やさしさ
会場は大盛りあがりだった。彼が何かを話す度に歓声があがっていた。涙を流している人もいた。
さすがスターだな!かっこいいわ!まるで別人だった。
いつの間にか周りに流されたのか、ニヤけて舞台を見ている自分がいた。さすがに“キャー”はない!
しばらくすると汗を拭くためか衣装のポケットからハンカチを取り出して握っていた。
”ん?あれ?私があげたやつ?“
その時彼が会場の皆に話をしながら笑顔で左右に歩き出した。
私達の前に来ると立ち止まり汗を拭いた。そしてこちらにウインクしてまた中央に戻った。
“ん?ウインクした?わざとハンカチ見せた?舞台からみえるの?”
疑問で頭に?マークが浮かんでいるのに星さんが気付いて私に言った
『私達の席わかってるんですよ。だから今挨拶しに来たんですよ!』
なるほど!そう言う事か
『彼が持ってるハンカチなんですけど、さっき私があげたやつでした。使ってくれるなんて粋な事しますね!』と笑顔で言った。すると彼女は
『優しい人ですよ!ファンの方はもちろん、関わる人全員に親切なんです。だから今だにファンが多いと思います』彼女は笑顔で答えた。
”モテないわけないな!気遣い凄すぎるわ〜、皆好きになっちゃうよ!“
その後も何度かこちらに来ては、笑顔で視線をくれた。私も何か返そうと周りに視線を向けると、隣のファンの方が手でハートマークを送っていた。
“よし、これだ!次に来た時にやってみよう!”と、心に決めた!
だが、なかなか恥ずかしさが先に立ってしまい行動に移せない。手を振るのが精一杯。
”旅の恥はかき捨て“だ!などと考えていると
『どうしました?ご気分悪いですか?』と星さんが顔を覗き込んできた。
『あっ。大丈夫です。ハンカチ使ってくれたお礼に何か出来ないかなと考えていて…周りの方が手でハートマークを送っていたので私もやろうと思ったんですが恥ずかしくてなかなか出来ない。』彼女は笑いながら
『じゃあ、次に来た時にいっせいのせいでやりましょう!やるんだったら大きいのにしましょう』と提案してくれた。
『大きいの?』私が質問すると彼女は見本を見せてくれた。
”あ~!おさるさんみたいなやつね“
私はOKサインをして彼がこちらに近づいてくるのを待った。人は待っているとなかなか来ないものだ!
質問大会やドラマの再現などずっと会場は大盛りあがりだった。
すると今度はヒョンさんが歌を歌うらしかった。ファンの方は彼が歌が上手なのも知っているようだった。
歌いながら彼が近づいて来た。
『いきますよ!いっせいのせい!』
私達は笑顔で大きなハートマークを作って見せた。気付いたらしい!なぜなら、吹き出しそうになったが上手く咳払いしたようにごまかしたからだ。成功!だけど笑う?すると
『ヒョンさん今笑っちゃいましたよね』と星さんが笑いながら言った
『笑うとこですか?猿みたいだったのかな』二人で笑ってしまった。
そして大盛況のファンミーティングは終了した
『今日はありがとうございました。いい経験が出来ました。ヒョンさんにも、ご招待感謝しています。楽しく幸せな時間でしたと伝えて下さい』星さんに伝えて帰ろうとしると、
『会ってから帰られませんか?』と引き止めてくれた。でも、この会場に来てヒョンさんがどれだけの人に愛されているかわかって、自分みたいなおばちゃんが近くにいる事が相反している事を悟っていた。
『三男坊も待ってるし、たぶんもの凄くお疲れだと思うのでここで失礼しますね!素適な時間をありがとうございました』私はお辞儀をして首から下げてたストラップを返して会場を後にした。
帰り道の電車の中で考えていた
“たぶん、もう二度と会うことはないかもしれないな〜!きっと頑張ってきたご褒美に神様がくれた思い出だったのかもしれない!感謝!これからは陰ながら応援しまーす!”
”しまった!写真とサインもらうの忘れたわ!“
一人電車のなかで笑いそうになった。
そして二人の優しさに感謝しながら、いつの間にか眠りに落ちていた。




