第二話 饒舌にからあげを語る小鳥遊さん
転校から数日が経った、とある昼休み。
今日から通常授業が始まるので、母親からもらった昼食代でパンを買おうと購買部に向かっていたはずだったのだけれど──
「しまった。完全に迷った……」
だれもいない廊下を一人でぽつんと立ち尽くしながら、辺りをきょろきょろと見回す。
「まいったなあ。上坂くんの話だと、特別校舎の一階にあるはずなんだけど……」
特別校舎とは、本校舎の裏手にある別の校舎のことで、今は間違いなくその特別校舎にいるはずなんだけど、そばの窓から見える景色は一階のそれではなかった。
というか、どう見ても二階にいた。
「どうしてこうなった……」
いやほんと、どこをどうしたら二階に着いてしまうのだろう。小さい頃から方向音痴で、この高校だって最初は何度も下見に来ないとまともに到着できないほどではあったけれど、まさかここまでポンコツだったとは自分でも思わなかった。
「こんなことなら、地図でも書いてもらった方がよかったのかも……」
いやでも、それもなあ。
まだそれほど親しくもないクラスメートに、まるで初めてのおつかいに行く幼児みたいな真似をするのは少し勇気がいるというか、率直に言ってものすごく恥ずかしい。
とはいえ、このままだと一向にパンが買えないし、それどころかこの先もずっとこんな感じで迷っていたら、さすがに今後の学校生活に支障が出る。
親が共働きで弁当を作る余裕がなく、ぼくはぼくで料理スキルが皆無に等しいので、購買部のパンが買えないとなると非常に困るというか、最悪コンビニで売られている割高のパンで妥協しないといけなくなるのだけれど、余ったお金はそのままぼくの月々の小遣いになるので、できるだけ無駄な出費は控えたい。
「う~ん。いったん戻って、また上坂くんに訊いてみようかな。あ、でも上坂くん、友達のいるクラスで一緒に弁当を食べるって言っていたような……」
じゃあダメだ。よく知らない教室に一人で行ける度胸なんて、ぼくにはまだない。
かといって、まだ上坂くん以外に親しく話せる相手もいないし、これじゃあ完全に手詰まりだ。
「あ~。パンが食べられないと思ったら、余計お腹が空いてきた……」
空腹と不安が重なってか、さっきから独り言ばかり漏れる。こんなに独り言を口にしたのは初めてかもしれないくらいに。
「このままこうしていてもしょうがないし、チャイムがなる前に戻ろうかな……ちゃんと教室に戻れるのかどうかも怪しいけれど」
と自虐めいたことを呟きつつ歩みを再開した、そんな時だった。
「──美味しい!」
不意に聞こえてきた、女性と思われる喜色に満ちた声。
それは目の前の廊下……それも一番奥にあるどこか辛気臭い感じの教室から聞こえてきたような気がした。
なにが辛気臭いかって、廊下側の窓に大木があるせいか、陰が出来て日当たりが悪いし、その大木の枝にカラスが十羽近くいるせいでそこはかとなく不気味だし、なにより大木の背後に広がっている墓場のおかげで、今にもなにか出そうだった。
そんないかにも心霊現象が起きそうなところから聞こえてきた場違い感のある溌剌とした声に、ぼくは生唾を呑みつつも誘われるようにひっそりと足を運ぶ。
今は昼休み。そしてさっき聞こえた声からして、だれかが昼食を取っているのだろうけれど……。
「でも、なんでまたあんなところで……?」
もしかして、ぼっち飯とか?
だとしたらそっとしておくべきなのかもしれないけれど、まるで寂しさを感じさせない元気な声音に、どうしてもどんな人が食べているのか、気になってしまったのだ。
なので、正直申しわけないと思いながらも、好奇心に突き動かされるまま件の教室に向かってみると、
「ほんとにめっちゃ美味しい! まんまあの店で食べたものと同じや! お母さん、ほんと天才! 一度食べただけでここまで再現できるなんて、うちには絶対真似できへんで。うちももっとたくさん食べて作って勉強せなあかんね!」
なんか、一人でめちゃくちゃ喋っている人がいるな……。
ちなみに、今の言葉にだれも反応する人はいなかった。
ということは、やはり一人で食べているってことになるけれど、それにはしては異様に快活とした声に、ますますどんな人がこんな陰気臭いところにいるのだろうと内心ドキドキしながら教室の戸からそろりと覗いてみると──
「う~ん♪ 噛むたびに肉汁が溢れる~! このからあげ、最高やわ~! 今度自分でも作ってみよっと。あ、でも、せっかくやからアレンジも加えてみたいなあ。変えるとしたらやっぱり材料やと思うけど……」
そこには心底美味しそうにお弁当を──からあげを食べながら方言で喋っている銀髪美少女がいた。
ていうか、どう見ても小鳥遊さんだった。
「うそぉ……」
あまりの信じられない光景に、何度も目を瞬かせながら、教室の隅っこでお弁当を食べている小鳥遊さんを凝視する。
本当に、あれが小鳥遊さん?
