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旅立ちの時

 リビングではお母様がお別れのお茶をいれてくれていた。とても温かい幸せの味がした。3人で話しをしていると、おもむろにお母様から紙を渡された。中を見てみるとハングル文字でびっしり何か書かれていた。それをヒョンさんが覗き込んで言った。

『キムチ』。”あ〜!キムチのレシピ“!私は感動した。慌ただしかった時間の中で私の為に書いてくれたかと思うと胸が苦しくなる程嬉しかった。

『ありがとうございます。日本で頑張ってお母様のキムチを作れるように練習しますね。息子達にも食べさせてあげたいし。本当にありがとうございます』私はうるっときそうになり我慢した。

『次にいらした時は、私に日本食ごちそうして下さいね。息子が最高に美味しいと言っていたので、私もたべたいわ。』お母様が笑顔で言った。“次はないかもしれないが”

『はい。全然料理は得意ではないので、お母様にごちそう出来る代物かわかりませんが、是非』私は笑顔で答えた。内心”ヒョンさん!ハードルは上げちゃだめでしょ“と思いながら彼を見ると“何も言ってませんよ〜”と言わんばかりの顔で笑ってた。

 私はそろそろ時間になったので、コップを片付けて帰る為玄関に向かった。後を振り向くとヒョンさんはリビングで私のキャリーケースを持ったまま誰かと携帯で話しをしていた。隣にいたお母様に写真を撮らせて頂きたくお願いをした。快くOKしてくれた。”一緒に“と言われたが私は写真が苦手だった。写真で毎回自分の顔を見る度に“誰が私の顔をバットでなぐったの?”と思ってしまうぐらい悲しくなるからだ。だからお母様一人を撮った。その後こっそり電話中の彼を撮った。記念に持っていたかった。彼が”ごめんなさい“と足早にやってきた。私はお母様と一緒に写真を撮らせてほしいとお願いすると二人で笑顔で並んでくれた。こうして見ると本当に似ている。穏やかな笑顔も優しいオーラも。この二人にもう会えなくなるかもしれないと思うと涙が出そうになった。私はそんな気持を払拭する為に言った。

『写真代はおいくらですか?』私は冗談で言った。3人で笑った。

靴を履きお母様に“ありがとうございました。お世話になりました。お元気でいて下さい”と会釈するとお母様も私にハグしてくれて、

『アリガトウ』と日本語で挨拶をしてくれた。そして私にOKサインをした。私もOKサインをして、

『감사합니다(ありがとうございます)』と韓国語で伝え家を後にした。

 彼は駐車場で車に私を乗せるまでずっと私の腰に手をあてたまま歩いていた。”腰はだめだろ!横肉がバレるでしょ!“とずっとどうでもない事をわざと考えるようにしていた。なぜなら、辛いから。辛さを押し殺したかったから。

 車に乗り込むとスーパーに寄ってもらう事にした。息子達にお土産リストを預かっていたからだ。事前にスーパーで買えない物は昨日のうちに買っておいた。

 かなり大きなスーパーでヒョンさんにリストを告げて一緒に探してもらった。“なんだか仲良し夫婦みたいだわ〜!”など思いながら歩いていた。日本のスーパーと感じは変わらないがたくさんの良くわからない物があり主婦には楽しい。棚を見ながら歩いていると前を歩いていた彼が立ち止まってこちらを見ている事に気付かなかった。彼は私がたぶんぶつかるだろうと予測していたかのように手を広げて待っていた。案の定ぶつかった!

『すいません!』顔を上げると大爆笑しているヒョンさんだった。

『危なかった〜!大丈夫?』と、そのまま抱きとめる形になった。

『괜찮아. 미안해.(大丈夫。ごめんね)』私は苦笑いをした。ヒョンさんが大爆笑で言った。

『부딪히는 거 두 번째네(ぶつかるのは2回目だね)』と笑った。

 そうだったわ!ヒョンさんとぶつかってなかったら、今はなかったわ!おっちょこちょいも、たまにはいい事あんだなー!

 実は良くぶつかる。この前も家のガラスを拭いていたら、外でママ友が会釈したから会釈で返そうとしたら窓にそのまま激突!

 仕事場では振り返ればドア!などなどあげたらきりが無い!52歳になっても懲りずにやってしまう!

 まさか韓国に来てまでやるとは。

ヒョンさんは”귀여운! 조심하세요!(かわいい!気をつけてね!)“と頭を撫でられた。“子供か!”と喉まででかかったのを止めた。

 無事に買い物を終えた私達は空港に向かった。私は急に思い出してヒョンさんに言った。

『送ってくれた飛行機のチケットが、ビジネスクラスだったけど、私初めてで凄すぎて…ありがとう。ごめんなさい!』と恐縮すると、『気にしないで!』と肩を叩いた。

いやいや!私が韓国に来て支払ったお金ほとんどないんですけど〜!

いくらスターでもだめなのよ!

私がずっと断っても支払わせてくれなかった。“本当にすいません!”私は心の中で謝った。

 空港が見えてきた。昨日到着した事が今朝に感じてしまうぐらい、時の経過の速さを感じた。

 そして駐車場で止まった。

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