初体験!
私達はお母様の作ってくれたお粥を食べて、私は領事館に連絡を入れた。家の前に記者がたくさんいる事を伝えると領事館の方が迎えに来てくれる事になった。テレビでは事件のニュースにプラスして例の女性のインタビュー動画も流れていた。テレビで見るとかなりの美人さんで“流石韓国の女優さん”て感じだった。待ってる間息子も一緒にテレビを見ていたので彼に『ヒョンさん!この人整形?』とテレビを見ながら息子が聞いた。『整形だよ!』と普通に言ったので少し驚いた。『だろうね!』と息子も普通に言った。そして私に『母もやったら?』とこれまた普通に聞いたので『今さら?』と言うと『だよね~』と答えた。”だよね~!だったら聞くんじゃないよ“と内心ムカついた。すると領事館の方がマンション下に到着した旨の連絡が入ったので駐車場のゲートを開けて中に入ってもらった。私達は慌てて下に降りて行くと、スモークガラスが貼られた白の乗用車が停まっていた。中から40代ぐらいの優しそうな男性が降りてきて日本語で『はじめまして。山田さんですか?領事館の林です。この度は大変でしたね!お怪我の方は大丈夫ですか?』と名刺を渡された。『山田三紀と申します。怪我は大した事ないです。今日は息子とヒョンさんも同行させて下さい。よろしくお願いします。』と頭を下げた。林さんは韓国語で『はじめまして。林です。テレビで拝見しています。お会い出来て光栄です。』とヒョンさんと握手をした。そして『はじめまして。お母様大変だったね。』と息子とも挨拶をしてくれた。そしてこれからの事を説明されてまずは警察に向かう事になった。運転手の方と林さんは前列で私達は後部座席に座った。ゲートが開くと案の定たくさんの記者が待っていたが、この車に私達が乗っている事は気付かれなかった。警察に到着すると、林さんが全て話しをしてくれて私達は奥の部屋に通された。そこは大きめの会議室のような所だった。内心ちょっとドキドキしていた。テレビで良く見る取り調べ室みたいな所に通されたらどうしようと思っていたからだ。中には私服の警察官の男女と制服を着た警察官の3名が私達を待っていた。3人から名刺を渡されて話は始まった。制服の警察官は日本語で私に話しかけてきた。私はひと通りの詳細を話したが、昨日話した内容とほぼ同じ事を話した。ヒョンさんにも話しを聞いていて内容はイマイチ解らなかったが、突然驚いたように息子を除いた全員が一斉に私を見た。“え?何?”と林さんを見ると私の耳元で『ヒョンさんの婚約者だったんですか?』と聞いてきた。”あ~ん!そうだよね!そりゃ驚くよね!でもそんなにあからさまな表情しなくても良くない?“と思いながら『はい!』と小声で言った。それからも警察の方々は私が緊張しないように気をつかっていたのか、笑顔で話しをしてくれていた。その後、林さんと警察が何やら話しをしてから、林さんが『殺人未遂事件になりますので、示談交渉はないです。この後山田さんから被害届を受理して起訴となるそうです。そして裁判を経て判決が出る予定です。』と説明してくれた。そして林さんが手伝ってくれて被害届を書き終り病院でもらった診断書を渡した。私はもっと時間がかかるものだと思っていたが、案外早く終わったので拍子抜けした感じだった。私達は裏口から駐車場に行き今度は領事館に向かった。車の中で息子が『マジで緊張したわ!マジックミラーがあるような取調べ室みたいな所でやると思った。母も思わなかった?』と聞いてきたので『ちょっと思った』と答えた。林さんは笑いながら『犯人じゃないんですからそれはないですよ!でも、あんな会議室みたいな所に通されたのは初めてです。』と笑いながら言った。ヒョンさんは息子の翻訳機で会話を聞いていたのか笑いながら『テレビの見すぎだね!』と息子に言った。程なくして領事館に到着して門の所で身分証明書の確認をされて中に入った。見た目はそんなに綺麗ではなかったが中はなかなか綺麗だった。私達は入口で手荷物検査を受けて中に入って行った。通されたのは総領事の部屋だった。ドアまで来てくれた人は50代ぐらいの男性で、言っては悪いが普通のおじさんだった。ソファに通されて秘書の方がお茶とお茶菓子を出してくれた。そう言えば荷物検査の時に私のスマホ以外は預けていたので、林さんがヒョンさんの通訳的に私達の日本語を通訳してくれていた。楽しく会話は続いた後に今後の事について伝えられた。まず、韓国警察より感謝状が授与されるらしい事と、あちらの弁護士との窓口になる人、裁判の事、日本での通院費の支払い方法など何とも大変そうだった。ただ幸いな事に韓国は90日以内の滞在ならビザはいらないので、行ったり来たりするには楽だった。林さんが韓国側との窓口になっていろいろ代行して頂けるとの事だった。そして私は『私達はいつ帰国出来るんでしょうか?』と聞いた。総領事は『明日には感謝状が出るそうなのでその後だったら大丈夫ですよ。息子さんも学校がありますからね。そうだ!大事な事を聞くの忘れてました。感謝状の授与式なんですが、これだけの事件なので取材やカメラの前でになりますけど、大丈夫ですか?』と聞かれた。私は暫く考えているとヒョンさんが『出来ればカメラ無しでお願い出来ませんか?彼女の顔がわかってしまうと、今度は彼女に何かあると怖いので!』と話した。私も『出来ればそうして頂きたいです。』とお願いした。総領事は『大丈夫ですよ!そうですよね!配慮に欠けました。すいません。私からは警察の方へ伝えておきます。』と笑顔で答えて息子を見ると物欲しそうにお茶菓子を見ていた。『食べて良いですよ』と総領事が息子に言うと『いただきます!』とすぐに飛びついた。私達は思わず笑ってしまった。その後、委託の為の書類などにサインをしてひと通り終了した。昼食に誘われたがこの後の予定があったので、丁重にお断りをして家まで送ってもらった。マンションの前にはまだ数人記者が待機していたが、またもや気付かれずに中に入る事が出来た。一緒に送ってくれた林さんは『大変なご旅行になっちゃいましたね!これに懲りずにまた遊びに来て下さい。次回は皆さんをお食事にご招待しますので。それでは、お大事になさって下さい』と笑顔で挨拶をして帰って行った。すると息子が『あ~!マジで腹減った。倒れそう!』と言ったので、ヒョンさんが『そうだね!僕もお腹すいたー!何食べようか?』と私と息子の肩を抱いてエレベーターに乗り込んだ。




