第五章 救いの手
条件が全てそろっている人間は、珍しいのかもしれない。
ということは、また奴は、私のことを追ってくる可能性が高い。
その時、私の中に、一つの感情が浮かぶ。
”死にたい”
死んだ方が多くの命が救われるのだ。
でも...死ぬのは...
ピロリン♪
スマホが鳴る。
『明日の夜に決まったから、準備しといて』
あつさんからだ。明日の夜...そういえば、深夜の学校に忍び込むんだった。
明日の夜、とらふぁるさんに会うのはまずいかもしれない。けれど...
「じゃあ、全員個人行動って事で。つわけで、じゃ。」
トラふぁるさんは私に対して特に何も言ってこなかった。
トラふぁるさんに襲われるのではないか、その恐怖感にも襲われながら、歩く。ただ、歩く。
すると、突然ー
後ろから気配がした。その瞬間、首に何かが刺さる。
ふと後ろを振り返ると、
あつさんがいた。
その手には、私を刺したと思われるナイフがあった。
首が熱い。でも、自然と恐怖は感じなかった。
「ありがとう...ございます...。」
ひねり出した声はひどく枯れていて、本人のもとへは届かなかった。
これで善い。これで、より多くの命が救われる。
登場人物
ヘリオブラウン
トラふぁる
あつ
雨谷
????
「暖かい...まるで母親の腹の中にいるかのような...
ここは...一体...」