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恋したっていいじゃない!

 家に戻るとヒョンさんが私を部屋の1つに案内してくれた。

『みきさん。この部屋を使って下さい。中にトイレもシャワールームもあります。それとも、僕と一緒が良いですか?』ヒョンさんは笑って言った。

『ダメダメ!おばちゃんからかっちゃ!』焦って言うと、日本語がわかったのか『嘘ですよ。みきさん!』

と大爆笑していた。

 私は内心“全然笑えね〜。アラサー独身だったら”一人じゃ寂しい“とかぶりっ子な声で言ってたよ。ヒョンさん良かったねおばちゃんで!”などと考えていた。

 『みきさん。おやすみなさい』と長めのハグをされた。私も

『잘자요(おやすみなさい)』とヒョンさんの背中をポンポンとした。相変わらず奇妙な二人だ。韓国人が日本語で、日本人が韓国語で!

 それから、部屋に入って驚いた。ベッドには良く映画でお姫様が寝ている、蚊帳のようなものがぶら下がっている。

『ホテルやん!』私はつい言ってしまった。もしかしてと思い洗面所に行ってみるときちんとバスタオルやタオルが置いてあった。シャワールームとトイレと洗面台は全てガラス張りで仕切られて綺麗に掃除がいき届いていた。私は日本でヒョンさんがうちに泊まった時の事を考えていた。

“あ~。あの時ヒョンさん我慢してたんだろうな〜!畳の部屋で3人で川の字のそれも雑魚寝状態!すまね〜!絶対寝れてないわ”私は凄く申し訳なさを感じた。

 部屋にはちゃんと私のキャリーケースが置いてあった。ひとまずシャワーを浴びた。ちょっと遅くなってしまったので、星さんにはLINEをいれた。息子達からもLINEがきていて

”俺等は全然大丈夫だから。電話して来なくて良いからね!楽しんで“とあったので無事を伝えるためにスタンプで返しておいた。

 私は喉がかわいてしまった。Tシャツ、短パン、すっぴんメガネだったので外の音に耳をすませて音がしない事を確認して台所に向かった。

”良かった!誰もいない!“私はウォーターサーバーから水をくみリビングのソファに座った。部屋が暗かった事もあり外の景色が最高に綺麗だった。シャワーのせいで眠気も飛んでしまっていたので、暫くボーっと夜景を見ていた。

“最高の旅行になった!皆優しくて良い人でご飯も美味しくて。なんて素適な家族なんだろう!私も家族に会いたくなったわ!星さんもヒョンさんも本当にありがとう。こんなおばちゃんに夢見せてくれくれて。私もヒョンさんの事、大好きよ!恥ずかしくて言えないけどね”と皆に心から感謝をした。ヒョンさんへの本当の思いもわかっていた。”歳を考えなさい!身分違い!“美女と野獣”もとい“スターとおばちゃん”なんだから“と私はもう一度その気持ちに蓋をした。

 そろそろ寝ようと立ち上がろうとした時に後ろから抱きしめられた。

『眠れない?僕も眠れない』ヒョンさんだった。そのまま隣に座り私の手をとって一生懸命日本語で話してくれた。

『みきさんは僕の事好き?』直球できた。

『好きですよ。友達だから。友達になってくれてありがとう』本当は友達としてじゃないけどね!

『僕は友達じゃない。ずっと会いたかったし淋しかった。みきさんに会えて本当に良かった。帰らないで』ヒョンさんが抱きしめてきた。温かかった。身体も気持ちも温かく感じた。最高にうれしかったが本当の気持ちを伝えられたい歯がゆさに涙が溢れた。私は見られたくなかったので暫くそのままヒョンさんの背中をポンポンしていた。

 ヒョンさんがポツリと言った

『사랑해』この韓国語はわかってしまった。”愛してる“。辛かった。“私も愛してる”と言えない自分が悲しかった。私がそんな事を言ってはいけないとわかっていたからだ。

『고마워.(ありがとね)』私は精一杯明るく言った。すると次第に私の肩が濡れてくるのを感じた。”泣いてる?“

私はヒョンさんの顔を見ようとしたが、それを拒むように更にきつく抱きしめてきた。辛かった。私も大泣きしたい気持ちだったから。私は

『괜찮아. 괜찮아.(大丈夫、大丈夫)』

と、頭を撫でていた。

『사랑해(愛してる)』ヒョンさんが顔をあげて私を見た。泣いていた。綺麗な涙だった。私も涙がこぼれた。自分の気持ちの蓋がポンと外れた音がして

『저도 사랑합니다(私も愛してます)』

つい言ってしまった!でもその外れた蓋を戻そうとしたがなかなか戻す事が出来なかった。涙がどんどん溢れて止まらなくなっていた。自分にもなぜこんなに涙がでるのかわからなかった。

 ヒョンさんは私の涙を優しくぬぐい笑顔で私を抱きしめてくれた。私もヒョンさんをギュッと抱きしめた。そして優しいキスをした。

 年甲斐もなく恥ずかしかったが、自分の心が温かくなるのを感じて幸せだった。家族といる幸せ感とは別のどこか懐かしい幸せ感だった。

 私達は静かに夜景を見ていた。沈黙は嫌いだったが言葉を交わさなくてもなぜかどこかで通じている安心感があった。

 “神様!今だけ!今だけは夢を見させて下さい!”と、心の中で繰り返した。

 ちょっと気持ちが落ち着いてきた私は”部屋が暗くて良かった〜“と安堵していた。するとヒョンさんが

『一緒に寝てもいい?』と囁いた。

『안돼(だめです)』私が答えると

『ただ、そばにいるだけ』とだだっ子のような目で訴えかけた。私はその澄んだ目にこれ以上だめとは言えなかった。

『정말? 약속(本当?約束)』私は小指を出してみせた。ヒョンさんは私の小指に小指を絡ませてキスをしようとしたが、お互いのメガネが“カツン”とあたった。二人はお互いを見て吹き出してしまった。

 ”ドラマのようにはいかないね“と笑いながら、私達はまたキスをした。

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