クール&ビューティーを絵に描いたような、あの超絶完璧美少女の小鳥遊さんが?
それも教室ではいつも無口無表情の小鳥遊さんがあんな饒舌に──しかも幸せそうにご飯を食べるなんて、夢か幻でも見ているかのような気分だ。
実際だれかに話したところで、絶対に信じてもらえないだろうなあ。
最悪嘘吐き呼ばわりされて、クラスのみんなから爪弾きにされそうだ。
「というよりこれ、見たらまずいものだったんじゃ……」
声を押し殺しつつ、ゆっくり教室から離れようとして──
ぐ~、と不意にお腹が鳴ってしまった。
それも、けっこう盛大に。
やばっ! と慌ててお腹を両手で押さえた時にはすでに遅く。
冷や汗を流しながら、おそるおそる伏せていた顔を上げてみる。
小鳥遊さんが、真顔でこっちをガン見していた。
うん。ですよねー。
あれだけでかい音が鳴ったら、普通は気付くよねー。
さすがにこうなっては黙って逃げるわけにはいかない。ちゃんと釈明しなければ。
緊張で喉を嗄らしつつ、震えた手で戸をそっと開けて、ぼくは教室に足を踏み入れた。
「ご、ごめん。たまたまこの近くを歩いていた時に、ここから声が聞こえてきたものだから、つい……」
訥々と弁明しつつ、別方向に逸らしたままの顔でそっと小鳥遊さんの様子を窺う。
さっきとは違い、小鳥遊さんは真っ赤になっている顔を両手で隠しつつ、指の隙間からぼくをちらちらと見ていた。
うわー。めちゃくちゃ恥ずかしそう……。
いやでも、そりゃそうか。
一人教室でべらべら独り言を口にしながらお弁当を食べている姿なんて見られたら、普通はだれだってこうなる。一見クールそうな小鳥遊さんも、その例外ではなかったということなのだろう。
というか、小鳥遊さんに抱いていた当初の冷然とした印象は、ぼくの中ですっかり消え失せていた。
ひょっとすると学校の中ではあえてクールに演じているだけで、本当はとても感情豊かな人なんじゃないだろうか。
そして唯一この場所でだけ、本来の自分を存分に解放しているのかもしれない。
だとしたらこれって、ますます悪いことをしてしまったのでは……?
「ほ、本当にごめんなさい! このことはだれにも話さないから心配しないで! じゃあ、そういうことで!」
と何度も頭を下げてから早々に踵を返そうとして、不意に響いたガタンという椅子が倒れたような音に、ぼくは無意識に後ろを振り返った。
「小鳥遊、さん?」
そこには、あわあわと慌てふためきながらも、なにか必死に鞄の中をあさっている小鳥遊さんの姿があった。
それも、時折ぼくを呼び止めたそうに何度もこっちに視線を向けながら。
そんな小鳥遊さんを一人放っておくわけにもいかず、しばし所在なく立ち尽くしたあと。
「……ん? スマホ?」
どうやら鞄から取り出したかったのはスマホだったようで、なにやら素早い指捌きでフリック入力したあと、小鳥遊さんはスマホを自分の顔まで上げて、文字の書かれた画面をぼくに向けた。
『よかったら、私のお弁当を食べていきませんか?』
そんなこんなで、なぜか小鳥遊さんと一緒にお昼を過ごすことになったわけではあるのだけれども。
「……………………」
「……………………」
こんな感じで、お互いに沈黙が続いていた。
だって、まさか小鳥遊さんにお誘いを受けるとは思わなかっただし、ましてやこうして二人きりで対面するとは夢にも思わなかったので、色々と頭の整理が追い付かないのもあって、ずっと会話の糸口を掴めないでいた。
いや、前もってセッティングしてあったとしても、結果は変わらなかったように思うけども。
でもそれは小鳥遊さんも同じ心境だったようで、たまにぼくの方へ視線を向けながらも、すぐに目を泳がせて顔を俯かせるという動作を何度も繰り返していた。
たぶん小鳥遊さんも、この状況に緊張しているのだろう。
うーん。これはまずい。
気まずいのはもちろん、このままだと一言も発しない内に昼休みが終わってしまいそうだ。
そうなると、せっかくぼくを誘ってくれた小鳥遊さんの厚意を無碍にしてしまいかねない。
それは大変よろしくない。今の様子から見ても、きっと勇気を振り絞ってぼくを誘ってくれたに違いないのだから。
そんな小鳥遊さんの勇気に応えるためにも、ここはぼくから話さないと!
