真奈美6
今回は暴力的表現が含まれています。
苦手な方はお控えください。
今日が休日ならどんなによかっただろうか。
重い頭を揺らし、うめき声をこぼしながらいつもの道を歩く。
どうやら2日続けて雨に濡れて帰ったせいか、さすがの俺でも今日は体調が最悪だ。
頭痛や倦怠感などの症状が俺を襲う。
傘を杖代わりにしなければとてもではないが歩いていられないほど今日の俺は絶不調だ。
そんな状態なら休めと言われそうだが、学校に連絡するのが億劫なのでやめた。
暗雲は夜通し暴れまわったが、朝日から逃げるように去っていった。。
置き土産の大きな水たまりとぬかるんだ道をおろしたてのスニーカーで歩かなければならない現実にイライラを覚える。
俺は物を大切に使うタイプではあるが汚れるのはしょうがないと思っている。
いつもならこんなことでイライラすることはないのだが、今日の俺はストレスに弱いらしい。
「......はぁ 今日は早退する羽目になるかもなぁ」
そんなため息をつきながら俺はいつもより時間をかけて学校に向かった。
◆◇◆◇
なんとか学校にたどり着いた。
校舎に取り付けられた時計を見ると8時20分より少し前か。
登校してきた多くの生徒が人の波を作っている。
正直この中に入りたくない。
いつも8時には来ていたからこの風景を見るのは久々だ。
「......40分までに教室につけばいいから別に焦る必要はないな」
人混みは好きではないので少し離れたところで下駄箱が開くのを待つことにした。
「「きゃははははは!」」
多くの声が飛び交う中、下品な笑い声を俺の耳が拾った。
「この聞いたことがある笑い声は、いやな予感がするな」
そう思いながらも俺の足はその笑い声のほうへ向かっていた。
笑い声の主は昇降口から少し離れた場所にいた。
そこには変わらず下品な笑い声をあげる3人の女子と1人の男子、地面に倒れこんでいる真奈美さん、そのそばでボロボロになった俺の傘が落ちていた。
気づいたらこいつらを殴っていた。
女に手を挙げる奴は最低だということは知っているが、この状況を見て見ぬふりをする方が最低だと言い訳させていただこう。
まぁ他にも解決の仕方があると思うのだが、今の俺は絶不調、いつもなら冷静に働く頭も熱でショートしているのだから考えるよりもまず手が出てしまったのだ。
「きゃあ!」「やめて!」「助けて!」
単調でうるさい金切声が聞こえるが今の俺にはストレスでしかない。
どうやったら黙るのだろうかと思っていると、男のほうが俺に反撃してきた。
「しゃしゃり出てんじゃねぇよこの陰キャが!!!!!!」
「お前、だれだっけ?」
首をかしげながらそいつの顔に拳をめり込ませる。
引退したとはいえ元テニス部員を舐めるなってところだろう。
さすがに一発KOにはならないが、鼻を狙ったから鼻血が出ているし視界もうまく定まっていないだろう。
「あぁ、君を殴ったら手が痛いなぁ。非常にストレスだよ」
むかついたから鼻を抑えて俺を睨むそれの腹を思いっきり踏みつける。
足元で不快な音をあげながら苦しむそれ。
「いやねぇ、この靴は今日箱から出したばかりなんだよ。何が言いたいかわかるかい? つまりこういいたいんだよ俺は」
おそらく俺の言葉を聞いちゃいないだろうそいつを抑える右足の力をさらに強める。
「つまりねぇ。君には玄関マットになってほしいのだよ」
グリグリ足を動かし、まだ白かったそのシャツに俺の靴底についた不快な泥をこすりつける。
「よかったなぁ。終始不快だった君の言動も、今この瞬間俺の役に立っているよ。君も嬉しいだろう?」
次回「真奈美7」
投稿予定日 2022/02/07
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