弟のような関係だった。彼にはともと同じ歳の子供がいて、その子が5歳の時に奥さんと離婚して一人で彼を育てている。まさと会うのはだいたい年に2〜3回で電話では良く相談にのってあげていた。ただ、ヒョンさんの事は一切話していなかった。

 ヒョンさんがまさに言った。

『彼女は本当に僕の彼女ですよ。今も会いたくて韓国から家出してきてます。』と、真面目な顔で言った。まさは私に『えっ?本当の話しなの?』と聞いてきたので頷いて見せた。するとまさがヒョンさんに、『みきちゃんのどこが好きなの?』と恐る恐る聞いた。ヒョンさんは、『全部!』ときっぱり言った。

 なぜかまさは黙ったまま何か考えて言った。私は何かいい事でも言ってくれるのかと期待して待った。そしてまさが言った。

『こんなに普通のおばちゃんで、子供もいてバツイチで。容姿は間違っても良いとはいえないし。確かに性格とかは天然だけど誰にでも優しいし、雑だけど料理も美味いけどね。それでも好きなんですか?』と半分ディスっているかのようだった。私は『言い過ぎじゃないですか?君もアラフォーバツイチ子持ちだし。』と言って皆可笑しくなって笑った。

 私は簡単にヒョンさんとの出会いから今までを話した。その話を聞きながら、まさは私のいつもの食事を用意してくれた。それは、ナポリタン。店長が毎回私に作ってくれた想い出の料理だ。まさがこの店をレストランに改装した当初からある。彼はまだサラリーマンだったがこの味だけはちゃんと受け継いでいる。

『はい!とりあえず食べて!』と私達に差し出ししばらく私達を眺めていた。

 『これね、私の想い出の料理で店長さんが良く作ってくれたの。毎回これ!』とヒョンさんに説明した。

ヒョンさんはそれを口にすると、『맛있다!美味しい!』と笑顔になった。まさはそんな私達を笑顔で見てた。食事を終えるとまさはコーヒーのおかわりを入れてくれた。

『まささん。ありがとうごじゃいます』とヒョンさんはまさに言うと、

『僕の想い出の味になりました。』

と続けた。ヒョンさんは相変わらず優しかった。私は話題を変えた。

『まさ!そろそろ良い人見つけて結婚でもしたら?まだギリギリ若いんだから!』と聞いた。まさは言った『もう結婚は良いかな!いろいろ女性は大変だしね。老後は好きな時に店開けて、サーフィンやって一人でのんびり暮らしたいかな』と、アラフォーとは思えない答えに私は言った。『もったいないね〜!顔は何とも言えないけど、中身は良い男なのにね〜!』。三人で笑った。

『こんな事聞いて良いのかな?ヒョンさんて、俳優さんでたくさん綺麗で良い人いっぱいいたと思うのに、何でずっと独身?あれっ?もしかして妻子ある身?』とまさはかなり失礼な質問をしたが、彼は笑顔で答えた。『僕はずっと独身ですよ~。綺麗な方も良い方もたくさん会ったしお付合いした事もありましたよ。でも、毎回何かが違う気がして結婚まではいかなかった。それでこんな歳まで独身です。仕事もいそがしかったですしね』まさは不思議そうに聞いていた。そして言った。

『もったいないなー!でも、何かが違う感覚はわかる気がするわ〜!女性って結構かまってちゃんだから、自分を一番って思ってくれないとかで怒るし。何でもない事で疑うし。

その点みきちゃんは大丈夫!ある意味性格が男みたいだから楽だと思いますよ!ね?』と私に振った。私は『男みたいはどうかわからないけど、お互いに信じ合ってれば何も心配する事もないからね。それに、お互いに一人の時間も必要だと思うし。気持ちが一致してれば大丈夫じゃないかな〜!』と言った。まさは『ね!』っとヒョンさんに目配せした。二人は何故か笑って頷いた。

 そろそろお昼に近づいてきて時にお客さんが入ってきた。

『そろそろ行くね!お会計して!』と私が言うと、『今日はおごる!次に来た時は店手伝ってね!ヒョンさん!また来て下さいね。みきちゃんよろしくお願いします!』と笑顔で店の外まで見送ってくれて私達は別れた。

『さあ!どこに行こうか?』と私が聞いた。ヒョンさんは海を指差して『あそこ!』と言った。

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