「えーっと………………た、小鳥遊さんはいつもここでお昼を食べているの?」
緊張で声が上擦ってしまったのを自分でも恥じつつ、思いきって口火を切るぼく。
対する小鳥遊さんは、一瞬ビクっと驚いたように肩を跳ねさせたあと、こくこくと何度も頷いて、
『はい。ここ、私のお気に入りの場所なんです。ここなら、人の視線を気にせずお弁当を食べられるので……』
ぼくを呼び止めた時と同様に、スマホで入力した文字をこっちに見せてくれる小鳥遊さん。
「あーまあ、確かにここなら、授業以外で人が来ることはないだろうね……」
だって、見るからに薄気味悪いし。
もしかして小鳥遊さん、オカルトとか平気な人なのかな?
「けど、よく入れたね。こういう空き教室って、普通は施錠されているはずなのに」
『去年卒業した先輩に、餞別としてこの教室の鍵を譲り受けまして。どうやって先輩がここの鍵を手に入れたかはわかりませんが、偶然お昼休みにここを訪れた際、快く招き入れてくれたんです』
ということは、去年まではその先輩とここでお昼を過ごしていたってわけか。
『それで折り入ってお願いがあるのですが、できればこのことは二人だけの秘密にしてもらえないでしょうか? 私自身、いけないことをしているというのは重々わかっているつもりではあるのですが……』
「あ、うん。そこに関しては心配しないで。絶対だれにも言わないから」
ぼくの返答に、小鳥遊さんは心底安堵したように胸を撫で下ろした。
小鳥遊さんにとって、それだけ大切な場所ってことなのだろう。
「あ。だからこうしてぼくを招き入れたの? お弁当をあげるかわりに、ここでお昼を過ごしているのを黙ってもらうために」
ぼくの質問に、小鳥遊さんは申しわけなさそうに──というよりは恥ずかしそうに頬を赤らめてこくりと頷いた。
『あの、ご迷惑でしたでしょうか? どこかへ急がれる途中だったとか……』
さっきのように文字を入力したスマホを顔まで掲げて見せてくれる小鳥遊さんに、ぼくはかぶりを振って、
「いやいや、そこは別に気にしないで。本当は購買部に行くところだったんだけど、途中で迷っちゃってここに来ただけだから。どうせ今から行ってもろくなパンが残っていないどころか、売り切れている可能性も高いし、こうして小鳥遊さんに誘ってもらえて、逆にラッキーだったかも」
『けど、私のお弁当だけで足りるでしょうか? 私の方からこうして誘っておいて今さらではありますが、男の子が満足できるほどの大きさではないような気がしまして……』
「まあ、確かに満足できるような量ではないけれど……」
いかにも女子らしい小振りなお弁当箱だし。
「でも、さすがに全部もらうつもりはないっていうか、そんな厚かましい真似をするわけにもいかないから。それにまだ、鞄の中にカロリーメイトが残っているから安心して」
中学時代に何度も昼食代をもらい忘れた経験があって、それからはいざという時のためにカロリーメイトを持ち歩くようになったのだけれども、まさかこんな形で役立つ日が来ようとは。
『そうですか。それを聞いてホッとしました』
「うん。……ところで、ぼくの方からもひとつだけ質問していいかな? もちろん、嫌なら無理に答える必要はないから」
『? はい。私で答えられることであれば』
「小鳥遊さんは、どうしてさっきからスマホの文字入力機能で受け答えしているの?」
ぼくからの問いに、小鳥遊さんはギュッと身構えるようにスマホを両手で握りしめた。
それから急かすようなことはせず、ただ静かに反応を待っていると、小鳥遊さんはたどたどしい手つきでスマホを操作し始めて、ややあって画面をぼくに向けてくれた。
『私、面と向かって人とお話するのが、すごく苦手なんです……』
『本当はこうして向かい合っているだけでもすごく緊張してしまうのですが、人とお喋りするのはもっとダメで、どうしても声が出せなくなってしまうんです……』
『だから家族以外とは、こうしてスマホ越しでないと会話ができないようになってしまいまして……』
と、何度も文章を作ってはスマホの画面を見せてくれる小鳥遊さんに、ぼくはどう返事をしていいのかわからず、つい口を閉ざしてしまった。
お弁当を食べていた時は普通に声を出していたので、身体的な理由以外になにかあるのだろうなとは思っていたけれど、そういう事情があったからだったのか。
対人恐怖症、というわけではないみたいだけれども──こうして接してみて、別段怖がっているわけではなさそうなので──きっと人とコミュニケーションを取るのが極度に苦手なのかもしれない。
それこそ小鳥遊さん自身が説明した通り、スマホがないと会話ができないほどに。
そっかー。こういうのは心の問題なので簡単に解決できるようなものじゃないから仕方がないにせよ、色々不便も多いだろうなあ。挨拶ひとつ返すのも苦労しそうだ。
…………ん?
