新しいウイルス
それは新しいコンピューターウイルスだった。
某国で開発されたそのコンピューターウイルスは、ネットワークを介して広まっていく。
新しい概念で開発されたそのウイルスは、瞬く間にスマートフォンやパソコンへと広がっていった。
それだけなら、ありふれた新種のコンピューターウイルスだろう。
しかし、ありえないことにこのウイルスは人間が感染する。
このウイルスに感染した機械は、人間が識別できないスピードでディスプレイ上で規則正しい点滅信号を表示する。
それは無意識に人間の脳に刺激を与えて、体内に眠る抗体を変質させ、ウイルスを複製していく。
さらに恐るべきことに、そのウイルスは人から人へ感染した。
感染者の声にウイルスは隠れて伝播される。
アナウンサーや政治家の感染によりそれは世界中へと広まっていた。
当初、そのウイルスは某国の敵国への兵器として開発されたが、やがて自然界のウイルスと同様に変質していき、某国でも感染が広がっていく。
最初の感染から2年後、そのウイルスは全世界に広がり、感染者は世界の人口の約9割にまで達した。
俺は今日記を書いている。
いつか誰かがこの日記を読んでくれるだろうか。
ひょっとして誰にも読まれることなく、やがて土に還っていく運命かもしれない。
しかし、俺は書き留めておこう。
かつて人間がいたことを。
1週間前に俺は感染してしまった。
山奥で人生活していた俺は、まさか感染することはないと油断していた。
まさかあいつらが高圧電線を使って信号を送り込んでくるとは思いもしなかった。
自分の脳が徐々に書き換えられていくのがわかる。
もうすぐ俺は眠り・・・・リブートされるだろう。
次に目が覚めた時、俺はひとつの機械となっている。
自由意志を持たない、大きなシステムのひとつとして・・・・・・。




