ケンカ!
帰りの車の中は静かだった。うちに帰るとお母様がテレビを見ながらお茶を飲んでいた。息子がお母様に頂いたケーキを差し出して『おばあちゃん食べて!超美味しいよ!』と翻訳機を使って言った。お母様も嬉しそうに箱を覗き込んで『ありがとう!どれが美味しい?』と聞いたりと微笑ましい光景を私とジオンさんは見ていた。すると、ヒョンさんは一人寝室に入って行った。”ん?どうした?疲れちゃったのかな“と私は思って、皆にお茶を入れてテーブルに置いた。そしてヒョンさんのお茶を持って寝室のドアを叩いて『お茶持って来たよ』と言った。中から『入って』と低い声が聞こえて私は中に入った。彼はベッドに座ったまま窓の外を見ていた。私は『お茶ここに置いておくね!ケーキもともに食べられないようにとって置くからね!』と部屋を出ようとした時に彼が私の服を引っ張った。私は驚いて『どうした?』と英語で聞いた。彼も英語で『座って』と私をベッドに座らせて言った。『さっき、キム社長に何を言われたの?何だか嬉しそうだったけど…』とちょっと怒っているようだった。私は“え〜!ヤキモチ?”と怒っている意味が解らなかったので聞いた。『え?何か怒ってるの?』と言うと彼は『キム社長に怒ってるのと、みきを社長に会わせて後悔してる!』と言った。『なぜに、後悔してるの?』と聞くと『キム社長と君がお似合いのカップルに見えたし、君も楽しそうに見えたから』と言った。私はおかしくなり、つい笑ってしまった。『何で笑うの?そんなにおかしい?』とかなり怒り口調で言った。ドラマでは見た事あるけどプライベートで見たのは初めてだった。私は『ごめん!おかしくないけど、笑える』と言って続けた。『お似合いに見えたのは年齢が同じだからでしょ!楽しく話が出来たのはあなたやジオンさんやともが一緒にいたからだよ!2人で話しても楽しくないよ!それに、私がさっき社長さんに言った事に嘘は無いよ!もう私はこんな年齢だしあなたが最後の人だと思ってる!最後の人があなたで良かった!って今は心から思ってるよ!信じてなかったの?私があなたの気持ちを受け入れるのにどれだけ悩んだか知ってるでしょ?』と私もだんだんと頭にきて彼にかなり強い口調で言った。彼も私が怒っているのを初めて見たかもしれない。でもそんな事はどうでも良かった。ただ、自分を信じてくれてなかった事が悔しかったのと、逆の立場だったらと思うと自分も不安になると改めて気付かされた事に自分自身にもムカついた。私は大きく深呼吸をして彼を抱きしめて言った。『ごめんね!信じてね!大丈夫だから!それに、帰りに社長さんが言ったのは”これからは、みきさんが彼を支えて下さいね!彼に出逢ってくれてありがとう“って言われたのよ!でも、ごめんね!不安にさせて。』とゆっくり言った。彼は私をギュッと抱きしめて『僕の方こそごめんね!信じてない訳じゃないんだ。ただ、キム社長は凄い器の広い人で尊敬してる。ずっと一緒にやって来たから性格も知ってる。だから、彼が君に会って好意を持つのもわかってた。プロポーズした時は本当に不安だったんだ!君の心が彼に向いちゃうんじゃないかって。本当にごめん!』と彼は正直に話してくれた。私は彼を見て彼の髪をクシャクシャとして『ヤキモチ妬いてくれたんだね!ありがとうね!でも、あなたが向こうに行ってくれ!って言ってもあなたが開けない限り、もう死ぬまで開けられない鍵を心にかけちゃったから、私の心は動かせないよ!どんなに素敵な男性が来ても全然響かないしビクトもしないから!心配ご無用!』と笑いながら言った。彼も私の頭をトントンして『僕は生まれ変わっても、間違いなくキム社長より先に君を探し出してプロポーズするよ!冗談じゃなくね!』と笑顔で言って指切りをした。『次に会う時はもっと若い私を見つけてね!約束ね!』と私も彼に笑顔で言った。そして私は『もうケンカは終わり!はい、仲直り』と彼に軽くキスをした。彼もキス返しをして『愛してる!ずっとね!』と笑顔で答えた。『あ~!ケーキ無くなっちゃうよ!行こう!行こう!』と私が韓国語で言うと彼も『行こう!行こう!』と韓国語で言って、持って来たお茶を持ってドアの前で髪を直して皆の所に行った。ジオンさんが『ケーキ無くなるよ!とも狙ってるから!』と笑いながら言った。見ると5個あったケーキが2つになっていた。『とも〜!あんた幾つ食べたの?』と私が聞くと『ここでは1個だよ!ちゃんと残ってるでしょ!食べたら母に半殺しにされると思って残しといたし!』とソファに座ってスマホをいじりながら言った。“はー?4つは食べてんだろ〜!”と呆れた。すかさずヒョンさんが『母、怖いよ〜』と笑いながら日本語で言った。息子は驚いたように振り向いて『ヒョンさん!やっとわかってくれた?半殺し!半殺しだよ!わかる?』とヒョンさんに同意を促したがヒョンさんは”半殺し“の意味がわからないらしくジオンさんを見た。ジオンさんはヒョンさんに『반죽음(半殺し)』と伝えると納得したように頷いた。私は“納得すな!”と思いながら彼等を見ていた。すると、ジオンさんが『食べ物の恨みは恐ろしいのよね!お姉さん?』と笑いながら言った。私は『その通り〜!』と頷いた。そして残っていたケーキに目をやると違う種類のケーキだったので、ヒョンさんに『どっちが良いか、セーノで指差して』と伝えて指した指が同じケーキを指した。私は『よし!じゃんけんね!』と我が家恒例のじゃんけん勝負をする事にした。すると息子がソファからやって来てヒョンさんに耳打ちをした。私は、”は〜!母が初めに何を出すか教えたな!バカめが!“と内心思いながら、じゃんけんをした。『じゃんけん、ポン!』。母がパーでヒョンさんが変なチョキ!“負けた〜”と私は何だかショックで固まった。すると息子が『イェ~イ!ね!勝ったでしょ!』とヒョンさんとハイタッチをした。私は『え〜!なんで?』と聞くと『母さ毎回初めにグーだすやん!でも俺がヒョンさんにグー出すよ!って言ったと思うと思って裏をかいたの!ここの差!』と自分の頭を指さした。そして続けて『ねえ、ヒョンさんのチョキおじいさんのチョキじゃね?』と言った。ジオンさんが笑いながらヒョンさんに通訳すると、『え?本当?』と私に聞いた。私は『日本は大体ピースかな!たまにおじいさんとかヒョンさんのこれ出す人もいる』とピストルの手をした。ヒョンさんは”え〜!“と感心していた。そこにお母様が新しいお茶を笑顔で持ってきてくれたので私達は『ありがとうございます』とお礼を言ってケーキを一口食べた。そして一言ヒョンさんが言った。『じゃんけんは弱いんだね』と。そして全員が笑った。