「あれ? ということはもしかして、ぼくが小鳥遊さんに初めて挨拶した時も、別に無視したわけじゃなくて、実は動揺して挨拶を返せなかっただけだったとか……?」
ぼくの問いかけに、小鳥遊さんはハッとした顔で両目を見開いて、すぐさまスマホを操作したあとに両手を突き出した。
『あの時はとんだ失礼な真似をしてしまい、申しわけありませんでした! まさか話しかけられるとは考えもしなかったので、どう対応していいかわからず、つい無視してしまうような真似を……』
スマホを掲げながら何度も頭を下げる小鳥遊さんに、ぼくは慌てて手を振って、
「いやいや! そこまで謝るようなことじゃないから!」
だから頭を上げてほしいと懇願するぼくに、小鳥遊さんはおそるおそるといった態で上体を起こして、再度スマホをいじり始めた。
『本当にすみませんでした。せっかく羽賀くんが二度も挨拶をしてくれたのに、なにも返事ができなくて……』
「ううん。事情を聞いた今なら仕方がないと思うし、逆に無視をしたわけじゃないって知れただけでもよかったよ」
それに、ちゃんとぼくの名前を覚えてくれていたみたいだし。
「けど小鳥遊さん、どうして他の人とはスマホでやり取りしないの? 今はこうしてスマホを使って会話しているけれど、教室だと一切使わないよね?」
『それは…………』
とだけ文字を打って、急に俯いてしまった小鳥遊さんに、ぼくは首を傾げた。
でもすぐにその理由がわかって、ぼくは自分の失態に「あっ」と声を漏らしてしまった。
バカかぼくは。たとえお喋りはできなくても、スマホ越しで仲良く会話できる相手がいるくらいなら、最初から一人でこんな教室に来るわけないじゃないか。
「ご、ごめん。デリカシーに欠けた言葉だったね……」
『いえ。気にしないでください』と苦笑を浮かべながらスマホで返事を打ったあと、小鳥遊さんはそのまま続けた。
『それに、先生と二人きりの場合などはともかく、元から皆さんの前でスマホを使うつもりはありませんでしたから』
「? それはなんで?」
『皆さん、私を過大評価している節があると言いますか、なぜかとてもすごい人間だと誤解している人が多いみたいで、そういう方々にもしも私の本当の姿を知られてしまったらと思うと、ちょっと不安で……』
「あー」
今さら言うまでもないけれど、みんなして小鳥遊さんを神かなにかのように敬っているところがあるからなあ。
そんな異様とも言える雰囲気の中で、スマホがないとコミュニケーションが取れないと正直に明かすのは、少しハードルが高いかもしれない。
特に小鳥遊さんのような、めちゃくちゃ人付き合いの苦手なタイプには。
『それに、中学生の時に一時期だけスマホでやり取りをしていた時もあったのですが、どうしても皆さんの会話に交ざるには対応しきれない場合がよくあって……。それで大変気まずい思いをするようになってからは、次第に私の方から皆さんとの交流を避けるようになってしまいまして……』
「そっか……。確かに、それは気まずいかもね……」
メッセージアプリのグループ会話とかならともかく、リアルの会話はたいてい間を置くことなくどんどん進行していくものだから、スマホの文字だけではレスポンスが間に合わなくてさぞ大変だったことだろう。
「えっと、ちなみにぼくとは大丈夫なの? さっきも向かい合って話すのは緊張するって言っていたし、この教室のことを秘密にしてもらうためとはいえ、本当は嫌々ぼくと接しているんじゃ……」
『そんなことありません!』
と。
ぼくの指摘に対し、小鳥遊さんはすぐさま文章で否定した。
『最初こそ緊張しましたし、一度も話したことがない相手を説得できるのかと不安に思ったりもしましたけれど、今はだんだんと落ち着いてきたので問題はありません。それに羽賀くんにはすでにお恥ずかしい姿を見られたあとですので。なにより』
そこで不自然に区切られている文章にはてと首を傾げつつ、ぼくはオウム返しに「なにより?」と訊ねた。
『なにより、羽賀くんとこうしてお話するのは、すごく楽しいです』
その一文を見て、ぼくは全身が熱くなるくらいドキッとしてしまった。
「そ、そうなんだ。それはなんというか……た、大変恐縮です……」
『いえ。こちらこそ、こんなおかしなことに付き合っていただいて……』
それから二人して、どちらからともなく顔を伏せて黙り込んでしまった。
は、恥ずかしい!
小鳥遊さんに楽しいって言って──いや、この場合は書いて、か?──もらえたのはとても嬉しいけれど、こんな風に面と向かって好意を伝えられたことなんて今までなかったから、正直めちゃくちゃ照れる……!
