ドラマのような?
昼食を終えて皆それぞれマッタリと過ごしていた。ソファでは息子とジオンさんが何やら携帯を見ながら大爆笑していた。ダイニングではお母様とヒョンさんが何やら韓国語で話しをしていた。私はそんな彼等を見ながら“あ~!何だか怒涛の日々が続いた気がする”と、ただボケ~とその光景を眺めていた。確かに自分がいつ韓国に来たのかさえ忘れてしまう。これまでの人生でこんなに波乱万丈の旅行はなかった。でも思う。私には楽しい忘れられない旅行となった。そんな私に気が付いたヒョンさんが『何か楽しい事でもあった?』と聞いてきた。『え?何で?』と私が聞くと『だって笑顔だから』と彼も笑顔で言った。『うん。何かこの旅行って波乱万丈だったけど楽しかったな〜!って考えてたの』と私はお母様にもわかるように翻訳機を使って言った。お母様は私が言った言葉に驚いたのか『もう韓国が嫌になったかと思ってた』と言った。私は『いいえ!全然思ってないですよ』と笑顔で答えた。するとヒョンさんが私の頭をトントンしながら『母さん!これが彼女なの。だから僕は彼女とずっと一緒にいたいと思ったんだよ。母さんもわかるでしょ?』と笑顔で言ってお母様も笑顔で頷いた。私は何だか恥ずかしくなって『普通ですから』と彼の手を頭から外してお茶を一気飲みした。すると彼の携帯が鳴った。マネージャーさんからのようで、”今から私も一緒に来れないか?“との事だった。1時間後に迎えに来るらしかった。
私はヒョンさんに『こんな格好しかないんだけど大丈夫かな?』と聞くと、彼は笑いながら『全然大丈夫だよー!可愛いよ』と言われた。”可愛いって!“と私は年甲斐も無く恥ずかしくなった。程なくしてマネージャーさんが迎えに来た。ヒョンさんと息子、私とジオンさんも通訳として一緒に来てくれる事になり私達は事務所に出発した。事務所は大きなビルの中にあった。ヒョンさんとマネージャーさんは先に事務所のあるフロアに向い、私達はひとまずロビーで待つ事になった。ジオンさんと息子は先程の続きなのか、二人で携帯で何かやっていた。私はただ緊張していて周りをキョロキョロと眺めていた。すると、たくさんの荷物を持ったキャップを被ってマスクをしたおじさん?が歩いて来たかと思うと紙袋が一つ破けて中の物がバラバラと床に散らばった。私は息子達にちょっと手伝ってくると伝えておじさんの所に向かった。近くに人はいたのだが誰も手伝おうとはしなかった。“何て薄情な人達なのよ〜”と思いながらバラバラと落ちた物を一緒に拾った。『ありがとうございます』とそのおじさんは笑顔で私に感謝を述べた。私は『全然大丈夫ですよ』と韓国語で伝えた。そのおじさんは物を拾いながら『あれ?韓国の方ですか?』と聞いてきたので『いいえ!日本人です。韓国語変ですよね!』と笑った。そして『ちょっと待ってて下さい』と私は急いで自分のカバンに入っていたエコバッグを持ってきておじさんに渡した。『袋破けちゃったから、使って下さい』とおじさんが手にいっぱいになった物を入れるように促した『ありがとう。助かります』とエコバッグに入れた。私は『このカバンあげます。返さなくて大丈夫です。』と笑顔で伝えた。そして私達はエレベーターまで向かった。エレベーターを待っている時におじさんが『韓国語お上手ですね。ご旅行ですか?』と聞いたので『はい。いろいろありましたけど、楽しんでます。』と私は腕を見せて笑顔で言った。おじさんはちょっと驚いて『大丈夫ですか?』と心配してくれた。私は『全然大丈夫です。ご心配ありがとうございます』と笑顔で答えた。おじさんは私のエコバッグから可愛らしくラッピングされた小さな巾着のような物を出して私に差し出した。私は『大丈夫ですよ!』と言ったがおじさんは笑顔で『貰って下さい』と私にくれた。『すいません!ありがとうございます。』と私は笑顔で頂く事にした。エレベーターが来て『もう大丈夫です。ありがとう』とおじさんは笑顔でエレベーターに乗り込み行ってしまった。私は別に大した事もしていないのに…と少し申し訳ない気持ちで閉まったエレベーターの前で進んで行く数字をただ眺めていた。すると、隣のエレベーターが開いてヒョンさん達が降りてきた。彼は私がエレベーターの前に立っていたので、驚いて『みき!どうしたの?』と私の顔を覗き込んだ。私は『いや!特に何も無いよ』と笑顔で答えた。彼は不思議そうな顔をしていたが直ぐに『行こうか』と言った。私はジオンさん達を呼びに行き皆で事務所に向かった。エレベーターの中でマネージャーさんから、ストラップを渡され首にかけた。エレベーターは15階で停まった。ドアが開くと目の前に大きな社名があり受付けに綺麗な女性が座っていた。彼女は立ち上り私達にお辞儀をして挨拶をしてくれた。笑えるのが誰よりも先に息子が”カムサハムニダ~“と元気に挨拶をした。ジオンさんと私は笑いをこらえながら挨拶をした。少しの間受付けの前にいたがその女性が内線で誰かと話した後に“奥へどうぞ”と促した。そして私達はマネージャーさんの後について奥の方へと歩いて行った。途中にはかなりの人達がデスクで仕事をしていたが、私達が通る時には皆笑顔で挨拶をしてくれた。“あ~!素晴らしい職場だわ”と感心した。なぜらな、見る限りほとんどの方が忙しい中にもどこか楽しそうに仕事をしている雰囲気がしていた。ヒョンさんも気さくに皆に挨拶をしていた。私はフッと若かりし頃の自分を思い出していた。医療系の専門学校を卒業生して直ぐに救急病院に就職したがあまりの過酷な業務に胃痙攣をおこし、胃にポリープが3個も出来て自分の職場に入院し退職。その後全く違う職種のスポーツ用品小売業のちょっと大手に中途採用でラッキーな事に入社し、店舗ではなく本社配属になった。その時の職場の雰囲気に似ていた。そんな事を考えていると一番奥の扉の前まで来た。マネージャーさんが扉を叩くと奥から男性の声が聞こえた。マネージャーさんが扉を開けてくれて私達は順番に中に入った。そしてマネージャーさんが『社長です』と紹介してくれた。私は社長と聞いて、小太りでちょっと偉そうな感じを想像していたが全く正反対だった。スラッとしてキチッとスーツを着ていて、ダンディな感じで優しそうな方だったので面食らった。すると、社長さんが私の前まで来ていきなり私の手をとると『あなたでしたか!』と笑顔で言った。私もだが皆一様にその状況を理解出来ずにいた。私も何の事かわからず『すいません、失礼ですが何処かでお会いしましたか?』と尋ねた。社長さんは”先程、ロビーで!“と言って思い出した。私は思わず『え〜!』と声を上げてしまった。『先程は本当にありがとうございました!社長のキムです』と握手をしながら言った。私も笑顔で『山田三紀と申します。気付かずに失礼いたしました』と韓国語で言って軽く会釈をした。私はまじまじとキム社長を見て“Tシャツに短パンにキャップにマスクじゃ、わかんないよ〜!違い過ぎるよ〜!”と思っていた。そしてまた、”キムさん“が多い事に驚いた!




