真奈美14
歩いて1時間経ったか経たないか、いつもよりも時間をかけて俺は彼女に支えられながら俺の家にたどり着いた。
「鍵はある?」
「大丈夫...左のポケットに入っているから。」
「菊池朗君、そっち右だよ。」
雨で体が冷えたせいかさっきより眩暈がひどく、意識もはっきりしない。
ものすごく体がだるい、彼女に支えてもらわなければ今にも玄関の前で倒れていただろう。
「ほら、開いたから入ろう。もうちょっとだから、頑張って。」
開いたドアをよろよろとくぐり玄関でぐしょぬれのスニーカーを脱ぐ。
ガチャリ
という音を聞くのを最後に俺の意識はぷつりと途切れた。
◆◇◆◇
夢を見た。
校舎を一人で歩いていたら真奈美さんの陰口を廊下で言い合う3人組とすれ違った。
これは二カ月前の記憶だろうか。
このころから彼女の周りに暗雲が立ち込めていたが俺は真奈美さんとは接点がなく、クラスも別だったということもありその時は心の隅におきながらも何も行動はできなかった。
だが、たびたび真奈美さんがよくないことをされているということは耳に入ってきた。はじめは陰口だったのが直接的な悪口、嫌がらせに発展していた。
あの時彼女の靴を見つけた時には真奈美さんの持ち物を隠されるいじめが始まっていた。
俺は彼女と話したことがあまり無かったため、これを本人に届けるかどうか少しだけ迷ったが、下駄箱の中に戻しておけばばれないだろうと思い昇降口に向かった。結果そこで彼女本人と鉢合わせになってしまったのだが。
(こう見ると、さっきの真奈美さんはこの時よりもどこか親しみやすくなったな。)
そこで俺は夢の世界から追い出された。
◆◇◆◇
目が覚めたら見知った天井。
(いや、この流れはやりつくされたな。)
目を開けて自分で突っ込みを入れる。
まだ頭は痛いし眩暈もある。正直まだ寝ていたいが、喉がいように乾いているしトイレにも行きたかった。重たい頭を持ち上げてベットから起き上がる。
(なんで俺下着姿で寝てるんだ?)
毛布から出た俺は肌寒さを感じ自分の姿を確認するとシャツとパンツしか着ていなかった。
寝ぼけながら脱いだのかと思いながらトイレに向かい用を足そうとするとまた違和感に気づいた。
(なんで俺パンツを前後逆に履いてるんだ??)
嫌な予感がしながらも用を足しパンツの向きを直して台所に向かう。
カベに手を突きながらリビングの扉を開けると、
「あ、気が付いたんだ。まだ寝てないとだめだよ。」
「...あ~ごめん。喉が渇いて。」
「そう言うことね、菊池朗君のコップどれ?」
台所で何か作っていた真奈美さんにコップをとってもらい水を飲む。
彼女は俺のおでこに手を当てて俺の体温をみる。
「やっぱりまだ熱下がってないじゃない。熱さまシートと体温計はどこ?」
「それならテレビのそばの棚の中に...ん?」
(なんで真奈美さんが家にいるんだ???)
次話
「真奈美15」
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