でも、そう思っていたのはぼくだけでなかったみたいで、ちらっと小鳥遊さんの反応を覗いてみると、赤らんだ顔をスマホで必死に隠していた。
きっと小鳥遊さん自身も、普段使わない表現で気持ちを伝えたせいで、あとから恥ずかしくなってきたのだろう。
そうして、なんとも言えない空気がしばらく続いたあと、
「そ、そろそろお弁当を食べようか! いや、食べさせてもらう側がこんなことを言うのも変な話だけども! あははー!」
さすがにこのむず痒い雰囲気に耐えきれなくなって、わざとらしく笑声を上げるぼく。
そんなぼくに、小鳥遊さんはこくこくと何度も小さく頷いて、
『そうですね。早くしないと、お昼も終わってしまいますからね。どうぞ、好きなものからご自由に食べてください』
と、お弁当をこっちの方までわざわざ寄せてくれた。
というわけで、改めて小鳥遊さんのお弁当をまじまじと見つめてみる。
主食は二個の小さなおにぎり。おかずは三つにカットされた卵焼きに、その脇にちょこんとプチトマトとブロッコリーが添えられている。
そしてこれこそが主役だと言わんばかりにどんと中央に置かれている、五個のからあげ。
うん。いかにもザ・からあげ弁当と言った感じだ。
なんというか、ここに来る前、小鳥遊さんが美味しそうにからあげを食べていた時点で察しは付いていたけれども。
「小鳥遊さんって、からあげが好物なの?」
ぼくのストレートな質問に対し、小鳥遊さんは恥ずかしそうに顔を俯かせながら『はい……』とスマホで返事をした。
「そっか。じゃあ一番のオススメはからあげってことなのかな?」
というか、どう見てもそうとしか思えないけれども。
『そうですね。母が作ったものなのですが、とても美味しくできているので、私も自信を持ってオススメできる一品かと』
「へえ。それじゃあ、さっそくからあげから頂いてみようかな。……もらってもいいんだよね?」
一応伺いを立てたぼくに『どうぞどうぞ』と笑顔で応えてくれる小鳥遊さん。
小鳥遊さんから許可を得たところで、ぼくは串付きのからあげを手に取った。
鼻先まで寄せて観察してみるも、一見はなんの変哲もない──ぶっちゃけてしまうとどこにでもあるような普通のからあげにしか見えない。
匂いも他のからあげと同じような、揚げ物特有の油っぽい感じ。
まあ普通に美味しそうではあるし、ぼくとしても食指をそそられるところではあるけれど、小鳥遊さんを感嘆させるほどの魅力がこのからあげにあるとは、あまり思えない。
「とりあえず、食べてみないことには始まらないか……」
言って、ぼくはからあげを丸ごと口に放り込んだ。
それから咀嚼してすぐ、ぼくは目を見開いた。
お、美味しい……!
しかもただ美味しいわけではなく、からあげを噛んだ瞬間に旨味が口の中全体に広がって、鶏肉の香ばしい匂いが鼻腔を駆け巡っていく。
しかもすでに冷えているはずなのに、びちゃびちゃした食感はなく、噛むたびに肉汁がジュワァと溢れ出てくる。
今まで母親の作ったものや、コンビニで売られているものならいくらでも食べたことはあるけれど、こんなからあげは初めてだ。
「なにこれ、マジで美味しい……。なんかこれまで食べてきたからあげとは一味違うっていうか……使っている材料が違うのかな?」
「わかる!? 実はそれ、白だしが使われてるんやにっ!」
と。
当てずっぽうに言ったぼくに、いきなり小鳥遊さんが身を乗り出して瞳を爛々に輝かせて語を継いだ。
「しかもただの白だしやないんやに! 高級料亭で使われている本格白だしで、それを漬けダレとして使ってるんよっ!
なんでそんなことがわかるんって思ったやろ? 実は昔から馴染みにしとる料亭があって、特別にうちとお母さんにだけ、いつもからあげを作る時に使っとる白だしを教えてもらったんよ! それで昨日試しにその白だしを買って作ってみたら、これがもうほんとに美味しくて! その時の余りを今日のお弁当にしたんよ~。まあうちのお弁当は、毎回からあげが入っとるけれど!
けど、美味しさの秘密はそれだけやないんやに! 白だし以外にも二度揚げすることによって衣は薄くても表面はサクサク、中はジューシーな美味しいからあげが出来上がるんよっ!
