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あの魔法の言葉をもう一度

作者: つくも拓

恋愛物にしてはコメディ要素が濃いと思います。

一部からは殴られそうですが、楽しんでいただければ幸いです。

彼は私を見て悲しげに宣告した。


「ミシェル、別れよう…」


私は凍りついた。

私とアランは幼馴染で婚約者。もう10年にもなる長い付き合いだ。

アランは鍛え上げられた身体に甘いマスクで、そんじょそこらのアイドルには引けを取らない。おまけに優秀な頭脳。そして私にはすごく優しい完璧超人だ。

私もアランの隣に立っていられるように必死に努力してきた。ダイエットにも心掛け、自慢だがスタイルには自信がある。なのになぜ?


「…アラン。なぜ? 私のなにがいけないの?」

「ミシェル、君はフィットネスクラブに通い始めたんだって?」

「ええ。それが?」

「なぜだ!! 昔の約束を忘れてしまったのか!?」

「約束?」

「立派なデブになるって言ったじゃないか!」

「ええ!!」


私はアランに出会った頃を思い返す。

小学校に入る前だ。

アランはことある毎に私を抱きしめホッペをすりすりしていた。

「ミシェル、大きくなったら結婚しようね」

「うん、お嫁さんにしてね」

あの頃から私はアラン一筋だ。

そんなある日、ハイキングでお弁当を食べている時のことだったと思う。

アランがニコニコして言ってきた。

「ミシェル。しっかり食べて立派なデブになるんだよ」

「! なるかーーー!!」

「え? じゃあ、ダメなデブになるの?」

「え?」

「もしかして、どうしようもないデブになるの!?」

「えええ? それは…やだ」

「なるなら立派なデブにならないと!」

了解らじゃあ!」


その日の夜、夕食の席で父に

「大きくなったら立派な貴婦人レディになるんだよ」

と言われた私は

「ううん、ミシェルは大きくなったら立派なデブになる」

とドヤ顔で答えた。

その結果、母は口に含んでいたワインを噴き出し兄は鼻から牛乳をこぼした。執事のバートンが笑いながらむせた姿を見たのは後にも先にもこの時だけだ。

母から

「肥っているから揶揄われたのよ」

と諭された。

10年経った今でも我が家定番の笑い話である。

まさかあれが?


「…しっかり食べて立派なデブになるんだよって、あれ?」

「そうだよ! あんなに約束したのに君ときたら三年前からダイエットなどという人の道に外れた事を始めて」


ダイエットって人の道に外れてたの!?


「おまけにフィットネスクラブまで…」

「だってだって。アランがそんなに素敵になったんだもの。

あなたの隣りに立っていたくて、綺麗になろうと思って頑張ってるのに……」

「僕は君がこう言うのがカッコいいっていうから頑張ったんだ。君に好きでいてもらいたくて!」


そう言えば以前はもう少し丸かったわね…


「だから私もあなたに似合う女性になりたくて!」


周りを取り巻く観衆ギャラリーから声が上がる。


「そうよ!いじらしいと思わないの!」

「どうせ別に好きな女でもできたんでしょ」

「サイテー!」


別に好きな女? 血の気が引くのが分かる。


「好きな男の為に頑張るって、いい女だよな」

「それであんなに綺麗になってって。結果出してるのに何が不満なんだよ」


「うるせえ!!」


アランは観衆を一喝する。


「僕はミシェルの好みに合わせようと頑張ったんだ!

でもミシェル、君は誰のために頑張ってたんだ?」

「え? もちろんアランのために」

「僕の隣に立っている自分のためにじゃないのか?それとか、ミシェルを見ている誰かのためじゃなかったか?」

「え?」

「分かってないのか? 僕のためと言いながら僕の好みを考えず、周りの目を気にしていただけじゃないのか?」


そうかもしれない……


「僕はアスリートのような体型スタイルよりふわっとした体型の方が好きなんだ。ふわっよりプニプニ、プニプニよりポチャポチャが好きなんだ!」


最後の違いはよく分からない…


「まあ健康を害するほど肥るのはお勧めしないが」


お勧めはしないがOKなんだ…

じゃあ私が我慢したショートケーキは、モンブランは、チーズケーキは…


もう我慢しなくていいのね!!!


「アラン、ごめんなさい!!

私、心を入れ替える! ダイエットもフィットネスクラブも辞める! あなた好みの女になる!」

「本当かい、ミシェル!!」

「でも、私からも一つお願いがあるの」

「なんだい?」

「あなたの身体はあまりに禁欲的ストイック過ぎるの」

「? こう言うのが好きなんじゃなかったかい?」

「それは鑑賞用。一緒にいると息が詰まるわ。もう少し我儘ボディになってほしいの」

「よかった。僕も少し無理をしていたんだ」

「愛してるわ、アラン」

「僕もだよ、ミシェル」

「だからお願い。あの魔法の言葉をもう一度」

「じゃあ一緒に」


私とアランは抱きしめ合い、互いの耳元で囁やいた。


「「しっかり食べて、立派なデブになるんだよ」」

《注意》

この魔法の言葉は相手を選んで使用しないとセクハラになります。不用意に使用されて訴えられても当方は一切関知しませんのでご注意下さい。

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作中の意見は独断と偏見上等、かかって来いやァ!です。ちなみに作者の趣味はアラン寄りです。


★も嬉しいのですが、感想をいただけるともっと嬉しい作者です。

次の作品の励みになりますのでヨロシク。

罵詈雑言もOK。なにとぞよしなに。



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