愛する人々
家の前に到着した。
『星さん!本当にありがとうございました。何とお礼を言ったら良いか…時間ある時とか、遠慮せずにうちにご飯食べに来て下さいね!』私は頭を下げた。星さんは笑顔で、
『はい!愚痴をい〜ぱいためて来ますね!また、ご連絡します。』星さんは運転席の窓から手を振りながら帰って行った。
玄関の前に立ってみると、韓国に行っていた事が本当だったのか不思議な感じだった。普通に入っても良かったのだがあえて玄関チャイムを鳴らした。
『はい!』三男坊だった。私はちょっと声を低くして、モニターに映らないように、
『宅急便です!』と伝えると、わかったのかわからなかったのか”はい“と返事が返ってきた。私は笑いをこらえて玄関ドアの前に立った。すぐに玄関の明かりがつき玄関が開いた。
『なんだよ!母かい!』と、なぜか私が入る前に玄関のドアを閉めた。
“は〜?普通閉めるか?”と自分で開けようとした時タイミング悪くまたドアが開いた。そして、良い音をたてて私の頭を直撃した!
『ごめん!当たった?変な事するから罰があたったんじゃん。』と大爆笑で言った。
『また開けるなら閉めるな!頭がカチ割れるかと思ったよ!ただいま!』
『おかえり!』三男坊はキャリーケースを持って中に入って行った。
リビングでは長男がソファから
『おかえり。何時に到着かわからなかったから迎えに行けなかった。大丈夫だった?』とゲームをしながら言った。
『大丈夫。星さんが迎えに来てくれたから。』
『星さん?』そうか知らないか、
『韓流スターさんの日本の通訳さん。いろいろあって仲良くなったの』特に感心はありませんが!と言うように”ん〜“とゲームを続けていた。“感心ないのかい!”と後ろからツッコミたくなったがだまった。すると三男坊がやってきて言った。
『ちゃんとお土産買ってきた?そうだ、昨日の昼ぐらいに兄ちゃん来たよ。それで焼き肉奢ってくれて帰った。だからカレー残ってるよ』三男坊が兄ちゃんと言うのは次男の事で長男の事は名前で呼んでいた。普通は逆のような気がするが…。
『ちゃんと買って来たよ!』私がキャリーケースをガサガサしているとちゃっかり長男も立っていた。私はとりあえず全部机の上に出してみた。ほとんどお菓子のようなものが多かったが中には化粧品?のような物も入っていた。二人は携帯の写真らしき物をみながら、これはお前、これは俺などと分け始めた。それを見ていた私は”これが25歳と16歳のやりとりじゃないな!“とまるで小学生が遠足のお菓子をお互いに物色してこれ頂戴とか言ってるよえにしか見えなかった。でも、いつもの光景になぜかホッとする自分がいた。
『残しておいてよ!2つあるのは会社に持ってくから!』二人はジャンケンで母に返す物をきめていた。これも、我が家では日常茶飯事の行動である。何かを決める時は必ずジャンケン。特に頂き物などの高級お菓子の時は全員真剣そのものだった。
『母。風呂沸いてるよ!』と長男が教えてくれたので、私は風呂に入った。
湯船につかると韓国での夢の時間が蘇ってきた。皆で食事をした事、ヒョンさんが泣いていた事、一緒に観光やスーパーで買い物した事。抱きしめられた事。気付くと全てがヒョンさんと一緒の想い出ばかりが頭に浮かんだ。こうやって一人になると愛おしさが増してしまうのを感じた。私は悲しくなる前に風呂から出た。
風呂から出た私に三男坊が聞いた
『今日、夕飯なに?』。人の顔見るとお決まりの言葉。バカの一つ覚えか!と言おうとした時、
『カレーあんだろ!母、カレーでいいよ!』長男が三男坊の頭を軽く叩いた。
『あっ!忘れてた。』と三男坊が頭に手をやった。
本当にいつもの日常で、私はとても幸せだった。何気ない日常はいつもの繰り返しで何も感じない事が多いが、当たり前に子供達がいて、他愛もない会話をして、私にはこの日常が一番あってるような気がした。
それから2日目のカレーを皆で食べた。その後しばらくは同じ部屋にいながら、別々の事をして過ごした。
『母、明日仕事だから寝るね。おやすみ!』
『おやすみ!』と声が揃った。
部屋に入りいつもの布団にもぐりこみ、イヤホンをつけた。先程、星さんが送ってくれたヒョンさんの電話を聞いた。穏やかな優しい声だった。繰り返し何度も聞いた。我慢していた涙が溢れ出した。
もう会うこともないかもしれないが、いつの間にか私の愛する人達の一人になっていた。
そして、彼の声を聞きながら私は夢の中で会える事を願いながら深い眠りに落ちて行った。