それでな、うちも今度同じものを作ろうって思ってるんやけど──」
と、それまでのべつまくなしに弁舌を振るっていた小鳥遊さんの口が、まるで突然停止ボタンを押されたかのようにピタッと止まった。
そして湯気が出そうなほど顔を真っ赤にしたあと、俊敏な動きで机の下へと隠れてしまった。
そんな小鳥遊さんの一連の反応に、ただポカンと口を開けて唖然とするぼく。
嬉々としてからあげを語る小鳥遊さんのマシンガントークに、終始圧倒されて声も出なかったのだ。
けど、だんだんとぼくも平静を取り戻してきて、羞恥心で悶えそうになっている小鳥遊さんに、
「え、えーっと……し、白だしが入っていたんだね。うん、だから味に深みがあって美味しかったのか。教えてくれてありがとう」
と、ひとまず感謝の言葉を述べてみた。
ややあって、なにやらごそごそと机の下で動きを見せたあと、小鳥遊さんはおずおずとした手付きでスマホを机の上に置いて、画面をぼくに向けた。
『こちらこそ、変に気を遣っていただいて……。しかも心にもない感謝まで……』
「いやいや。美味しかったのは事実だし、味の正体がわかって嬉しいのも本当だから」
『でも、気持ち悪くなかったですか? 急にからあげのことを熱く語り出して……』
再度スマホを手に取って文字を打った小鳥遊さんに、ぼくは「ううん」と否定した。
「よっぽどからあげが好きで堪らないんだろうな、としか思わなかったよ。それに今の方言も、す……すごく可愛いと、思った、よ?」
後半、たどたどしくなりながらも素直な気持ちを告げてみると、小鳥遊さんは野生の小動物のように少しだけ机から顔を覗かせて、
『本当、ですか?』
「うん、本当だよ。今のって、名古屋弁ってやつなのかな? 名古屋弁を使っている人、初めて見た」
『いえ、あれは名古屋弁でなくて伊勢弁です。私、元々は三重県出身なので。小学六年生の時にここへ引っ越してきたのですが、両親どちらとも未だに伊勢弁で、それで私も地元の方言が抜けなくて、つい自然とあのような話し方に……』
「あ、そうだったんだ」
ということは、元はぼくと同じ転校生だったってわけか。
「三重県ってことはお隣の県だよね? へー。伊勢弁ってあんな感じなんだ」
『人によって違いはあったりしますが、大体はそうですね。それと名古屋弁は、今は一部のご老人にしか使われていないかと』
なるほど。だからクラスメートやそれ以外の人も、みんな標準語ばかりだったのか。
まあそのおかげもあって、意思疎通も問題なくできるのだから、ぼくとしてはありがたい話ではあるけれど。
愛知に引っ越すと聞いた時は、ちゃんと会話できるのかなとか色々不安だったけれど、単なる杞憂に済んで本当によかったと思う。
ただ、ここはもう関東圏ではないし、今後は小鳥遊さんみたいに方言を使う人が現れるともしれないので、今からちゃんと覚悟だけはしておいた方がいいのかも。
「あれ? けど、スマホで話す時は普通に標準語だよね? 伊勢弁は使わないの?」
『それは……ちょっと恥ずかしいと言いますか、周りが標準語の人ばかりの中、自分だけ方言を使うのは少し抵抗があると言いますか……』
『先ほどは気分が上がってしまったせいもあって、つい方言を使ってしまいましたが』と続けた小鳥遊さんに、ぼくは「あー」と相槌を打った。
「その気持ち、なんとなくわかるよ。自分だけ他の人と違うことをするのって、ちょっと怖いよね」
特にぼくなんて、基本的に事なかれ主義の日和見人間だし(周りに流されやすいだけとも言う)。
「けど、ぼくは全然変だとは思わないから。むしろさっきも言った通り、かわ……可愛いと思うし」
もう一度恥ずかしさに耐えながら、ぼくはそのまま言葉を紡ぐ。
「だから、ぼくの前だけでも普段の小鳥遊さんの姿を見せてくれないかな。方言はもちろん、からあげを熱く語るところも含めてね」
言い終えて、小鳥遊さんの反応を見てみると──
なんだか、机の下でぶるぶると小刻みに震えていた。
「えっ。た、小鳥遊さん? 大丈夫……?」
『……大丈夫です。少し驚いただけなので』
ぼくの問いかけに小鳥遊さんはそうスマホで答えて、いそいそと椅子に座り直した。
なにか、頬が薄紅色に上気しているけれど、あえてスルーとしておこう。でないと、ぼくまでダメージを受けるような気がする。
というか、我ながら全然似合っていないキザなセリフを吐いてしまったせいで、すでにダメージは甚大だ。
寝る前とかに思い出して、あとでめちゃくちゃ悶えることになりそう……。
