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「きゅー、きゅー」
……静かに耳をぴょこぴょこさせていたミミちゃんが、突然前足を突き出して鳴き始めた。ぷにぷにとした肉球の先には、「カフェ・ソコラタ」の文字が。
「……え? これを頼めって?」
「きゅー」
こちらを見て、パチパチとまばたきをするミミちゃん。まるで、イリスの言葉が分かっているみたいだ。
「ドリンク、お決まりですか?」
タイミング良く、店員が注文を聞きにきた。ミミちゃんのアドバイスに従って、彼女は「カフェ・ソコラタ」を指差す。
「これで、お願いします」
「はーい」
不思議なこともあるものだ。そう思いながらミミちゃんを見ると、腕の中でスヤスヤと寝息を立てている。
「えっ、寝ちゃったの? なんか、マイペースなのね……」
イリスはクスリと笑みを零しながら、ミミちゃんの耳を優しく撫でた。ミミちゃんはヒゲを上下に動かして、気持ち良さそうにしていた。