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「……ん? こ、これは!」
――直後、彼女は見つけてしまった。ペットショップの脇の併設店。そこにはなんと、「ヘアプースカフェ」のプレートが掛かっていたのだ。
「『可愛いヘアプースと触れ合える、癒しの専門カフェです! ワンドリンクつきで、九十分二十五コイン』……。これは、行くしかないわね!」
そう思うや否や、茶色いドアを引いて中に入る。チリンというベルの音とともに、シャンプーのような良いにおいが漂ってきた。
「ようこそ、ヘアプースカフェへ!」
奥から兎人の店員がやって来る。抱えているヘアプースと同じ黒耳で、まるで姉弟か姉妹のようだ。
「ミミちゃん、お客さんだよー」
黒いヘアプースはクンクンと鼻を動かすと、イリスの腕に大人しく収まった。イリスは堪らず、「ふあぁ……!」とよく分からない感嘆を発してしまう。
「当店は後払い制なので、お時間になったらお声掛けしますね。それではまず、あそこのピンクの席にどうぞー」
ピンクの丸テーブルには、手書きのメニュー表が置かれていた。香り高く苦みが特徴の定番ドリンク・カフェスはもちろん、カフェスを牛乳で割ったものや、おしゃれなソースが掛かったドリンクもある。
「意外と種類あるわね……。うーん、どうしよっかなー」
一通り目を通したイリスだったが、迷ってしまって中々決められない。ヘアプースのミミちゃんをもふもふさせながら、うんうんと頭を悩ませる。