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たかが女、されどおばちゃん

 家の中に入ると、とてつもなく良い香りが私を包んだ。

私のお腹が突然暴れ出すのを感じた。奥へ進むとお母様が笑顔で出迎えてくれた。“癒やされるわ〜”心から思った。

 その時ヒョンさんの携帯が鳴った。ヒョンさんは先程までの穏やかな顔から仕事?の顔になっていた。

私は手を洗い台所に向かった。そして翻訳機でお母様に言った

『お手伝いさせて下さい。韓国料理教えて下さい!』お母様は笑顔で頷き私は手伝いをする事にした。

既にほぼ出来上がっているようだったが台所の隣にあるパントリーに案内された。そこにはお店にあるアイスクリームの小さい版の冷凍庫みたいなものがありその中にはキムチが入っていた。昔は年末にたくさんキムチを漬けるのが年中行事だったらしいが、最近は少しずつ自家製キムチを作っているそうだ。

”私のぬか漬けと一緒だなー“と思っていると味見をさせてくれた。

『맛있다!(おいしい!)』私は叫んでしまった。そして言った

『キムチの作り方教えてもらえませんか?』お母様が笑顔で頷いた。気づくと台所の椅子に座り私とお母様のやりとりを穏やかな笑顔で見つめるヒョンさんがいた。 

『ん?』と私が見ると

『かわいい。大好き』と私に返してきた。横を見るとお母様も私に笑顔で微笑んだ。

”二人共だめじゃん!惚れてしまうやろ〜!“ドキドキする中、冷静を装い手伝いを続けた。

 お母様の料理はすごかった。種類も半端なかった!かなり大きいテーブルに料理で埋まるぐらいの種類があった。私達は乾杯をして宴を始めた。

 しばらくするとジオンかんが戻ってきた。私達は2回目の乾杯をした。私はずっと不思議に思っていた事があり聞いてみた。

『ジオンさん。何でお酒を飲む時に必ず横を向くんですか?口隠すし。韓流ドラマで見たことはあるんですけど、本当にやってる!って思って。私もやった方がいいんですかね?』ジオンさんが笑って言った

『これは韓国式の目上の人に対しての礼儀作法。敬意をはらっていますみたいかな。みきさんは気にせずに飲んで下さいね〜』、私はすぐに言った

『お母様!すいません。知りませんでした!』と頭を下げた。それを見たジオンさんが私に

『だけど、家族とか友達同士とかはないんで気にしないで下さいね』ジオンさんが言うとヒョンさんも頷いた。なので私も

『ヒョンさん!친구!(友達!)친구!だからNOね!』必死に訴えた。日本語と韓国語と英語!かなり酔っているようだった。

 そのうちお母様がお疲れのようだったので先に休んで頂いた。そして3人で話しをしながら飲み続けた。ジオンさんが唐突に聞いてきた。

『みきさんは、お付合いしてる人とかいるんですか?』直球がきた。

『離婚後は一度お付合いした人はいましたけど別れました。今はいませんよー!もうこんなおばちゃんと付き合いたいと思う人いませんよ!息子達が聞いたら”キモっ!“って言われるだけだし。ヒョンさんとかジオンさんみたいにカッコよくて美人さんなら別ですけどね〜!』私が話すとおもむろにヒョンさんと何やら韓国語で話しだした。慌てて翻訳機で翻訳しようとしたが酔ってるせいか、スマホの操作を何度も間違えてるしまつだった。“こりゃだめだ!”私は開き直ってあまっていたチムゲタンと焼酎を飲み干した。

 なんだかんだと楽しい時間はあっという間に過ぎていた。

 ジオンさんは明日仕事があるとの事だったので帰る事となり、私達は3人で後片付を終わらせた。

私とヒョンさんはジオンさんを下のロビーまで送って行く事にした。皆かなり酔っていたこともあり、静かなロビーに私達の大きな笑い声が響き渡っていた。

 ジオンさんは別れ際私にハグをして耳元で囁いた

『みきさん!自信もって。みきさんの事、私も大好きですよ!お兄さんをよろしくお願いします!』ん?よろしく?驚いているとヒョンさんにもハグをして外に待っていた車に乗り込み笑顔で手を振って去っていった。私は暫く良くわからないまま手を振り続けていた。

 するとヒョンさんが私の肩を抱きよせながら”行きましょう“と促すようにエレベーターに乗り込んだ。

 ヒョンさんは何かを考えているように沈黙だった。

『괜찮습니까?(大丈夫ですか?)』と私が聞くと黙って抱きしめられた。

『いいえ!だめです!』と答えが返ってきたので焦った。思わず日本語で言ってしまった

『吐く?』私の必死さを感じとったのか、ヒョンさんがいきなり笑い出して

『そういうみきさんが凄く好きです』と言うとおでこにキスしてきた。私はわざと冷静に

『감사합니다(ありがとうございます)』と笑顔でかえした。

 本当は心臓がバクバクで、ゴジラのように口から火が出そうなぐらい身体が熱くなる感覚に襲われていた。

 “これは友達としての挨拶なんだ!こんなおばちゃんを好きになるはずが無い!宇宙人みたいなおばちゃんがもの珍しいだけなんだ”と私は必死に好きになりそうな気持を抑えて、抑えて、そして抹消した。

 なぜか頭の中で”贈る言葉“の音楽が流れた。あまりにも場違いな選曲の思考回路に、思わず笑いそうになり下を向いた。

 そして最上階に到着した。

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