『改めて、ありがとうございます。そんな風に褒めてもらえるとは思わなかったので、とてもビックリしました。てっきり、また私のせいで不快な思いをさせてしまったのではないかと考えたら、羽賀くんの顔が見られなくなってしまいまして……』
「? またってことは、以前なにかあったの?」
ぼくの質問に、小鳥遊さんは若干逡巡するように目線を横に逸らしたあと、躊躇いがちにこくりと頷いた。
『私が転校してすぐ──小学六年生の春の時だったのですが──隣の席にいた女の子に先ほどのような勢いでからあげの話をしてしまったことがありまして。その時に、彼女にこう言われてしまったんです』
──気持ち悪い、と。
その一文を読んだ時、ぼくは思わず言葉を失ってしまった。
いくらなんでも──小鳥遊さんのからあげトークにビックリしてしまったのかもしれないけど、初対面の人に「気持ち悪い」だなんて……。
そんな閉口するぼくを見て心中を察したのか、小鳥遊さんは小さく首を横に振って、
『私がいけなかったんです。まだお互いのことをなにもわかっていないまま、突然からあげの話ばかりしてしまったのですから。転校する前は一度も嫌な顔をされたことがなかったので、自分でも思い上がっていたのだと思います。
からあげの嫌いな人なんてだれもいない。みんな、私のようにからあげのことが大好きに決まっているって』
「小鳥遊さん……」
辛そうに顔を伏せながら文章を見せる小鳥遊さんに、ぼくはなにも言えなかった。
小鳥遊さんの言う通り、ちょっとばかり初対面でグイグイ行き過ぎたのかもしれない。
そのせいで、クラスメートに疎まれてしまったのかもしれない。
でもそれはたまたま趣味の合わない人と隣の席になってしまっただけで、小鳥遊さん自体に落ち度はなかったはずだ。
そう言えればよかったのだけれど、よほどその時の一言がトラウマになっているのか、肩を震わす小鳥遊さんを前にして、ただ見つめることしかできなかった。
ここで気休めにしかならない言葉をかけたところで、なんの意味もないと思ったから。
きっと、今の小鳥遊さんに一番かけるべき言葉は──
『もしかしたら転校する前の学校でも、私が単に気付いていなかっただけで、みんなから奇異な目で見られていたのかもしれませんね。女の子なのに、からあげの話ばかりして気持ちが悪いって。なので、やはりからあげの話なんて、だれにもしない方が……』
「それは違うよ」
と。
今にも泣きそうな顔で目尻に涙を溜める小鳥遊さんに、ぼくはきっぱり言い切った。
「からあげが好きなのに、男とか女とか関係ないよ。食べ物の好みなんて人の数によって違うし、それこそ千差万別じゃないかな」
ひとつひとつの言葉を慎重に選びながら、ぼくは意識してゆっくり語を継ぐ。
「それに、ぼくは正直羨ましいと思ったよ。楽しそうにからあげの話をする小鳥遊さんを見て、素直にいいなあって。
ぼく、自分で言うのもなんだけど、昔からなんの取り柄もなければ、はっきり趣味と言えるような趣味もない、つまらない人間なんだ。
だからって言うか、からあげの話をしている時の小鳥遊さんの姿が、ぼくにはとても眩しくてさ。なにかひとつでも熱くなれるようなものがある人って、こんなにも輝いて見えるんだなあって。そんな小鳥遊さんを見ていて、心からこう思ったんだ。
ぼくもこんな風に好きなことを熱く語れるような、カッコいい人になりたいって」
そこまではっきり言い終えたあと、ぼくはまっすぐ小鳥遊さんを見つめた。
本当は心臓が破裂しそうなほどバクバクと早鐘を打っているし、なんなら蒸発しそうなほど全身が熱いくらいだけれども、それでも目だけは絶対に逸らしはしなかった。
でないと、さっきの言葉が嘘で塗り固めた張りぼてのように思われるかもしれないから。
今にも不安で押しつぶされそうになっている小鳥遊さんに、少しでも勇気と自信を与えたい一心で。
だからこそ、ここで格好が付かない真似はしたくなかったのだ。
そんな気勢を張るぼくとは打って変わって、小鳥遊さんはお弁当箱に入っているプチトマトのように顔を真っ赤にして俯いていた。
ていうか、小さく「はわわわ……」と戸惑いの声を漏らしていた。
いやまあ、どうやらぼくの気持ちが伝わってくれたみたいでひとまずよかったけれども。
そこまで露骨に恥じらいを見せられると、こっちまで無性にのた打ち回りたくなっちゃうから! 絶叫しながら町中を走り回りたくなっちゃうからぁ!
なんていう内心の狼狽を全力でひた隠しにしつつ、小鳥遊さんの反応を辛抱強く待つ。
それから少し経ち、油が切れかかったロボットのような動作でぎこちなくスマホを操作したあと、小鳥遊さんは思いっきり顔を逸らしながらスマホの画面をぼくに見せてくれた。
『あるごとうござます!』
パッと見は、なにがなんだかわからない意味不明な一文。
けれどすぐに『ありがとうございます』って書きたかったんだろうなと理解して、その懸命さに思わず頬が緩んでしまった。
「……よかった。少しだけでも元気になってくれたみたいで」
安堵の吐息と共にこぼれたぼくの言葉に、小鳥遊さんは少し驚いたように眉を上げて、ゆっくり顔をこっちに向けた。
『もしかして、私のために今の話を……?』
「まあ、うん。ほら、せっかくこうして仲良くなれたわけだし、このまま悲しい雰囲気で話が終わるより、少しでも良い記憶として残ってほしいなって思ってさ」
『仲良く……ですか?』
「うん。え、ぼくは仲良くなれたと思っていたけど、違った……?」
ぶんぶんぶん、と間髪入れず首を横に振って、小鳥遊さんは文字を打ち始めた。
『いえ。私も、とても久しぶりに家族以外の人とからあげの話ができて、とても楽しかったです。羽賀くんとこうしてお昼を一緒に過ごせて、心からよかったと思っています』
「そっか。なら、また近い内にからあげの話をしようよ。周りの目線も気になるだろうから、いつでもってわけにもいかないかもしれないけど、ぼくでよければ、いつでも付き合うからさ」
『……本当、ですか?』
「もちろん。なんだったら、からあげ以外の話でもいいし。愚痴でもワガママでもなんでもね」
笑顔でそう答えると、なぜか小鳥遊さんは躊躇いがちに目線を机の下へ落とした。
なにか気になることでもあるのかな、と首を傾げながら反応を待っていると、小鳥遊さんはおもむろにスマホをポチポチといじり始め、
『でしたら、少しだけ私のワガママを聞いてもらってもいいですか?』
「? うん。ぼくでいいのなら」
そう返すと、小鳥遊さんは再びスマホで文章を作り始めて、やがて静かに指を止めたあと、不意に瞼を閉じながら深呼吸を始めた。
それから決心が付いたかのように両目を見開いたあと、小鳥遊さんは勢いよくスマホを持ったスマホをぼくに向けて突き出した。
ぶるぶると生まれたばかりの鹿が必死に起き上がろうとしているかのような挙動で見せてくれた画面には、一言でこう書かれてあった。
『よければ私と、からあげ友達になってください!』
その文章を読んで、ぼくは──
思わず「ぷっ」と吹き出してしまった。
「!?!?」
「あ。ご、ごめんね? まさか『友達になってください』じゃなくて『からあげ友達になってください』って言われるとは思わなかったから、つい」
笑いをこらえつつ片手を上げて謝ったぼくに、小鳥遊さんはいっそう恥ずかしそうに体を縮こませた。
「あっ、勘違いしないでね!? バカにしているとか全然そういうわけじゃないから!」
と慌てて弁明したぼくに、小鳥遊さんはおずおずと頷いて、
『大丈夫です。私自身、気味の悪いことをお願いしてしまったという自覚はありますから……』
「別に気味悪くはないよ。むしろ面白いと思った」
『……? 面白い、ですか?』
「うん。小鳥遊さんはすごく面白いと思う」
本当に、小鳥遊さんみたいなタイプは初めてだ。
すごく綺麗でクールそうな人だと思っていたら、実はスマホがないとコミュニケーションが円滑に取れないほど内気な少女で。
かと思いきや、からあげのことになると饒舌になっちゃうほど熱量のある女の子で。
最初は緊張してまともに目も合わせられなかったのに、小鳥遊さんの色んな反応を見ている内に、いつの間にかすらすらと話せるようになっている自分がいて。
きっとここに来ることがなかったら、こんな小鳥遊さんの魅力的な一面を見ることなんて、絶対になかったと思う。
だから──
「ぼくも小鳥遊さんの友達に──からあげ友達になりたい」
そうありのままの気持ちを口にしたぼくに、小鳥遊さんは一瞬呆然とした面持ちでこっちを見つめたあと、やがてハッとした顔でスマホをいじった。
『ほ、本当ですか……?』
「うん。特別からあげに詳しいわけじゃないけれど、こんなぼくでもよければ、喜んで」
ぼくの返答に、小鳥遊さんはそっとスマホを胸に抱きながら破顔一笑した。
思わず視線を奪われるくらいに、とても華やいだ笑顔で。
そうして時間を忘れるくらいにしばらく見つめたあと、今度はぼくがハッとしてしまった。
「え、えっと……なんか照れるね。こういうやり取りって……」
頬を掻きながら言ったぼくに、小鳥遊さんももじもじしながら何度も頷く。
『あ。そういえばまだ、友達になる前にしなくちゃいけないことがありました』
しなくちゃいけないこと? と同じ言葉を繰り返したぼくに対し、小鳥遊さんは場を改めるように「こほん」と可愛いらしく咳払いして、
『小鳥遊エリィです。これからよろしくお願いいたします』
と。
今度こそちゃんと目の前で自己紹介をしてくれた小鳥遊さんに、ぼくも微笑しながら、これで三度目となる(教壇の前でしたのを含めたら四度目となる)自己紹介を返した。
「羽賀大介です。こちらこそ、よろしくお願いします」
こうしてぼくたちは、二人だけのからあげ友達になった。